「アドテック東京」まで残すところ、あと2週間あまりとなりました。ご存知の方も多いと思いますが、「アドテック東京」は、最先端企業によるセミナーやワークショップが開催され、変化し続けるマーケティングに関する最新情報が発信される場として、年々規模が拡大している国内最大のデジタルマーケティングのカンファレンスです。
私達、ルグランでは、日頃より日本ではデジタルマーケティングを学ぶ機会が少ないことが、欧米のように市場が拡大しない理由の一つではないかと考え、少しでも多くの「学ぶ場」を創る企画を進めています。「アドテック東京」というカンファレンスがその代表的な場になることを確信し、第一回目の開催以来、様々な形で参加させていただいています。
昨年に引き続き、弊社CEOの泉が「ソーシャルリスニングによるサーチキャンペーンの最適化」をテーマにセッションを持たせていただくことになりました。それに加え、今年はアドテック会場内にルグラン専用セミナールーム「ルグランルーム」を開設し、国内外のマーケティングの業界で活躍する識者やメディア関係者を招き、『Convince & Convert ~買いたくなるキモチにさせるしくみとシカケ~ 』をテーマに海外を含む業界の最新動向や、集客・売上を上げるための施策作りなど、2日間で10以上のセッションを開催することになりました。
開催に先立ち、ゲスト講師としてご参加いただくアスキー・Web Professional編集長である中野克平氏との対談&飲み会を企画。中野氏のセッションのテーマである「売れるサイトショップの作り方を知っているのは誰か?」についてお話を聞かせていただきました。
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泉浩人(以下、泉):中野さんは以前、サイトで販売している商材に関係なく「ショッピングカート」という均一化された表現をするのはおかしい、とお話されていましたよね。実は、オーバーチュア時代に事例取材を定期的に行なっていて、その一つに江戸切り子の製造販売をしている会社を訪問したことがありましてね。そこの社長は「江戸切り子をショッピングカートになんか入れて欲しくない。」とおっしゃっていて、それが理由でサイトでの販売は行なわないというお話をされていたことがありました。
中野克平氏(以下、中野):全くその通りだと思います。泉さんが読まれた記事で私が例に出したのはエルメスの話です。エルメスのような高級品店の場合、実店舗ではエルメスの香りに包まれながら、素晴らしい接客を受けて購入することができるわけですよ。サイトでも、それと同じような体験ができるようにすることは極めて重要だと思います。エルメスはそれを理解していて、「ショッピングカート」ではなく、「ショッピングバッグ」という、エルメスらしいアイコンを表示していますね。
泉:アドテックやSESなど、海外の広告・サイト関連のイベントには、毎年参加していますが、そこでコンバージョンアップの重要なポイントの一つとして頻繁に言われる表現に「The scent of a site(サイトの香り)」という言葉があります。つまり、ユーザーがそのサイトで、Convert(購入)するかどうかは、そのサイトが醸し出す「香り」が重要だということです。
中野:なるほど。そう言えば、エルメスの話した後に、読者の人からはてなブックマークで「エルメスのサイトからは匂いが漂ってきそうな錯覚に陥った」というコメントをいただきました。僕は、エルメスで買物をしているわけではないのですが(笑)、実際行ってみると、香水の独特な香りがするんですよね。エルメスは、サイトを実店舗と限りなく近づけていると言えますね。
泉:海外のECサイトをよく見るのですが、そこにはかなり考えられた形跡が見えますね。ユーザビリティも重要ですが、デザインやちょっとした表現から、ユーザーに買うというプロセスを楽しんでもらいたい、という心意気を感じます。また、日本のECサイトと比較し、スペースにゆとりがある。
中野:日本はごちゃごちゃしたサイトが多いですよね。スペースを埋めないといけないという考えが働いてしまうんでしょうか?また、企業サイトでよく見られるのは、バナーだらけのトップページ。多分、各部署から、これも、あれも載せてくれというリクエストが来るんでしょうね。そうやって、スペースを「分譲」(笑)することが間違いですよね。
泉:欧米のカンファレンス等で繰り返し言われているもう一つのポイントは「less is more」です。日本の場合は、逆で「more is better」(笑)。「Mad Men」という1960年代のアメリカの広告代理店を舞台にしたドラマが流行っていますが、この間、それを見ていたら「less is more」が頻繁に使われているんですよ。つまり、アメリカでは40年以上も前から「less」が重要であると言われていた。
中野:40年前からですか。それを考えると、日本のECサイトに「less is more」という考えが反映されるには時間がかかるかもしれませんね。一方で、一度、「less is more」、そして、香りも、ユーザビリティーも良いサイトで買物をしてしまうと、日本のサイトで買う気がしなくなるということも現実だと思います。私はよく、American Eagleというサイトで洋服を購入するのですが、非常に良く出来ている!
