ご存じの方も多いと思いますが、SESは、元々は”Search Engine Strategies”と呼ばれており、その名の通り、検索エンジンマーケティングが中心的なテーマのカンファレンスでした。ところが、近年は「ソーシャル」や「ディスプレイ」に関連するセッションも増え、数年前からは、略称であったはずの「SES」がカンファレンスの正式名称となりました。
それでも、リンクビルディング(外部リンクをいかにして獲得するか)は、SESの起源を思い起こさせる定番のセッションなのですが、今年のSESロンドンでは、このリンクビルディングに関するセッションの内容が、従来とは大きく変わった印象を受けました。
リンクビルディングやSEOに関するセッションにおいて共通していたメッセージは『リンクはBuild(獲得)するものではなくEarn(稼ぐ)ものになった』ということです。
たとえば、”How to Earn Visibility & Links Through Killer Content Strategy“(外部リンクを効果的に獲得するためのコンテンツ戦略)と題されたセッションなどは、こうした流れを象徴しているように思えました。
このセッションで、まず最初に登壇したBlue Glass というエージェンシーのKevin Gibbon氏の講演は、『グーグルが、コンテンツでしかサイトを評価しないということについて、もはや議論の余地はなく、我々には、それを受け入れる以外の選択肢はない』という言葉で始まりました。
検索エンジンにとって、人びとの興味や関心が高い情報やコンテンツを検索結果の上位に表示することは、検索品質を高める上でも重要であり、「ソーシャルシグナル」といったものが重視されているのもそうした理由によるものです。従って、良質なコンテンツを提供し、それが、ソーシャルメディアなどを通じて共有・拡散されることで、多くの人びとの目に止まり、結果的に、外部リンクの獲得につながったりすることで、検索エンジンからも高く評価される、というのが、これからのSEOの基本的な流れになる、ということです。
しかしながら、Gibbon氏は、「コンテンツマーケティング」について戦略を言えるものを持っている企業は38%という調査結果にも触れつつ、企業の現場においては、まだ、この新たなSEOの流れを受け入れられず、良質なコンテンツを提供するために、充分な理解や支援、あるいは資源の配分が行われないケースも多いのが現状であると見ています。
また、こうしたコンテンツ戦略が実を結ぶには、継続的な取組が不可欠であり、クライアントあるいは上司に対しては、中長期的なトライアンドエラーを通じて結果を出していくことの意味や重要性を理解してもらうための「教育」も、まだまだ必要なフェイズであるとしています。
次に登壇したMax Brockbank氏は、エンジニアからタイム誌のジャーナリストを経て、現在はエージェンシーで検索エンジンマーケティングを担当するという異色の経歴の持ち主ですが、やはり冒頭に『グーグルは1年間で約700回もアルゴリズムに変更を加えており、アルゴリズムの裏をかくSEO対策は不可能だ』とした上で、良質なコンテンツこそが検索エンジンの評価を決めると強調しました。
一方で、同氏は、これまでSEO業者は「ともかくリンクの質より量」と言い続けて商売をしてきたが、そうした姿勢こそが、グーグルを(SEO業者にとって)難攻不落な「モンスター」にしてしまったのだよ、と皮肉混じりに語っていたのが印象的でした。
(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)