2010.9.15

supercharge

毎年SESに参加して驚かされることは、世の中にてこれだけインターネット検索やオンラインマーケティングが一般化されてきているにもかかわらず、SESの会場には常に新しくオンラインマーケティングに参入する広告主やマーケターが絶えず来ている事です。そして、イベントの主催者となるSES側でも各セッションで新しいマーケティング手法やトレンド情報を提供しながらも、必ずSEMの手法や考え方についての基本を押さえたセッションが用意されていると言う事です。

もちろんSEMに長年携わってきているルグランのスタッフでもこれらのセッションは基本に戻る為の良い機会でもあり、また、世の中の広告主の方の悩みや考え方に生で触れる絶好の機会でもあります。今回レポートする「10 Things To Supercharge Your SEM Campaigns 」もそんなセッションの一つで、SEMに初めて挑戦するビギナーから、エキスパートまで幅広いユーザー層が参加しているセッションとなりました。

英語のタイトルを分かりやすく訳すと、この記事の題名にもあるように「SEMキャンペーンをスーパーチャージする為の10カ条」と言う事になるかと思いますが、本当に馬力アップが可能かどうかは別として、その内容にはこれまでルグランでも日々の運用にて実施している手法もあり、あらためて基本の重要性を認識する事ができました。

では、さっそく10カ条の内容に入りたいと思います。

1)テストする事が重要、そして常にすべてをテストする意識を持つ。たとえば、広告テキストの文言を使ったA/Bテストは検索連動型広告ではもう当たり前となっていますが、リンク先のサイト上のボタンのラベル表示や色、イメージの内容までテストを行い、結果を見極める事が重要です。いかに優秀なマーケターであってもすべての答えを最初から持っている訳ではありませんので、ユーザーの動向やサイトへのフィードバックを入手する為のテストを行う事が重要です。

2)検索連動型広告とリマーケティング(リターゲティング)広告を併用する。前回もこのブログの投稿記事にてリマーケティングついてご紹介をさせて頂いていますが、一般的にサイト訪問者の97パーセントはコンバージョンに至らずサイトから離脱していきます。どんなに優れたサイトを構築しても、今まではこれらのユーザーに対して指をくわえて見過ごしている状況が多かったのですが、検索連動型広告経由で訪問したユーザーを特定したリマーケティング広告の導入により、損失する可能性があったコンバージョンを発生させる事が可能となります。

3)コンテンツ連動型広告と検索連動型広告を併用する。特にグーグルアドワーズ広告が提供するコンテンツ連動型広告などは近年そのマッチング精度の向上だけではなく、細かいターゲットの指定や広告を表示するサイトやネットワークのターゲット指定などが可能となり、広告主にとっても利用価値が高まっているように感じられます。自社のブランディングにも有効な広告手法ですが、覚えておきたい大事な基本としては、必ず検索連動型キャンペーンとは別のキャンペーンを作成する事により、予算の配分や細かい設定を個別に行います。

4)検索連動型広告の広告グループ設定の見直しを怠らない。ご存じのとおり、広告グループの構成はクリックコストに直結するため、常に掲載状況を確認して見直しが必要となる広告コンポーネントです。また、広告グループのパフォーマンスは色々な要因で変動するので、一時の結果に満足したり、失望するのではなく、その都度対策を打つ必要がある事を認識します。

5)リンクビルディングは近道をせず基本に忠実に。リンクはお金で買うものではなく、リンクは他のサイトとの関係を深める事により成長していくものだと認識しましょう。自社サイトと外部ベンダー、提携パートナー、店舗、ユーザー、友人、カスタマーとの関係により、リンクを成長させていく事が大事です。

6)SEOの為のコンテンツ作成には、コンテンツの内容が重要である。むやみにコンテンツを増やすのでは無く、あらかじめコンテンツのロードマップを作成する事でサイトの方向性が固まり、地道な努力を惜しまず最低でも1日1ページのコンテンツを作成する事を目標とする事の積み重ねでサイトは成長していく。

