2008.7.31

前回、クリック率に代表される広告の「品質」の低い広告に対して、高い最低入札価格が適用されるのは、検索サイトが広告主に対して課す「ペナルティ」のようなものだ、というお話をしました。

一方で、広告主の貴重な予算が、コンバージョンにつながりにくい「品質」の低いクリックによって費消されてしまわないよう、オーバーチュアやグーグルが、広告の配信先に対しても、しっかりとした「品質」管理が行うことが重要になってくる訳ですが、この点について、インターネットの掲示板などを見ると、一部の広告主の間から、不安の声が上がっているようです。

話題になっているのは、「アービトラージュ」とよばれる、「鞘取り」を目的としたサイトの増加です。「アービトラージュ」というのは、金融取引などで良く用いられる用語で、例えば、異なる国や市場の間での、金利や為替レートの差がある場合に、そこから利鞘を稼ぐ取引を意味します。

下図はこうした「鞘取り」を目的としたと思われるサイトの一例です。

example

アドワーズで「HD修復」というキーワードを検索し、そこに表示された広告の一つをクリックしたところ、このサイトが表示されました。ところが、よく見ると、このサイトもまた検索サイトで、検索結果として表示されているのはオーバーチュアの広告です。また、検索窓を見ると、このサイトでは、アドワーズの検索に使われた「HD修復」ではなく、「ハードディスク復旧」というキーワードが検索されたことになっています。

こうしたサイトでは、自社のサイトで表示するオーバーチュアの広告がクリックされた場合に、クリック単価の一定割合を配分して得られる収益と、「HD修復」というキーワードに対してアドワーズに支払うクリック単価との差額を利用して「鞘取り」を行っていると考えられます。従って、オーバーチュアにおいて、よりクリック単価の高いキーワードに対する広告を表示した方が、当然、利鞘は大きくなります。

アドワーズで「HD修復」というキーワードをクリックして来訪したユーザーに、「ハードディスク復旧」というキーワードに入札しているオーバーチュアの広告を表示しているのも、そうした事情があるのではないかと思われます。

もちろん、最終的には、広告主が期待する費用対効果が実現できていればよい訳ですし、少しでも多く広告収入を稼ぎたい検索サイトと、少しでも安く集客をしたい広告主の利益が相反する場合に、どこでバランスを取るかは、オーバーチュアやグーグルなど、検索連動型広告を提供する事業者が判断すべき問題です。

ただ、こうした「鞘取り」サイトが増殖を続けた場合、例えば、費用対効果の観点から、あえて「HD修復」というキーワードへの出稿は避け、「ハードディスク復旧」というキーワードをオーバーチュアにだけ出稿していたとしても、実際には、アドワーズで「HD修復」というキーワードを検索したユーザーに広告が表示される、といったことが頻繁に発生することになります。

個々の検索キーワードに隠された検索ユーザーの意図を推し量りながら、ターゲットとするユーザーにだけ広告を表示させることで、費用対効果の高い集客ができるという点が検索連動型広告の大きなメリットであることを考えると、入札したキーワードが実際には検索されていないにもかかわらず、広告が表示されてしまうことには、違和感を覚える広告主もいるのではないでしょうか。

広告が掲載される条件を広告主が主体的にコントロールできないという点では、コンテンツ連動型広告と同じような仕組みと考えることもできます。とすれば、コンテンツ連動型広告と同様に、広告主が、そうした広告の表示を希望しない場合には「オプトアウト」できたり、「ドメインブロック」のように、広告の配信先を広告主が主体的に選べるような仕組みが、あわせて提供されれば、広告主としては、より安心して広告の出稿ができるのではないかと思います。

みなさんはどのようにお考えでしょうか?


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2008.7.24

前回、オーバーチュアの最低入札価格が、「可変」方式に変更されるため、今後はアドワーズも含めて、クリック率に代表される広告の「品質」が低いと、最低入札価格を高く設定されてしまう可能性がある、というお話をしました。

そこで今回は、広告の「品質」というのは誰のためにあるのかという問題について、少し考えてみたいと思います。

結論を先に言ってしまうと、基本的には、Yahoo!やGoogleなど、広告が表示される検索サイトの利益を守るためにあるものと言うことができます。

ご存知の通り、検索連動型広告は、クリックをされない限り費用(→検索サイトから見れば「収入」)は発生しません。もし、検索結果と一緒に表示された広告がクリックされなければ、また次の検索が行われるまで、検索サイトが収入を上げる機会は訪れません。

検索サイト上で日々行われる検索の数は無限ではありませんので、検索という限られた収入の機会を、できるだけ無駄にしないようにするためには、クリックされる可能性の高い広告を、できるだけ目立つところ(=上位)に表示させようとするのは、当然のことと言えます。

つまり、「品質」の低い広告に対して、高い最低入札価格が適用されるのは、検索サイトが(自分の利益を守るために)広告主に対して課す「ペナルティ」である、という見方もできます。

一方、広告主にとって最も気になるのは、検索サイトから送られてくるトラフィック(=クリック)の「品質」です。自社の商品やサービスに興味・関心を持つ検索ユーザーに広告がクリックされれば、サイトで購入や申込につながる可能性も高くなります。それゆえ、広告文には、商品・サービスの特徴を書いて、検索ユーザーにアピールしたり、反対に、ターゲットではないユーザーにはクリックされないようにするといった工夫も大切になる訳です。

でも、広告主が全く意図しない形・場所に広告が表示され、クリックされているとしたらどうでしょう?検索サイトは収入を得ることができますが、広告主にとっては、広告費が増えるばかりで、売上にはつながらず、費用対効果を悪化させてしまうことになります。このような「品質」の低いトラフィックを送るサイトには広告を配信しないという形で、広告主も「ペナルティ」を与えることができなければ、検索連動型広告は、検索サイトにばかり有利な、極めて不公平な仕組みとなってしまいます。

こうした問題に対応するため、例えばグーグルでは、コンテンツ連動型広告について、広告主が良質なトラフィックを生むサイトだけを選んで、広告を配信できるようにしたり、グーグル自身が、広告収入だけを目的につくられた「Made for AdSense」と呼ばれるサイトを監視し、場合によっては、広告の配信を停止するといった措置を講ずることで、広告主の利益を守る努力が行われています。

一方、オーバーチュアも、米国(Yahoo! Search Marketing)では、最低入札を「可変」方式に変更するのに先立ち、昨年「ドメインブロック」という機能を追加し、広告主が、広告を配信したくないサイトを指定できる仕組みを提供しています。しかしながら、日本においては、残念ながら、今のところ、広告主が配信先をコントロールする手段はない状態で、最低入札価格の変更がスタートすることになってしまいました。

こうなると、広告配信先の選定にあたっては、オーバーチュアが、しっかりとした「品質」管理を行ってくれていることを期待するしかない訳ですが、ここには不安材料も見え隠れしています。

この続きは、また次回。


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