2013.2.01

先日、1月30日(水)、マーケティング・リサーチャーのコミュニティJMRX が主催するセミナー「リサーチで迫る衆院総選挙」に弊社代表 泉が登壇しました。今回のセミナーでは、昨年12月に行われた「衆院総選挙」対して、従来の世論調査や出口調査とは異なる切り口で実施されたリサーチ・分析手法を紹介し新たな選挙へのアプローチについて考える、という趣旨のもと弊社代表泉の他、静岡大学情報学部 准教授 佐藤 哲也氏、株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー の牛堂 雅文氏がご登壇され、それぞれの視点から「衆院総選挙」を振り返りました。

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■「ソーシャルメディア上のデータで振り返る衆院選」
株式会社ルグラン 代表取締役 共同CEO 泉浩人

泉からは、ブログやTwitter等ソーシャルメディア上のクチコミデータから主要政党や党首の評判を指標化した「永田町インデックス」 を用いた衆院総選挙分析について説明しました。
大臣の発言や公約案発表の出来事によって、各政党に対するリアルタイムのポジティブ・ネガティブな反応を捉えた実例を紹介。この他、興味深いデータとして、衆院選に関する口コミデータに含まれるキーワードをみていくことで民衆の関心の変動も観察できるが、換言すれば、口コミデータは出来事によって都度変動するという点からも、衆院選の”争点”である民衆の関心はコントロールされる可能性もある、という新たな知見についても述べました。

衆院総選挙に関するデータ分析や事例をご紹介した後、一方で「“予測データ自体”に大きな価値があるというわけではなく、次のアクションに繋がるためのデータを提供すること、すなわちデータの使い方、“価値を見出すこと”という視点が重要である」という言葉で締めくくりました。

■「無投票理由と投票率改善の可能性」
株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシー 企画部ディレクター 牛堂 雅文氏

続いて牛堂氏からは、無投票者へのリサーチ結果についてご紹介頂きました。昨年の衆院選の投票率は59%と前回から大きく低下したことも今回の調査目的にありますが、マーケティングの視点で考えると、いわば「ポテンシャル層」ともいえる無投票者層にある背景についてアプローチされています。

「投票する時間がなかった」「どの政党が与党になっても同じ」といった無投票者層にある意見も、年齢や住所、経済的余裕度などでセグメントするとそれぞれに特徴がみられ興味深い内容でした。

例えば、「何が改善されれば投票に行くか」という質問に対して、経済的に余裕がある層は「政党の掲げる政策内容の改善」、余裕のない層では「自分の身の回りの生活が改善されるかどうか」という回答が多く見られるなど、各層の生活状況に起因した特有の背景が潜んでいることが分かります。

「無投票者層」と一括りに捉えず、各セグメントにある特有の背景を理解することで投票率の改善施策につなげられるという気づきのある講演でした。

■「選挙予測の新しい潮流~伝統的モデルから予測市場へ~」
静岡大学情報学部 准教授 佐藤哲也氏

選挙など含め予測市場について研究されている佐藤氏は、その研究過程で衆院総選挙のボートマッチマニフェスト検索システム など様々なウェブコンテンツも開発されています。
(実は佐藤氏は昨年末の「ルグラン望年会 」に初めてご参加頂き、今回のセミナーにご登壇いただくきっかけにもなりました。)

例えばボートマッチの開発においては、評価基準が重要であり質問の中立性を保つために特定の政党が得意とする争点に関する質問に偏らないよう、各政党の掲げるマニフェスト内容をテキストマイニング、カテゴライズするといった工夫をされています。

佐藤氏が取り組まれている予測市場という考え方は、「未来は参加者それぞれの主観的な予測の集積である」というものであり、過去の選挙実績から基づく、すなわち「未来は過去の延長先にある」という視点で構築する伝統的な予測モデルとは全く異なるものです。

今回のセミナーでは選挙予測の新しい潮流として予測市場についてご説明頂きましたが、選挙以外の事例として、ある企業ではプロジェクトの納期の実現性について、社員による予測市場を導入し社内世論で実現可能性を判断するという事例は、予測市場の可能性を示す一例として興味深く感じました。

セミナー終了後の懇親会では、リサーチャーや記者など様々なご職業の方々がリサーチやデータに関して熱く語り合っておられ、セミナーとともに大変盛況なものとなりました。

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