2008.12.24

このところ、テレビや新聞では、企業の業績や雇用情勢の悪化など、暗いニュースばかりを伝えており、年の瀬の日本には、不況風が吹き荒れています。

確かに、金融機関の経営が悪化すれば、経済の「血液」ともいえるキャッシュの流れが滞り、それが実態経済にも悪影響を及ぼすのは間違いありません。しかし、一方で、人々の不安心理を必要以上に煽るような、昨今の報道のあり方には、正直、違和感も覚えます。

半年前のことを思い出してみて下さい。原油が高騰し、それこそ日本人は海外旅行にも行けないし、車にも乗れない、といった報道ばかりが行われていました。月末になると、値上げ前に、給油をしようとスタンドに列をなす車の映像が、お決まりのように流れていましたね。

しかし、夏頃に1バレル=140ドルを超えていた原油価格は、いまや、40ドル近辺まで急落しています。加えて円高の恩恵もあり、家の近くのガソリンスタンドでは、ついにレギュラーガソリンが1リットル=100円まで下がりました。

ところが、海外旅行やドライブのチャンスが到来した、といったニュースを目にすることはありません。

それどころか、ある朝のニュースでは、家電量販店に来店していた外国人観光客に「こんな円高では何も買えない。」と言わせて、円高不況が消費にも悪影響をもたらしている、と結んでいました。

ここまでくると、不況感を煽りたいがために、都合のよいコメントだけをつなぎあわせた「情報操作」を行っている、といっても過言ではないと思うのですが、驚くのは、こうした報道が、興味本位のワイドショーだけではなく、朝のNHKのニュースでも、堂々と行われているということです。

しかし、原油価格や円が高くなって得をする人もいれば、下がると恩恵を受ける人もいる訳で、全ての人が、一様に不況にあえぐ、というシチュエーションの方が、不自然だということは、ちょっと冷静に考えればわかるはずです。

実際、先日、韓国から来日した友人と食事をしましたが、いま、韓国と日本を結ぶ飛行機は、円高・ウォン安の恩恵を受けて、韓国旅行に出かける日本人観光客で大変な混雑だそうです。しかし、こうしたニュースは、不況感を煽るには「都合が悪い」という理由で、テレビや新聞ではほとんど取り上げられることはありません。

おそらく、視聴率を上げるためには、不況感を煽った方が好都合、という判断も働いているのでしょうが、広告収入に依存するメディアにとって、これは自殺行為といっても過言ではないでしょう。実際、電通の売上は、前年比で15%近く減少しており、不況報道によって不安心理を煽られれば、さらに多くの企業が広告費を削ろうとするでしょう。

と同時に、電通の売上推移を子細に見ていくと、そこには、広告主のしたたかな動きを見て取ることもできます。

例えば、今年11月の電通の売上高は、前年同月比で約14%下落しました。特に大きな減少となったのは新聞(-24%)と雑誌(-17%)ですが、反対に、このような景況感の中でも、インターネット広告は、前年比4%のプラスとなっています。

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お世辞にも、インターネット広告に力を入れているとは言えない電通でさえ、前年以上の売上を上げているのですから、市場全体では、もっと大きな伸びになっていると考えられます。

この背景にあるのは、広告の「費用対効果」に対する関心の高まりではないかと思います。確かに多くの企業において、経営環境は悪化しているのでしょうが、それが契機となって、日本のマーケター達も、ようやく、広告の費用対効果を真剣に考えるようになってきた、というのが本当のところではないでしょうか?

実際、弊社においても、サブプライム問題が深刻化してきた秋以降、おかげさまで、ご相談を頂く件数は、むしろ増加を続けている、という状況です。

この背景には、テレビや新聞・雑誌に比べて、インターネット広告は、費用対効果の測定という点では格段に優れている一方、費用は圧倒的に少なくて済むということもあります。例えば、先の電通の売上データで言うと、新聞広告は前年比で42億円、テレビは35億円の減少となっていますが、一方で、インターネット広告は売上の総額自体が20億円程度しかありません。

つまり、もし、削られたテレビの広告予算の10%(3.5億円)がシフトするだけで、インターネット広告にとっては18%近い大幅な増加、というインパクトを与えることになります。

サブプライムショックの震源地である米国で、B2B市場のマーケターを対象に行われた調査でも、インターネット広告費については、ほとんどの企業が、2009年は、むしろ広告支出を増やすという回答をしています。

景気は「気」から、などとも言われますが、当ブログ読者のみなさまにおかれましては、不況報道にいたずらに惑わされることなく、費用対効果の分析と、SEMへの適正な予算配分により、2009年も、ライバルを押しのけ、更なるビジネスの発展を遂げられますよう、心より、お祈り申し上げます。

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