2012.4.17

米国ではオンライン・リサーチ会社がインターネットユーザーの行動履歴等に関する膨大なデータを分析し、情報発信をするブログが多数存在しており、その内容はテレビや新聞でも紹介されるなど、マーケターの情報源として活用されています。日本に於いても、ソーシャルメディアの台頭により、ビッグデータに対する興味レベルが高まる一方、爆発的に増加するデータを分析し、マーケティング施策に繋げるという事例は、まだ、少ないのが現状です。そこで、ルグランでは、ビッグデータを活用するための情報ブログ「i love data.jp 」を開設。膨大なデータを分析し、マーケティング活動に繋げていくための考え方について、ブログを通じて情報発信をしていきたいと思います。

ブログ開設を記念して、4月23日(月)に株式会社エム・データ 取締役 小口日出彦氏、株式会社ホットリンク 代表取締役社長 内山幸樹氏をお迎えし、「i love data – データを愛することから始めよう!」をテーマにセミナーを開催 することになりました。セミナー開催に先立ち、弊社代表取締役泉を含む講演者3名が株式会社エム・データ会議室に集結。「データ」に対する熱い思いと、当日の各自の講演内容について、意見交換を行いました。(セミナーへの参加お申込みはこちら から。)

100分の1をどう考えるかが重要

泉浩人(以下、泉):今日はよろしくお願いします。エム・データさんならテレビ、ホットリンクさんはクチコミの膨大なデータをお持ちで、そのデータをどう分析して、どう企業のマーケティング活動に活かせるのかという提案の一つの形として「i love data.jp」というブログを開設することになりました。一方で、そこで何が出来るのかを、4/23のセミナーでわかりやすく説明するために、なるべく身近なテーマが良いのではと考えていたところに、小口さんが選挙予測もされているというお話を聞き、私のセッションテーマは「AKBの総選挙予測しかないでしょう」、ということになりまして。 それで、今、必死にAKBのことを勉強しています。(笑)

小口日出彦氏(以下、小口):私は、情報分析と表現のコンサルティングをしているのですが、元々日経BP社で雑誌の開発をやってきました。雑誌というのは、誰に向かって何を伝えるかを100%確定することが、成功の鍵なんですね。どんな情報が当たってどんな切り口が良いかというのは、経験と勘によるところが大きいのですが、経験と勘はバカに出来なくて、あまりはずれません。でも、本当に当たっているかどうかというと定量的な裏付けが必要です。例えば、政治情報分析の世界でいうと小沢一郎さんがそろそろ眠りから目覚めそうだという雰囲気を多くの人が感じている。それは勘なのだけれど、内山さんのところでクチコミを拾って、「小沢一郎」というキーワードが右肩上がりに伸びているとなると、「こういう証拠がありますよ」と一つ提示出来る訳です。そういう証拠は出せなかったのが、ホットリンクさんのようにネットの大量データをまとめて掴まえられたり、エム・データのようにテレビのデータを掴まえられたりするツールが出来てきて、勘という定性の知を定量的にデータで裏付けられるようになったのが、大きく変わってきているところだと思いますね。
受け手の話をすると、まだ経験と勘だけでやっている人の方がマジョリティで、中には、経験と勘を裏付ける定量データがあることに気づいている人もいるんですが、データを見た結果、やっぱり経験と勘が当たっているのでデータはいらないってことになる場合もある。でも、それはダメなんですね。100回に1回くらいですけれど、直感を裏切る結果が出ることがあるんです。100分の一をどう考えるかですが、囲碁・将棋で言うと、100回に1回くらい、粘っていると相手が間違ってくれることがあって、その100分の一を何年も積み重ねればプロの世界では大きな違いになってくるんです。
情報を扱う仕事でも、100回に1回の間違いが積み重なっていくことになるのをどう考えるか
ですね。

泉:我々が行っているリスティング広告に於いても、100回に1回の間違いは重要な課題になっています。例えば、AとBがあって、お客様はAが良いと言った時に、きっとそうなんでしょうけれど、念のためABテストをします。そして、テストの結果もAが良かったとする。このような場合は、勘が裏付けられたことになるんですが、一方で、テストをしなければ、いつまでも「Bの方が良いかもしれない」という可能性が残ってしまうんですよね。

内山幸樹氏(以下、内山):それで言うと、以前ある出版社の方に、データを基に将来どういうジャンルの本が当たるか知りたいと相談を受けて、クチコミでランキングをした結果を持っていったのですが、編集者の方に「こんなのは自分の勘と違う」と怒られました。確かに、編集者の勘の方が合っているのかもしれませんが、データはデータで出ているので、勘とデータの間を取っていける人が必要なのかな、と思いますね。

