前回のアスキー・Web Professional編集長中野さんとの対談に続き、本日は同じくルグランルームでの『Convince & Convert ~買いたくなるキモチにさせるしくみとシカケ~』セッションのゲスト講師としてご参加いただく、株式会社ロフトワークの諏訪 光洋さんに彼のセッションテーマである、「リードを育て、気持ち良く買ってもらう為に~リードナーチャリングの仕組みづくり~」についてお話を聞かせていただきました。
泉浩人(以下、泉):ジョブズ、亡くなってしまいましたね。
諏訪光洋氏(以下、諏訪):亡くなってしまいました。。この日は遠からず来るとは思っていましたが、やっぱり悲しいです。僕は絵がヘタで美大に行けなかったのですが、卒業後に働いたラジオ局にあった白黒のMacintoshをイジりはじめたのがデザイナーとして、そしてクリエイティブに直接関わるようになったきっかけです。黒タートルの年期は僕の方が長いです。…どうでもいいですが。
泉:…諏訪さんも私達も楽しくプレゼンが作れるのは、ジョブズが創ってくれたMacとキーノートのお陰ですよね。それをフルに活用し、いいセッションにしていきましょう!さて、諏訪さんには、「リードを育て、気持ち良く買ってもらう為に~リードナーチャリングの仕組みづくり~」というテーマでお話いただくことになっていますが、その内容を少し教えていただけますか?
諏訪:えー…まだ考えてません(キリッ)。ですがネット上でますます進化してる「対話」の事。対話を通じて顧客をつくっていく、あるいは顧客の姿を明確にしていくといったことをお話しようかと思っています。
泉:諏訪さんがおっしゃる「対話」とは具体的にどんなイメージですか?
諏訪:日本のマーケティングで「エンゲージメント」という言葉はちょっと一段落した感じはありますが、海外英語圏のマーケティングの現場に行くと「エンゲージ」という言葉は完全に定着をしています。このエンゲージの間隔は実は対話と同じなんだと思うのです。例えば「ソーシャルメディアを通じて顧客とエンゲージする」という言葉はつまり対話をする、と言ってしまってよいかなと。対話もまた「向き合う」「信頼をつくる」という事も意味する包括的な言葉ですから。…ちょっと抽象的な話になっちゃいました。
で、対話を行なうメッセージングの技術がすごく進化しつつあるんです。例えば、カゴの中に放置された商品や、長期間ログインしなかったユーザーにリマインドするタイミングや内容を動的にコントロールしたり、お薦めの商品・サービスのリコメンドの高度化なども一例です。あるいはメルマガはこれまで1種類を定期的に何千、何万人に送っていたものが、来訪者の行動に応じて細かく分類され不定期にメッセージングされるような世界も一企業が手に入れられるようになってきてます。来訪者3,000人の行動を把握するだけではなく、3,000のランディングページと3,000通り手書きの(ような)メッセージを投げかける事ができる。大量に生まれるデータをどう把握するか、そして対話をどうデザインするかが重要になってきます。
泉:そうなると、それらのいわゆる「Big Data」とどう向き合うかが重要になってきますよね。ロフトワークさん運営のセミナー「ウェブエキスパート」で定期的にセミナーを行なわせていただいていますが、そこでも「データは断片的ではなく統合して見ることが重要です」ということを、よくお話しています。
諏訪:Facebookはわかりやすいのですが、僕が見ているFacebookのページは他の誰も同じ内容を見ていません。世界中の人が自分だけのコミュニケーションを行なっています。これはこれまでの企業サイトやブログと全く違う世界です。先ほどお話した通り、3,000人の顧客に一括配信ではない数百種類のメッセージが不定期に届く。そしてそのデータ集計と分析も行なう事ができる。Mail ChimpのようなAPIを公開しているメルマガシステムもあり、より複雑なメッセージングとコミュニケーションをデザインができるようになっています。
対話やログ、アクセスから生まれる「Big Data」がキーワードになってきていますが、それは一方で「個人」を把握でき、個人と対話ができるようになったからこそBig Dataが生きるという事なんだと思います。
