2011.3.25

本日、インターネットコムとgooリサーチによる「ネット広告に関する定期調査(第14回)」の結果が公表されていました。

検索連動型広告をクリックしたことがありますか?

その中で、「検索連動型広告をクリックしたことがありますか?」という問いに対し、「ある」と答えた人の割合が、

第14回 68.3%(今回)
第13回 70.2%
第12回 70.9%
第11回 69.5%
第10回 71.0%(1年前)

という推移を示していることをうけて、『クリックする人の割合が頭打ちになっているので、クリック率を上げるには新たな施策の導入が必要ではないだろうか。』と結論づけています。

しかし、ここで気になるのは、この調査で言及しているのは「広告主」ではなく「検索エンジン」にとってのクリック率と考えられるのに対し、全体の文脈からすると「新たな施策の導入が必要だ」というメッセージは「広告主」に向けられていると思われる点です。

広告主の立場で検索連動型広告を利用されている方にはわかりづらい話だと思いますので、少し整理をしますが、「広告主にとってのクリック率」というのは、言うまでもなく「自分の広告がクリックされる確率」を指します。これに対して、検索エンジンにとってのクリック率とは「掲載(表示)された広告のうち、どれかがクリックされる確率」を指します。

検索エンジンにとってのクリック率は、簡単にいえば、掲載される広告が多いほど高くなります。ある検索キーワードに対して、一つしか広告が掲載されない場合と、中央上部に4つと右側にも8つも広告が出ている場合で、「掲載(表示)された広告のうち、どれかがクリックされる確率」は、どちらが高くなるかを考えてみれば、よく分かると思います。

今回の調査では、検索ユーザーに対して「表示されている検索連動型広告のどれか一つでもクリックしたことがあるか?」と聞いている訳ですから、ここで言うクリック率は「検索エンジンにとってのクリック率」になるのはご理解頂けると思います。

さて、クリック率に話を戻すと、検索結果における1ページあたりの広告の表示件数は(今後、ヤフーやグーグルが大きく仕様を変えない限り)だいたい12件程度が上限となります。一方、検索連動型広告が日本に上陸してから、今年で10年目になりますので、ある程度、メジャーなキーワードについては、常に複数の広告が表示される状態になっていると思われます。

実際、この調査でも「検索連動型広告をどの程度、目にしますか」という質問に対して、全体の57.2%が「ほぼ必ず見る」もしくは「よく見る」と回答しており、この傾向に大きな変化はないとしています。

つまり、これらの結果を総合するとメジャーなキーワード群に対しては、一通り、広告主による検索連動型広告への出稿が進んだので、検索エンジン側から見ると「掲載される広告数の増加に伴うクリック率の上昇」については頭打ち傾向にあるという見方が正しいように思います。

しかし、この調査では『この結果からもネット広告に対するユーザーの姿勢が硬直化していることが分かる。』と結んでおり、この結論については、正直、ちょっと違和感を覚えます。(更にいうと「ユーザーの姿勢の硬直化」という意味も正確には分かりません。おそらく「検索連動型広告に反応しなくなっている」ということを言いたいのかなとは思いますが。。。)

どんなワードで検索しても、常に一定数の検索連動型広告が表示される状況においては、(検索エンジンにとっての)クリック率が頭打ちにあるのは、ある意味、当然の結果といえますが、それをもって「ネットユーザーが検索連動型広告に反応しなくなっている」、だから「ディスプレイ広告やアフィリエイトを検討すべきだ」という結論は、ちょっと乱暴なように思います。

もちろん、この調査が指摘する通り、検索ユーザーは、以前にくらべて検索連動型広告をクリックしなくなっているのかもしれません。ただ、少なくとも、今回の調査から、そういう結論を導くことは難しいのではないかと思います。

また、「検索エンジンにとってのクリック率」と「広告主にとってのクリック率」では、それぞれに影響を与える要因が違います。上述の通り、検索結果に表示される広告の数が増えれば「掲載(表示)された広告のうち、どれかがクリックされる確率」は上がると考えられる訳ですが、一方で、広告主にとっては競争が増える訳ですから、個々の広告がクリックされる確率は、むしろ下がることもあり得ます。また、その広告がどのくらい上位に掲載されているか、またキーワードに対して、どのくらい関連性・適合性の高い文言になっているかによっても、クリック率は変わってくるはずです。

こうしたことを考えてみると「検索エンジンにとってのクリック率」が頭打ちになっているからといって、それを直ちに、検索ユーザーの姿勢の変化に結びつけることには無理があると思います。

もし、本当に自分の検索連動型広告がクリックされにくくなっていると感じているのであれば、入札価格や掲載順位、あるいは広告文の内容を見直してみるなど、「検索ユーザーの姿勢の変化」のせいにする前に、やるべきことは多々あるように思います。(もちろん、バナー広告やアフィリエイトもあわせてトライしてみることを否定している訳ではありませんので、念のため、申し添えます。)

何か、他人様の調査にケチを付けるような内容になってしまいましたが、検索連動型広告のクリック率が低下している広告主の方々に誤解があってはという思いから、取り急ぎ、意見を述べさせて頂きました。もちろん、調査結果に関する解釈や理解が間違っている場合には、ご指摘を頂ければ幸いです。(info@LeGrand.jp まで。)

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)



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