ビッグデータはスピードメーター

小口:ヒット現象の予測をずっとしていますが、選挙なんかは、あるときポッと出てくる訳じゃないから分析しやすいですね。例えば、知名度はあるけれど情報伝播力が弱いと当選しないけど、知名度がないのに非常に情報伝播力が強くて当選していくとか。でも、データがないのにそこから読めと言われても無理です。編集者っていうのは、データがあるところを読むんじゃなくて、ゼロから当てたいと思うものだから、その方もそうだったんでしょうね。AKBもそうですけど、AKBの企画を作った次の日にデータで予測をしろと言っても無理です。でも、データが集まれば見えてくる。世の中の大抵のヒット現象というのは前兆があるもので、データの蓄積で成り立っているものだから、それを無視するのはダメだよね。

内山:ビッグデータは、何かすごいことをやってくれるものではなくて、車に喩えると、スピードメーターだと思うんですよね。スピードメーターがあるからといって運転がうまくなる訳ではないです。でも、スピードメーターがあることで、安全に運転出来るし、ゴールにもより時間通りに到達できます。テクノロジーの開発はメーター、それを使いこなすのはドライバー。その二つがセットでないといけないわけです。

小口:内山さんの喩えはとても良くて、運転がうまくなりたい、速く走れるようになりたい、タイトなコーナーをうまく回りたいという意思が必要で、だからうまくなる。データや情報も同じで、そこから何を読み取りたいかという「意思」がなければ何も見えてこない。

内山:「意思」があった時に、テクノロジーがついてくるかという話もあります。あるマスクのメーカーさんが、需要予測をして風邪やインフルエンザの流行る時にマスクの在庫がないという事態を避けたいと言ってこられました。患者さんが病院に行って、その情報が疾病センターに集まってという流れだと、流行の発表が一週間遅れになるですが、Twitterだと流行った瞬間にわかりますと持っていったのですが、「使えません」と言われました。なぜなら、マスクの製造は一週間では出来なくて、3ヶ月かかるわけです。ビジネスモデルにそのデータが合うかどうかということもあるわけですね。

再現性のあるデータのパターンの発見

小口:映画の予測がまさにそれで、あるセグメントではこの映画が当たるか100%当たる数理モデルがあるのですが、残念ながらそれがわかるのが封切り2週間前で、それからではどうしようもない。

内山:新商品なんかもね、予測が出来た時点ではもう事業投資が終わっていますからね。

泉:商品では予測は難しいですが、いろいろな企業さんをお手伝いしていると、繰り返しやるイベントって結構あるんですよね。例えば、バレンタインや母の日。オーバーチュア時代の話ですが、その頃は、オフラインでお店を持っている人がネットショップをやることが多くて、そうすると、バレンタインの一週間前とか3日前で広告を止めるというんですね。経験で言うと販売のピークは3日くらい前だから、と。でも、検索を見ていくと、ネットでは当日にピークが来たりする。ネットで買う人は出遅れているんですよね(笑)

内山:自分もそうだ(笑)

泉:そういう人がいるので、バレンタインを過ぎてもすぐには検索は減らなくて、一週間くらいかけて徐々に減っていくんですよ。だから、「遅れてごめんねキャンペーン」をやってくださいっていつも言っているのですが、やってくれるとちゃんと売れるんです。パターンってあるので、今年起きたことを振り返っておくと、翌年使えるかもしれないんですよね。

小口:つまり、再現性のあるデータのパターンを発見するということですね。昔の人の言う通り、2度あることは3度あるんですよね(笑)それでいくと、選挙分析で発見されたことがあって、候補者のテレビ露出とブログ・Twitterの露出を一つの参照値として、それが描く波動にあてはまる方程式を作ったのですが、そこに入力する項目があって、その項目それぞれに候補者独特のパラメータが並んでいくんです。そのパラメータのうちのあるものを抽出してまとめてみるとパラメータEというものが出てきて、その強弱が殆ど選挙結果と合致するということが見えてきました。普遍性のあるパターンが膨大なデータから抽出できるということなんですが、そのパラメータEは事前に計測できるので、事前に誰が当選するか予測可能になるんですよ。

内山おお〜

内山:それ、大阪維新の会に売り込みました?

小口:即、売り込みというわけにはなかなかいかなくて・・・。選挙は経験と勘を超える“科学”をなかなか信じてもらえない世界ですからね

泉:もったいない。データで何でも解決できる訳ではありませんが、データは必要ないと思われる分野でも有効活用できる場面もあるので、そういったことを多くの方に知って頂きたいですね。
ここでこんなに盛り上がってしまうと当日話すネタがなくなっちゃうな〜(笑)
もうそろそろお時間ですが、当日どんなことを話されるか、イメージは固まったでしょうか?

内山:そう言えば、AKBの話をしてないじゃないですか?

泉:おじさん3人で意見交換をするよりは、エム・データさんとホットリンクさんのデータを「意思」を持って分析した方が良さそうですね(笑)
当日、小口さんと内山さんがどのようなテーマでお話されるのか、今から楽しみです。

Share Button

Back to Blog Top