2013.6.20

アドワーズ管理画面にある[表示項目]を見ると、いつのまにか様々な指標が現れていることに驚く方もいらっしゃるかもしれません。管理画面の[キャンペーン]または[広告グループ]、[キーワード]タブから[表示項目] > [表示項目の変更]より定期的に確認することをお勧めします。

クリックスルーコンバージョンやクリック数、インプレッション数などが代表的かつ重要な指標であることは変わりませんが、インプレッションシェアや相対クリック率など副次的な指標についても活用方法次第でその重要度合いが変わってきます。 弊社ブログでも新たな指標が加わる度、それらの活用方法についてご紹介してきましたが、指標数もここまで(下図)増えてくるとキャッチアップするだけでも大変です…。

AdWords管理画面の表示項目を定期的に確認しましょう
【AdWords管理画面の表示項目を定期的に確認しましょう】

そうはいっても一つ一つ指標の意味や活用方法を理解することは、アカウント運用者に求められる姿勢でもありますので、今回はその中でもキーワードの入札価格調整(いわゆるキーワードチューニング)に活用できる指標、「サーチファンネル指標」についてご紹介したいと思います。

サーチファンネル指標には、コンバージョンに至るまでのアシストクリックやアシストインプレッションなど、コンバージョンに至るまでの間接効果を表した指標が含まれます。 アシスト効果など間接指標については特に新しい指標ではないですし、Googleアナリティクスのマルチチャネルなどをご覧になられている方にとっては広告以外の経路もモニタリングし間接効果の重要性を実際に認識されているかと思います。

一方で、ラストクリックのみで全てを評価し広告運用することに懸念を持ちながらも、実際に管理画面にてキーワードチューニングを行う際は、どうしても“直接コンバージョンを獲得したか否か”で判断してしまうことが多いのではないでしょうか?

具体的に見ていきましょう。 下図のように、サーチファンネル指標を追加した各キーワードの掲載結果をみると、いくつか興味深いデータが見えてきます。

サーチファンネル指標を追加したキーワード掲載結果
【サーチファンネル指標を追加したキーワード掲載結果】

上記5つのキーワードを例にしてみます。キーワードAはいわゆる具体的商品名を意味するブランドキーワードで、当然ながらコンバージョン率は最も高く、クリック単価が低いため獲得コスト(費用/クリックスルーコンバージョン)は安価となっています。 キーワードチューニングの際には、獲得コストの高低で判断することが多いですが、キーワードD、Eでは獲得コストはほぼ同じ値となっています。

では、少し指標を広げてアシストクリック、アシストクリックによるコンバージョン数(=アシストクリックによって生まれた総コンバージョン数)ではどうでしょうか。 キーワードDではアシストクリックが少なく、アシストによるコンバージョン数が多いのに対し、キーワードEではアシストクリックが多く、アシストクリックによるコンバージョン数少ないという反対の傾向がみえています。

サッカーやアイスホッケーなどの競技で例えるならばラストクリックはポイントゲッター、アシストキーワードはアシスターに置き換えられますが、このケースでは「キーワードDはポイントゲッター」、「キーワードEはアシスター」という役割にあたるかと思います。

つまり、キーワードD自体はEよりもコンバージョン数も多いという事実はありますが、これは“Eのようなキーワードからのアシストを受けて達成できている結果”でもあるといえます。参考指標として「アシストクリック数/ラストクリック数」が1よりも高い場合、そのキーワードはアシスター傾向が強いともいえます。

キーワードチューニングで一歩進んだ視点として「そのキーワードを停止することが他のキーワードの成績に悪い影響を与えないか?」、「キーワードの露出を広げれば、他のキーワードにも好影響を与えるか?」という点が挙げられますが、上記のような指標を用いることで定量的に考察することができます。

(※アシストクリックはラストクリックを除く、コンバージョンに至ったクリック数で、これらサーチファネルの指標はAdWords広告のクリックのみが対象となります。複雑ではありますが、厳密には他の検索パートナーや自然検索含めマルチチャネルで見た方が正確なアシスト効果を評価できます。)

もちろん、“ラストクリックの価値の方が高い”とみなし、管理画面上でコンバージョンが出ているキーワードを重視することもありますし、正しく運用すれば“短期的には”その考え方で費用対効果の悪化を招くケースは少ないと思います。

ただ、こういった運用方法で懸念すべきことは、ラストクリックの価値に傾倒するあまり、実はコンバージョンの起点となったアシストキーワード、“隠れた貢献者”の活動を制限してしまうことです。

アシストを必要とせず、たった一人でゴールまで導くことができるスーパースター選手を増やしていくことも望みたいところですが、SEMにおけるスーパースターに該当するようなキーワードはせいぜいブランド名、自社商品名に限られます。

アシスト効果を軽視し、優秀なアシスターを削っていけば、いつかは数限りあるポイントゲッターにのみ頼ることになり、チーム全体の得点力の低下を招くことになります。

そしてラストクリックのみに重視した運用でキーワードを次々に削っていくと、短期的には費用対効果は改善されるかもしれませんが、縮小均衡に陥り、いつかは得点力不足になってポイントゲッターさえも消えてしまうことにもなりかねないので注意が必要です。

アトリビューションという言葉が浸透して久しいですが、こういった言葉を用いて「間接効果もエライ」と安易に片づけてしまうのではなく、サーチファンネル指標を例にすると、「アシストクリック数/ラストクリック数の指標より、0.5ポイント以上は優れたアシスターか?」「自社のサイトでは平均アシスト数に対して、このキーワードのアシスト数は評価に値するものなのか?」といったような、さらに一歩奥へ踏み込んだデータ分析やそれに基づいて運用することも面白いと思います。

