SESロンドン2日目の基調講演に登壇したのは、Googleヨーロッパで、広告商品の企画・設計などを担当するディレクター、Ian Carrington氏。
Googleに入社する前はAlta Vista(=アメリカで産まれた検索エンジンで後にOvertureが買収)にいたというCarrington氏のミッションは、広告主のROI向上に寄与するような広告サービスの提供。
まずは、いまGoogleが目指しているものは、『どこで、誰に、何を聞かれても正しい答えが返せるようになること。さらにその先には、何を知りたいかを聞かれる前に分かるようになること。』であり、例えば、「ナレッジグラフ 」のようなサービスの提供も、そうした「野望」を実現するための一つのステップであるという話から始まりました。
そして、Carrington氏が担当する広告商品の設計にあたっても、そうした思想は活かされているとした上で、Googleの広告商品設計に関する3つの基本方針を紹介しました。
Be There
目的やシチュエーションに応じて、様々なデバイスを自由に使い分ける、今日の消費者行動を考えた場合、どんなデバイスにも最適化されたフォーマットで広告が配信できることは不可欠の要素であると。
実際、英国では、モバイル経由のトラフィックが売上に与えるインパクトが非常に大きくなっており、大手小売チェーンTESCOのネット売上の1/3はモバイル経由になっており、また、老舗百貨店John Lewis では、クリスマス商戦時のトラフィックの実に3/4がモバイル経由だったそうです。
もはや、『モバイル戦略を考えないということは、将来のことを考えていないのと一緒』とまでCarrington氏は言い切ります。
Be Relevant
一方で、広告の費用対効果を高めるためには、適切なオーディエンスに対して広告が配信されるような仕組みが非常二大切であるとも言っています。たとえば、モバイル端末利用者の位置情報に基づき、広告配信ルールを見直しただけで、ROIが劇的に改善することもあると。
Be Optimized
とはいえ、いくら広告を配信するターゲットの選定が正しくとも、その広告を通して伝えるメッセージが適切出なければ、費用対効果の改善は望めません。
一方で、最適化を進めようとすると、どこかでプライバシーの保護という問題にも行き当たることになり、講演後のQ&Aでは、Googleが、法的・倫理的な観点から、広告配信の最適化とプライバシー保護という問題に、どう折り合いをつけるかを、慎重に検討している、といった点にも言及していました。
今後、Googleが、適正な収益の確保を図りながら、サービス利用者の利便性や権利、そして広告主の費用対効果という、ともすれば相反しがちな3者の利益について、どうバランスを取っていくのかが注目されるセッションでした。