2013.3.21

今年のSESロンドンでは、昨年に続き、SoLoMo が大きなテーマの一つとなっていました。

How mobile and tables are shifting user behavior?(スマホやタブレットが消費者行動をどう変えるのか?)というセッションに登壇したBrand Emotivity社のMark Brill氏は、いま、世界中で、アンドロイド端末は毎秒8.1台、iOS端末は毎秒4.6台販売され、赤ちゃんが生まれる(毎秒4.2人)よりも早いペースでモバイル端末が普及しているといったデータを紹介した上で、今や、ファッションモデルがランウェイから、スマホでTweetをするなど、モバイル端末の普及が人びとの生活や行動を変え始めている、と強調しました。

tweet from runway

更に、モバイル検索を利用する人のうち、約50%はセールやディスカウント情報を探すために利用しており、また、モバイル検索の約半数には、リアルの店舗や飲食店など「地域情報」を探そうという意図が見られ、フェイスブック利用者も半数以上がモバイル環境から利用しているといったデータを紹介し、モバイル端末がどのように使われているかを正しく理解することで、新たなマーケティングの可能性が拡がると話しました。

一方、ブランディング目的で開発されたフェイスブックアプリのほとんどが活発には利用されていないというデータもあり、ただ単に多くの人が使っているからという安易な考えで、モバイルやフェイスブックに「進出」しても成功は難しいと、単なるブームに乗っただけのSoLoMo戦略には、しっかりとクギを刺して話を締めくくりました。

続いて登壇したNet Media Planet社のSri Sharma氏の講演は、モバイル環境における消費者行動を考えるには「目的」「デバイス」「時間」「場所」という4つの視点が重要になるという話で始まり、こうした新たな消費者行動に対応しようと考え出された広告プラットフォームとして、Google・AdWordsの「エンハンストキャンペーン 」の活用事例を紹介しました。

今回取り上げられたのは、米国で3番目に大きい宅配ピザチェーンの”Papa John’s Pizza “の事例。

papa john's pizza

同社では、ピザハット・ドミノピザなどの上位勢に対抗するには、利益率を犠牲にしても、割引で対抗するしかないと考えてきました。

しかし、ある時「ピザを頼むのは割引きがあるからじゃなくて、お腹が空いたからではないのか?」という原点に立ち返り、「お腹が空いたタイミングを見計らって人びとにコンタクトすることができれば、割引をしなくとも、集客ができるのではないか?」という仮説を検証すべく、あるテストを実施してみることにしました。

そのテストは、

・みんながお腹の空くランチ時間帯を狙って、できるだけ食欲をそそるような広告文を掲載する。
・ディスカウントは提示しない。
・競合他社がディスカウント攻勢をかけてくる火曜日に実施する。

という形で行われ、結果的には売上を大きく伸ばすことに成功すると共に、ディスカウントを提示しなかったことで、利益率についても大きく改善させることができました。

さらにSharma氏は、「目的」「デバイス」「時間」「場所」という4つの視点で消費者行動を考えることは、CRM戦略においても重要であるとして、ある化粧品販売会社の事例も紹介しました。

この会社では、モバイル検索が活発に行われる時間帯を調査したところ、それはほぼ同社のコールセンターの稼働時間と一致していることが分かったことから、モバイルリスティング広告については、サイトに誘導するのではなく、Click-to-Call機能を使い、直接コールセンターに電話をかけさせるように誘導することで、コンバージョン率が2.2倍も改善したそうです。

このように、時間や場所によって利用する端末を変えるという今日の消費者行動に対応するという点で、Google・AdWordsの「エンハンストキャンペーン」を使ったテストはぜひ実施してみるべきであるとする一方で、「スマホでモノを買うのは多くの消費者にとって新しい体験であり、成果を高めるためには、消費者のそうした不安を払拭するような工夫や仕組みを考えることも忘れてはならない。」という点も強調していました。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)

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