泉:American Eagleは、確かGapのようなアメリカのカジュアルメーカーで、まだ、日本には来ていませんよね。
中野:まだ、来ていないです。青山商事と提携したので、近いうちには日本でも販売することになるかと思いますが。でも、実際はサイトに行けば既に日本円で価格が表示され、英語が苦手な人でも簡単に購入できるようになっています。しかも、円高、送料も安い。
山辺:(突然会話に乱入)私もよく海外のサイトで購入します。中野さんが先程おっしゃられていたように、実店舗と変わらない香りがするサイトが多く、しかも、サポート体制もしっかりしているので、荷物が届く迄の期間も安心して過ごせます。アメリカの高級デパート「Neiman Marcus」のサイトは、画像も分かりやすく、素材、後ろ姿等、購入するための判断がしやすい作りになっていますね。また、高級店の実店舗では、購入を検討している商品をお店の真ん中にあるアイランドみたいなテーブルに並べてくれますよね。「このスカートにはこのベルトが合いますね」なんてアップセルもされてしまうのですが(笑)。そのアイランドに近いものを購買のプロセスで実現しようとしているサイトもありますね。海外には。
中野:あれ、なんて言うのでしょうかね。アイランド。私も海外のサイトを調査していますが、アイランドみたいなコンセプトを導入しているサイトを結構見かけますね。
泉:海外のサイトは完成度が高いですね。また、その陰には、相当なテストを行なっているということが言えると思います。ECサイトのコンバージョン率の平均は2〜3%だと言われています。また、この数値はアメリカで10年近く変わっていないようです。一方で、コンバージョン率が20%以上みたいなサイトがあるというのも事実です。では、その違いは何かというと、高いコンバージョン率を実現しているサイトは、切磋琢磨してテストを実施し続けているということです。ECサイトの成功者と言われているアマゾンは、月間150〜200ものテストを実施しています。確かにコンバージョン率2%から始めても、その勢いで10年テストをし続ければ、20%を超えることも不可能ではないということになりますよね。
中野:この円高で海外のネットショップを利用する日本人は増えているはずです。American EagleやNeiman Marcusのサイトは、商品名こそ英語のままですが、一部のメニューが日本語化されていたり、販売価格を円貨表示したりと、日本に進出しているわけではないのに、日本の国内需要を取りに来ています。ABテストでサイトの完成度を高めた海外のサイトに、3~5年は遅れている日本のネットショップがかなうわけがありません。太平洋は守ってくれないのに、守られていると勘違いしているネットショップがあまりに多い。ネットショップの運営者は、海外サイトの根本にある考え方から学び、極めて短期間で自分のものにしないと、ほとんど壊滅、という可能性だってあると思います。
泉: 全く同感です。ルグランルームの中野さんのセッションでは、アメリカの優秀なサイト、日本のダメなサイト(笑)について解説していただけるとのこと、今から楽しみにしています。また、アメリカのEC事情については、私の方からも最新情報をセッションの後半のトークタイムに共有させていただこうと考えています。
中野: セミナーというよりは、ルグランさんのリビングルームにお邪魔して、あれこれ皆さんとお話するといったイメージで進めたいと思っておりますので、宜しくお願いします。
泉:今日もかなり激しくお話させていただきましたが、まだまだ話足りない感じですね。
では、続きはルグランルームで!