2011.7.25

東日本大震災から4ヶ月以上が経ちましたが、福島第一原発の事故は収束に向かうどころか、大気中に漏れ出した放射性物質に汚染された農畜産物が全国に流通してしまったことで、人々の健康への懸念は、今や被災地のみならず、日本全国に広まりつつあります。

福島第一原発

原発を管理・運営する東京電力では、一時、原発事故に対するお詫びのテレビCMなども放映していたようですが、ネットで原発事故の情報を探し求める人たちに対する姿勢を見る限り、お世辞にも、積極的な情報の開示に努めているとは言い難い状況です。

下図は、Googleで「原発事故」「福島第一原発」というキーワードが検索された回数の推移を示したものです。3月の震災後に急増し、その後は徐々に落ち着きつつあるものの、震災前の水準に比べると、いまだに多くの人が、こうしたキーワードで検索し、関連情報の収集を続けていることが分かります。

しかし、実際に検索エンジンで「原発事故」と検索してみても、下図の通り、東京電力から発信された情報を見つけることはできません。(2011年7月25日14時現在)

KW「原発事故」に対するヤフーにおける検索結果

昨年のad:tech tokyoのセッションでもご紹介しましたが、実は、米国トヨタも、大規模なリコール問題にあたり似たような失敗を犯しています。

同社は、ソーシャルメディアを使って、消費者の信頼回復に努めたことで知られていますが、残念なことに、検索キャンペーンだけは、コミュニケーションプランの「蚊帳の外」におかれたため、リコール問題の最中、人々が「toyota」と検索しても、販売店でのセール情報などにリンクする広告を出し続ける結果となりました。

これとは対照的に、メキシコ湾で原油流出事故を起こしたBP社は、事故発生後、リスティング広告の予算を大幅に積み増し、例えば「原油 流出」といった検索に対して、自社の事故情報提供サイトに誘導する広告を出稿し、積極的な情報の開示・提供に努めました。

(ad:tech tokyoで、米国から参加したパネリスト ケビン・ライアン氏が使用したスライドより一部抜粋)

東電の原発事故への対応を見る限り、こうした過去の教訓が全く活かされていないことは非常に残念ではありますが、今後、日本の大手企業や広告代理店あるいはPR会社の担当者が、いま一度、検索に対する正しい理解を深めるきっかけとなることを願ってやみません。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)


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