7)タイムリーで季節感のあるサイトプロモーションを行う事が大事。実店舗にて商売をされている広告主にとっては当たり前かもしれませんが、多くの場合この考え方がオンラインの店舗のプロモーションに適用されていない場合があります。同じ商品でも、季節感を用いる事で、売り方のバリエーションが増え、異なる側面から顧客のアプローチが出来る良い機会となります。また、10カ条の一番目にあるテストの重要性を理解して、これらのプロモーションのバリエーションもテストの一つとして考えると良いでしょう。

8)顧客との対話を大事にする。これもまた実店舗にて商売をされている広告主には当たり前の事なのかもしれませんが、店舗に来店されたお客様にはそれぞれのニーズがあり、求めているサービスも異なり、売り手側はコミュニケーションを取りながら接客をする事になります。

残念ながら、オンラインの店舗にて見込み客に対してワンツーワンのコミュニケーションを取るのは難しい事ですが、ユーザーがサイトにたどりついた経緯を把握し、情報を利用する事で顧客に対してカスタマイズされたメッセージを送る事が可能となります。たとえば、広告テキストにてキーワードインサーションを活用したり、リマーケティング広告にて顧客の行動履歴を盛り込んだメッセージを表示する事でサイト訪問者の数を増やし、訪問した顧客の満足度を高める事が可能となります。

9)ツールを使った情報収集を行う。たとえばすっかり有名になったグーグルインサイトを使って、話題となっているキーワードを把握して、そのワードの出現がピークとなる時期をあらかじめ見越したキャンペーンを展開する事が可能となります。また同時に対象外となるべきキーワードの洗い出しも可能になるので、オンラインマーケターはぜひ活用するべきツールです。

10)最後は今話題となっているソーシャルメディアの活用となります。ソーシャルメディアの中にある情報はSEMキャンペーンにとっても有意義な情報がたくさんあります。ここではいきなり自社のサイトでソーシャルメディアと取りいれるのでは無く、まずは最初の一歩としてソーシャルなサイト上にて、上手な聞き手になる事をお勧めします。ソーシャルメディアにて日々行き来している情報は、グーグルアラートツイッターサーチやその他のツイッターアプリを使う事で簡単に入手する事ができるので、グーグルインサイト同様にブレイクしそうな情報をいち早くキャッチするのに有効な手段となります。

いかがでしたか?かなり長いリストになってしまって、一気に飲み込むのは大変かもしれませんが、一つ一つを着実に実行する事によって、SEMの基本知識を深める事ができると思うので、ぜひ自社のキャンペーンにもこれらの考え方を導入してみては如何でしょうか?

(by Kenta Umezu, Chief Operating Officer, Le Grand)



Share Button

Read more

2010.9.14

sessf2010entrancebanner

今年のSES San Franciscoにて元Kodak社のCMO Jeff Hayzlet氏のキーノート演説と並んで著者の印象に残った話題としてとり挙げておきたいのが、「Remarketing(リマーケティング)」(またはRetargeting(リターゲティング))と言う広告・マーケティング手法に関してのセッションでした。

広告業界ではリマーケティング自体はそれほど新しい考え方では無いのですが、少なくてとも私の知っている限りでは、SESにてセッションのタイトルとして取り上げられるのは、今回が初めての事だと思います。また、今年の4月に行われたad:tech San Francisco 2010のアジェンダを振り返ってみても、セッションタイトルの中にこれに該当するトピックは見当たらなかったので、まだまだオンライン業界ではなじみの薄いマーケティング手法なのかもしれません。

その証拠に私が参加したセッションの名前も「Introduction to Remarketing」と言う風に初心者向けのタイトル付けられていて、その内容もイントロダクション的なものでした。弊社でも以前にお客様の広告キャンペーンに対して、リターゲティング広告を提供させていただいた事がありますが、日本では「リタゲ広告」などと言う名称ですでに複数のアドネットワーク経由で広告を掲載する事が可能で、今年の4月にはGoogleのAdWords広告でも利用する事が出来る様になっています。