泉:以前、Overture時代に、サービスに申し込んだものの、使い方が分からないユーザーが多く、その結果、利用金額が増えないという問題がありました。その時に、アカウント開設から利用期間・利用状況に併せて、パーソナライズしたメールを配信するというプログラムを企画したのですが、当時はそれを実現できるメールベンダーがアメリカでも見つからず、やっと見つけたのがインドの会社だったということがありました。今ではどこでも出来るシステムになっていますので、ここ10年にメールマーケティングも大きな進歩を遂げたということになりますね。
諏訪:そうですね。リコメンド・パーソナライズを実現する費用はSaaSサービスなどの登場により非常に安価になりましたよね。課題は、パーソナライズされた何百・何千通りのユーザーの属性や行動履歴にあわせたコンテンツやメッセージをどうやって用意するかということ。そして、データとどう向き合うかが重要になりますよね。データをミクロ・マクロの視点で解析することが求められるという意味では、「Big Data」の発祥はSEMでないかと思うんですよ。
泉:そうかもしれませんね。何かを欲しいと意図を持って検索する人と漠然と物を探している人をキーワードから読み取ることができる。更に、何パーセントの人が意図を持っているのか、その意図は何なのかということを、膨大なデータの中から分析できるのはSEMなんですよね。オフライン広告ではあり得なかったことが、SEMのみならず、デジタルマーケティングでは可能になる。
諏訪:マクロなデータの見方と、個別にこういう人がいるというミクロなデータと同時に見ていかないといけないですよね。定量と定性の話ですが、グロースのデータからマクロに見ていくのと同時に、FacebookやTwitterなどからこういう声があるよ、みたいな定性の情報をもらっていく。
泉:データの重要性が高まる一方で、「Big Data」を誰がもつのかという問題もでてきています。デジタルに関するデータは顧客が持っていて、共有されないため、提案も出来ないという話を一般の広告代理店から聞くことがよくありますね。
諏訪:なるほど。企業側もコンサルテーションをしてくれるならデータは共有するけどメディアバイイングをする代理店にデータを渡すと、いいように媒体費を使われてしまいそうという信頼感の欠如が、データを渡さない、というスタンスに向かわせているのかもしれない。
泉:組織の分断がデータの分断の原因にもなっているケースもありますね。例えば、アメリカのカンファレンスで「BtoBキャンペーンのROIについて」というテーマが毎年登場します。社内、特にマーケティングと営業部門の間でデータ共有化が出来ていないため、質の高い施策を実行できないという話です。マーケティングが営業部門の最終的な成約率や金額まで追わないと、例えばSEMの場合は適切なクリック単価を設定する事が出来ないという問題が発生します。一方で、営業部門は、マーケティングには管理されたくないという思いが強い。最新情報が満載なカンファレンスで、このテーマだけは変わらない。マーケ vs 営業部門は、どの国に於いても永遠の課題のようです。(笑)
諏訪:「データは誰が持つべきか?」というのはパネルディスカッションのテーマになりそうですね。
泉:諏訪さんのセッションでは、ウェブの「対話」から「Big Data」まで、かなり幅の広いお話になりそうですね。50分で大丈夫でしょうか?(笑)
諏訪:僕も心配です(笑)。
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「アドテック東京」まで残すところ、あと1週間ほどとなりました。ご存知の方も多いと思いますが、「アドテック東京」は、最先端企業によるセミナーやワークショップが開催され、変化し続けるマーケティングに関する最新情報が発信される場として、年々規模が拡大している国内最大のデジタルマーケティングのカンファレンスです。
今年は、弊社CEOの泉が「ソーシャルリスニングによるサーチキャンペーンの最適化」をテーマにセッションを持たせていただくことになり、それに加え、アドテック会場内にルグラン専用セミナールーム「ルグランルーム 」を開設し、国内外のマーケティングの業界で活躍する識者やメディア関係者を招き、『Convince & Convert ~買いたくなるキモチにさせるしくみとシカケ~ 』をテーマに海外を含む業界の最新動向や、集客・売上を上げるための施策作りなど、2日間で10以上のセッションを開催することになりました。
ご来場の際は、ぜひお気軽に「ルグランルーム」お立ち寄りください。