年初の恒例となったアウンコンサルティングによるSEM市場予測が発表されました。
検索連動型広告とコンテンツ連動型広告を合わせた、2007年のパソコン向けSEM広告市場の合計は1,277億円となり、前年比+32%の成長となりました。2011年の市場規模は2,785億円に達するとされており、今後4年間も年平均で21.5%という高い成長を持続すると見られています。
このように、一見、順風満帆の成長を続けているように見えるSEM広告市場ではありますが、同社が昨年行った予測と見比べてみると、実は各年について、16-18%程度、予測値が下方修正されていることが分かります。
特にコンテンツ連動型広告についての修正幅は大きく、例えば、2008年の市場規模について各年の予測値を比較すると、次のようになっています。
2006年予測 759億円
↓
2007年予測 548億円
↓
2008年予測 338億円
この理由として、コンテンツ連動型広告においては、クリック単価やクリック率が低いという点が指摘されていますが、そもそもコンテンツ連動型広告とは、個人のブログなどに配信され、ブログを読みに来た人の目に留まることを期待して表示される「プッシュ型」の広告という点では、むしろバナー広告などに近い存在です。
従って、目的を持って検索を行うユーザーをターゲットに、検索結果の一部として表示される検索連動型広告に比べれば、クリック率や、購買や問合せなどにつながる確率(=コンバージョン率)は低くなり、その分、クリック単価も低く設定せざる得ないというのは当然といえます。(コンバージョン率とクリック単価の関係についておさらいをしたい方は、こちらのエントリーもご覧下さい。)
つまり、こうした下方修正の背景には、日本においても広告主の費用対効果に対する意識が高まっているという事情があると考えられ、今後は、広告代理店はもとより、オーバーチュアやグーグルなどの広告事業者に対しても、広告主が期待する費用対効果が実現できるか否かという観点から、より厳しい選別が行われていくことは間違いないでしょう。
ところで、今年の予測では、モバイル向けSEM市場の予測が大幅に上方修正されており、全体としては、前述したパソコン向け市場の落ち込みを補う形になっています。例えば、2008年の市場規模について比較してみると、昨年の予測96億円→345億円と3倍以上の数字になっていますが、その理由として、2007年にはモバゲータウンやmixiなどの有力携帯サイトが広告配信先に加わり、広告出稿額が前年度の予測値46億円に対し164億円まで膨らんだことなどが挙げられています。
しかしながら、例えばオーバーチュアの広告配信先となったモバゲータウンについて見てみると、1日4億を超えるページビューに対してコンテンツ連動型広告が配信されるようになりましたが、現状、モバイルではコンテンツ連動型広告をオプトアウトしたり、検索連動型広告よりも低いクリック単価が設定できないことも、広告出稿額を大幅に増加させた要因の一つになっていると思われます。
従って、今後、こうした設定を可能にする機能が用意されない場合、費用対効果に敏感な広告主がモバイルへの出稿を抑制する可能性も否定できず、果たしてアウンコンサルティングの予測通り、モバイルがSEM市場全体の減速感を打ち消す救世主となるのかについては、引続き、市場の推移を見守っていく必要がありそうです。