2011.12.15

弊社ウェブサイトでもお知らせをさせて頂いておりましたが、12月7日(水)に株式会社ルグラン、株式会社アスキー・メディアワークス共催による第3回「Digital Marketing College(以下DMC)」が開催されました。

今回は、「ビッグデータの活用方法」をテーマに、先般開催されたad:tech tokyo 2011の本セッションでも、パネリストとしてご登壇を頂いた、トランスコスモス株式会社 エグゼクティブリサーチャーであり、また、『次世代マーケティングリサーチ』の著者でもある萩原雅之氏をゲスト講師としてお迎えし、新たなリサーチ手法やビッグデータの活用方法についてお話を頂きました。

以下、第3回DMCセミナーの内容についてご紹介いたします。

■「次世代マーケティングリサーチ ~ソーシャルメディア時代に於ける消費者理解とは?~」

トランスコスモス株式会社 理事 エグゼクティブリサーチャー 萩原 雅之氏

萩原さんからは、ソーシャルメディアの台頭により、マーケティングリサーチの手法や考え方にどのような変化が起こりつつあるのかについてお話を頂きました。

最初に紹介されたのが、海外と国内の広告費とマーケティングリサーチ費に関する数字です。国内では、消費者に伝えるコスト(=広告費)は5.8兆円使われているのに対し、消費者を理解するためのコスト(=マーケティングリサーチ費)は1,700億円と広告費のわずか3%に留まっています。これは、海外と比較しても非常に低い水準であり、ソーシャルメディアを活用し、顧客を理解しようなどといわれてはいるものの、我が国では、まだまだ「伝えること」に重点が置かれていることがわかります。

消費者を理解する方法には様々な形がありますが、これまで、その費用のほとんどがパネル調査や質問紙調査などに使われてきました。しかしながら、ソーシャルメディアの台頭で、リサーチャーの選択肢が増え、今日では、リサーチ会社も新たな顧客理解の方法を積極的に取り入れる傾向にあります。

【新たな顧客理解の方法を取り入れる時代へ】

新しい顧客理解の方法が注目される背景には、大きく分けて3つの大きなムーブメントが挙げられます。

第一が、リサーチの「パートナー」として消費者が参加出来る仕組みが整ったことです。フェイスブックページや、リサーチに特化したMROCと呼ばれるオンラインコミュニティなどがそれにあたります。

第二に、ツイートやクチコミ・検索データなど、消費者の行動や会話の履歴がデータとして残されていること。例えば、震災前後で日本人の価値観がどう変わったのかを調べたい場合、従来のやり方では、「震災前に何を思っていたか」を、震災後にアンケートなどを行って尋ねるしかありませんでした。しかし、今は、蓄積された過去のデータを遡ることで、震災前に人々がどんな行動や会話をしていたかを知ることができます。

そして、最後に、データを収集・分析するためのテクノロジーの進化も、新しい顧客理解の技法を可能にしている点も忘れてはならないでしょう。

こうした流れの中で、今後、マーケティングリサーチの焦点は、データの「収集」から「利用」に移っていくことは必至であり、まさにビッグデータとどう向き合うかが問われる時代へと移行しています。

例えば、これまでは、まずは仮説を立て、それを証明するためのデータを収集するために調査を行うというやり方でしたが、今後は、そこにあるデータから、いきなり仮説を立てた上で、検証作業をスタートするといった考え方も求められるようになります。

また、リサーチャーには、データを分析するだけでなく、そこから経営判断やアクションにつながる情報を提供することも求められるようになりますが、そのためには、分かりやすくデータを表現する技術も重要になります。

リサーチャーもマーケターも、今後は、アナリシス(分けて考える=理解する)とシンセシス(つなげて考える=創造する)という両方の発想で、新しいマーケティングリサーチの役割を考えていくことが必要であるとして、締めくくられました。

■「ビッグデータと向き合いマーケティングROIを最大化 ~その仕組みと考え方とは?~」 泉 浩人

続いて、泉からは「ビッグデータと向き合いマーケティングROIを最大化」というテーマでお話させて頂きました。

【ターゲットにあったメディアや手法を】

ビジネスを持続的に成長させていくためには、顕在化している需要を検索で刈り取るだけでなく、需要そのものを作り出す施策も併せて実施していくことが必要です。

しかし、ただ広告を打ってもスルーされてしまうことが多い今日、人々の心をつかみ、会話の中心になるようなメッセージを生み出すためには、人々の行動や会話のログデータを分析することで、人々の琴線に触れるツボはどこにあるのか、また、ターゲットになりそうな人々がどこにいるのかを理解することが不可欠です。

そこで、泉のセッションでは、ルグランが、そうした課題に取り組むにあたり、例えば、クチコミや検索データに表れる人々の気持ちや行動の変化をどのように読み解いていくのかについて、具体的な事例を交えながらお話をさせて頂きました。

セッションの詳しい内容については、次回、当ブログにてご紹介いたします。

■対談:「次世代マーケティングを担うのは誰だ?」 萩原 雅之氏×泉 浩人

最後の萩原さんと泉による対談では、次世代のデジタルマーケティング業界に求められる人材について、ディスカッションが行われました。

【次世代マーケティングを担うのは誰だ?】

萩原さん曰く、一昔前に、金融業界で起こった金融・株式のデータを解析して、将来の予測や的確な投資判断に利用しようという「金融エンジニアリング」的な動きが、今後、マーケティング業界でも起こっていくのではないか。

例えば、これからはアクセス解析ログやソーシャルデータを整理・加工するために、データベース構築の知識や経験を持つ技術者の需要が高くなるとともに、彼らには、ビッグデータを加工して、マーケターが簡単にデシジョン(決定)できる仕組みを作りあげるといった、マーケティング的なセンスも求められるだろう、とお話されていました。

それに対し、泉からは、すでにイギリスでは4-5年前から、金融業界の人材がデジタルマーケティング業界へ流入するといった動きが起きており、イギリスのネット広告費のシェアがテレビを上回る水準まで拡大した背景には、こうした変化もあったことが紹介されました。

最後に、マーケットリーサーチャーの立場から、萩原さんが、今後ビッグデータを活用するにはデータをアニメや動画等で直観的に分り易く見せる「動画的センス」が必須になるのではとして、第3回DMCを終了しました。

萩原さんから分かりやすいデータ表現例として紹介された東日本大震災前後の地震発生状況マップ(YouTube動画)

本セミナーには多数の方々にご参加を頂き、誠にありがとうございました。また、貴重なご講演をしてくださった萩原雅之さん、セミナーの開催にあたり、会場の提供や企画・運営にご協力を頂いたアスキー・メディアワークス様にも、改めて御礼を申し上げます。

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