リマーケティング広告とは、簡単に言うと、検索や検索連動型広告、バナー広告から自社のサイトにアクセスをしたユーザーをオンラインで追跡して、再度同じユーザーをピンポイントでターゲットして広告を表示させるマーケティングの手法です。あるリサーチによると、サイト訪問者の90%が広告主側の意図した行動を取らずにサイトを離脱すると言う結果がでており、これらのユーザーに対して、自社のサイトに再度訪問をしてもらい、マーケターの望むアクションを起こしてもらうための有効な手段として、今注目されています。

アメリカではリマーケティング広告はRun of Network (RON)、コンテンツターゲット、行動ターゲティングなどと並んで、ディスプレイ広告のサブセットの一つとして認識されていて、その特性から、検索連動型広告との併用による効果も高いと言われています。実際にリマーティング広告の効果により、クリック率が300%増加したとか、広告の反応が400%増加した、ブランディング効果が出たなど、いろいろな良い効果が産まれている話を聞きます。技術的にはリマーケティング専用のタグを自社のサイトの各ページに埋め込み、訪問者に対してブラウザクッキーを付与してトラッキングを行うのですが、効果を生み出す秘密は緻密なターゲティング戦略と、それに合わせてカスタマイズした広告クリエィティブにある様です。サイトのどのページで離脱したのか、どの商品を閲覧したのか等を細かく分析して、サイト訪問者のそれぞれのマイクロ属性に対して、さらにピンポイントしたメッセージを提供します。

たとえば、ある旅行チケット販売サイトで格安飛行機のチケットを探していたユーザーに対しては、再訪問を促すために「旅行のチケットの手配はお済みですか?」と言う様なメッセージを表示しますが、同じサイトにて訪問者がハワイ旅行のページを見ていた履歴が残っていたとすると、今度はもっと具体的に「“ハワイ旅行”のチケット手配はお済みですか?」というような、一歩踏み込んだメッセージを表示させることも可能となり、アクセスしたユーザーの履歴を見ながら、提供する商品の内容を配信時に動的に変更させる広告の技術もすでに提供されています。

ただし、あまり度がすぎると良いアイディアがマイナスな影響を与えるのはどの世界でも同じで、リマーケティング広告が現在直面している大きな問題はその広告効果の大きさと、ピンポイント技術の精度の高さから発生するユーザーのプライバシーへの配慮の問題です。行きすぎた広告メッセージングは逆にユーザーを警戒させてしまい、クリックが減少する心配やブラウザクッキーを受け入れないユーザーが増えてしまう可能性もあります。

remarketing_session

すでにアメリカでは、業界が独自のガイドラインを作成して、関連団体のIABNAIがそれらをサイトで公開して、ユーザーに対して誤解を与えないように広告のプライバシーへの配慮の情報提供を行っています。さらに、個別にプライバシーに特化したコンテンツ“プライバシーマターズ”や、現在自分のPCの中にあるアドネットワークからのブラウザクッキーをリアルタイムでスキャンして、自分をトラッキングしているリマーケティング広告からオプトアウトをする事が可能となるツールも提供しています。また、日本でもインターネット広告推進協議会が今年6月に設けたガイドラインで、個人のネット上の行動記録を利用した「行動ターゲティング広告」のガイドラインが発表されていますが、まだまだ具体的なアクションは取られていない様にも見受けられるのが現状です。

上記のプライバシーの問題のほかにも、発生したクリックやコンバージョンのアトリビューションに対しての考え方にもまだ明確な線引きが無いのは確かですが、このブログの記事のタイトルでも書いたとおり、セッションでの発表内容が現実に起きているのであれば、リマーティング広告はこれまでに無い最強のコンバージョンツールとして、検索連動型広告を利用する広告主が活用していくべきマーケティング手法と考えます。

皆さんも今後の広告キャンペーンにて採用されてみてはいかがでしょうか?

(by Kenta Umezu, Chief Operating Officer, Le Grand)

{lang: ‘ja’}

Share Button

Read more