(by 桑原 達彦, Consultant, Le Grand)

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2013.4.12

今回は、Googleアナリティクスを活用したリマーケティング広告の設定や活用例について簡単にご紹介します。

昨年7月「Remarketing with Google Analytics」として米国にてベータ版が発表され話題になってから久しく、既に日本でも実際に運用されている方もいらっしゃると思います。

Googleアナリティクス(以下GAと表記)を利用されている方、AdWordsによるサイト集客を行われている方にとって有益なマーケティング施策の一つとして活用できる機能かと思いますので、ご活用をお薦めします。

【GAでリマーケティング広告を実施するメリット】

GAを活用する大きなメリットは次の2点です。
(1)GAの計測用タグでリマーケティングの計測機能をもつため、AdWords用リマーケティングタグの設置が不要。
(2)GAで計測できるデータを基にしたユニークなリマーケティング広告配信が可能。
以下では設定方法や運用例をご案内します。

【GAタグの書き換え】
(1)のメリットのためにはGAの計測用タグにリマーケティングの計測機能を持たせるためには、下記の通り一行のみコードの書き換えが必要です。
こちらにある通り、直接書き換える方法もありますが、GA管理画面より書き換えられたタグを取得することもできます。

【GA管理画面からリマーケティング機能を持たせたタグを取得】

GAログイン後、[アナリティクス設定]>[トラッキング情報]より下記[ディスプレイ広告主のサポート]をオンにすると、コードの赤で囲まれた一行部分が次のように書き換わります。
——————————————————————————————————————–
<ディスプレイ広告主のサポート“オフ”>
「ga.src = (‘https:’ == document.location.protocol ? ‘https://ssl’ : ‘http://www’) + ‘.google-analytics.com/ga.js’;」
↓↓
<ディスプレイ広告主のサポート“オン”>
「ga.src = (‘https:’ == document.location.protocol ? ‘https://’ : ‘http://’) + ‘stats.g.doubleclick.net/dc.js’;」
——————————————————————————————————————–
書き換えられたGAタグを既存のタグと全て入れ替える必要はありますが、1種類のタグで済みますので、大きな手間はかからないかと思います。
これからGAアカウントを開設される方は将来的にリマーケティングへの活用も視野に入れ、初めからこちらのタグを設置することをお薦めします。

【GA管理画面側でのリマーケティングリスト作成】
GAタグの書き換え作業と同時にリマーケティングリストを作成しておきましょう。[アナリティクス設定]>[リマーケティングリスト]より作成を始めます。
ここで上記(2)のメリットを最大限活用します。

通常のAdWordsリマーケティング広告では、どのページに来訪したユーザーにどの広告を配信するか、という“シナリオ”作成が主な設定となりますが、GA情報を活用すると、「自然検索経由の来訪ユーザー」や「リピート回数○回以上の来訪ユーザー」、「来訪してきた検索ユーザーの中で検索クエリに「XXX」を含むユーザー」(=サーチリターゲティング)といった特定のユーザーのみをリストとして蓄積することができます。

【GA管理画面でリマーケティングリストを作成】
【GAデータを活用したリマーケティングリスト】

売上データも計測している方は、「売上○○円以上のユーザー」のみを蓄積することもでき、金額に応じて“ヘビーユーザー”や“ライトユーザー”にそれぞれ別の広告を届けることも可能です。[+新しいリマーケティングリスト]より一度見て頂くと、膨大な数の“シナリオ”を設定できることが分かります。

最後にGAと連携しているAdWordsアカウントの管理画面にて、AdWordsログイン後、[共有ライブラリ]>[ターゲットユーザー]からGAで設定したリストが共有されていたら設定は完了です。

【AdWords管理画面側でリマーケティングリストの共有、リスト蓄積を確認】

※リマーケティング広告が機能するには、最低100人のユーザーがリストに追加されている必要がありますので、GAのデータをみながら対象ユーザーが一定数存在することを確認の上、効果的なリストを作成してみて下さい。

最後に、リマーケティング広告の運用に関して個人的な意見を述べます。
リマーケティング広告を運用されている方の多くは、「サイト(お店)へ来たけどCVしなかった(購入しなかった)ユーザーへ再検討してもらう」ことを目的に活用されていますし、実際CV率が高く、効果があると認識している方が多いのではないでしょうか。。

一方で、今年の2月に開催されたSES London 2013でも言われていましたが「リマーケティング広告は一度サイトへ来訪して物を買わずに出て行ってしまったユーザーを刈り取るため、尻拭いしていることと同じであり、CV率が高いことが必ずしも良いということではない」という見方もあります。

また、「パーミションマーケティング」の視点から考えると、サイトに来訪したから、ユーザーのパーミション(許可)を得たとみなし、そのユーザーをすぐその日からリマーケティングで追いかけて良い、と果たして安易に考えてよいものかとも思います。
もちろんCV率が高いことはある意味でユーザーにパーミションを得たからこそ出る成果でもあると思いますので、これについては議論の余地はあります。

今回ご紹介したGAを活用したリマーケティング広告では、GAで取得できるデータを利用して、ある意味「ユーザーのパーミッションの度合い」に合わせて配信ボリュームやメッセージをコントロールすることができると思います。そういう観点でもこの機能を是非活用いただけたらと思います。

(by 桑原 達彦, Consultant, Le Grand)

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