ウェブ解析などに携わっておられる方は既にご存じかと思いますが、8/12より、グーグルアナリティクスの「セッション(=訪問)」に関する定義が変わりました。
詳細はこちら にある通りですが、簡単に言うと、サイトへの流入後に、違う検索キーワードや別の検索エンジン、あるいは、異なる広告や参照元を経由して、再びサイトにアクセスした場合には、当初のアクセスしてから30分を経過していなくても、新たなセッションに切り替わるようになったという点です。なお、今回の変更に伴い、ブラウザを閉じることは、セッションには影響しなくなります。
この変更について、アクセス解析分野における米国での第一人者Avinash Kaushik氏が、非常に分かりやすく解説した動画を公開していますので、そちらのサイトへのリンク とともに、エッセンスをかいつまんでご紹介したいと思います。
1. 他のメトリクスへの影響について
セッション数のカウント方法が変わったことで、他のメトリクスにも影響が生じます。この動画では、以下のような遷移が29分間のうちに行われたと想定して解説をしていますが、
グーグル検索 → Bing検索 → Eメール → (お母さんからの電話) → コンバージョン
従来は、これを1つのセッション(=訪問)とカウントしているので、例えば、セッションあたりのページビュー数を計算する場合も、この遷移全体の中で発生したページビュー数の合計がセッションあたりのページビュー数として計算されます。一方、8/12以降、これは3 つのセッションとして認識されますので、当然、セッションあたりのページビュー数も、それぞれのセッションごとに計算されることになります。
また、直帰率の計算にも影響を与えます。例えば、グーグル検索経由で流入したユーザーが、他のページには全く遷移せずに、Bing検索から再度来訪した場合、新しい定義においては、グーグル検索経由での最初のセッションは「直帰」とみなされます。
同様に、新規訪問のカウントも変わってきます。もし、これが新規ユーザーからの流入であった場合、従来の定義では、新規ユーザーからのセッションが1件あったと記録されます。これに対 し、8/12以降は、グーグル検索からの最初のセッションのみが新規となり、残り2セッションは、リピートユーザーからの訪問と認識されます。
一方、ユニークユーザー数やページビュー数のカウント方法は、今回の変更によっても影響を受けません。
2. 変更が及ぼす分析データへの影響について
Googleからも発表されている通り、今回の変更は、過去のデータには影響を与えません。
従って、セッション(=訪問)数や、上述したセッションあたりのPV数・新規訪問の割合などを、時系列で比較・検討する場合、8/12の前後では、同じメトリクスでも、厳密には、異なる中身の数値を比較しているということになってしまいます。
Googleでは、この変更による全データへの影響は1%以内になるだろう、としていますが、Kaushik氏の動画では、Googleアナリティクスのカスタムレポートを使って、この変更のインパクトを推計する方法が紹介されています。
上述の遷移例において、旧来の定義では、グーグル検索からの流入、Bing検索からの流入に対して、それぞれ「キーワード」は記録されるものの、セッション としては、前述の通り、全体として1件としかカウントされないため、Bing検索からの流入については、流入があったにもかかわらずセッション(=訪問) 数はゼロと記録されます。
そこで、これを逆手に取り、変更前の期間(例えば2011年7月など)について、当該期間のユニークユーザー数に対して、流入キーワードのセッション=ゼロとなっているユーザー数の割合を出すようなカスタムレポートを作成し、セッション定義の変更が、どの程度の影響を持つのかを検証しようというものです。なお、ここで使われているカスタムレポートは、こちらからダウンロード することもできます。
なお、今回のセッションの定義変更は、Googleアナリティクスの新機能「マルチチャネル 」導入の前工程として行われものです。ご存じの方も多いと思いますが、マルチチャネル機能の導入により、コンバージョン直前の流入元だけでなく、そのプロセスに貢献した検索エンジンや広告媒体なども確認することができるようになります。この「マルチチャネル」機能の活用方法や、「アトリビューション」「間接効果」といった用語の意味や考え方についても、今後、本ブログにて、順次、取り上げていきたいと思います。
(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)