2008.7.24

前回、オーバーチュアの最低入札価格が、「可変」方式に変更されるため、今後はアドワーズも含めて、クリック率に代表される広告の「品質」が低いと、最低入札価格を高く設定されてしまう可能性がある、というお話をしました。

そこで今回は、広告の「品質」というのは誰のためにあるのかという問題について、少し考えてみたいと思います。

結論を先に言ってしまうと、基本的には、Yahoo!やGoogleなど、広告が表示される検索サイトの利益を守るためにあるものと言うことができます。

ご存知の通り、検索連動型広告は、クリックをされない限り費用(→検索サイトから見れば「収入」)は発生しません。もし、検索結果と一緒に表示された広告がクリックされなければ、また次の検索が行われるまで、検索サイトが収入を上げる機会は訪れません。

検索サイト上で日々行われる検索の数は無限ではありませんので、検索という限られた収入の機会を、できるだけ無駄にしないようにするためには、クリックされる可能性の高い広告を、できるだけ目立つところ(=上位)に表示させようとするのは、当然のことと言えます。

つまり、「品質」の低い広告に対して、高い最低入札価格が適用されるのは、検索サイトが(自分の利益を守るために)広告主に対して課す「ペナルティ」である、という見方もできます。

一方、広告主にとって最も気になるのは、検索サイトから送られてくるトラフィック(=クリック)の「品質」です。自社の商品やサービスに興味・関心を持つ検索ユーザーに広告がクリックされれば、サイトで購入や申込につながる可能性も高くなります。それゆえ、広告文には、商品・サービスの特徴を書いて、検索ユーザーにアピールしたり、反対に、ターゲットではないユーザーにはクリックされないようにするといった工夫も大切になる訳です。

でも、広告主が全く意図しない形・場所に広告が表示され、クリックされているとしたらどうでしょう?検索サイトは収入を得ることができますが、広告主にとっては、広告費が増えるばかりで、売上にはつながらず、費用対効果を悪化させてしまうことになります。このような「品質」の低いトラフィックを送るサイトには広告を配信しないという形で、広告主も「ペナルティ」を与えることができなければ、検索連動型広告は、検索サイトにばかり有利な、極めて不公平な仕組みとなってしまいます。

こうした問題に対応するため、例えばグーグルでは、コンテンツ連動型広告について、広告主が良質なトラフィックを生むサイトだけを選んで、広告を配信できるようにしたり、グーグル自身が、広告収入だけを目的につくられた「Made for AdSense」と呼ばれるサイトを監視し、場合によっては、広告の配信を停止するといった措置を講ずることで、広告主の利益を守る努力が行われています。

一方、オーバーチュアも、米国(Yahoo! Search Marketing)では、最低入札を「可変」方式に変更するのに先立ち、昨年「ドメインブロック」という機能を追加し、広告主が、広告を配信したくないサイトを指定できる仕組みを提供しています。しかしながら、日本においては、残念ながら、今のところ、広告主が配信先をコントロールする手段はない状態で、最低入札価格の変更がスタートすることになってしまいました。

こうなると、広告配信先の選定にあたっては、オーバーチュアが、しっかりとした「品質」管理を行ってくれていることを期待するしかない訳ですが、ここには不安材料も見え隠れしています。

この続きは、また次回。


Technoraty Tags:


Share Button

Read more

2008.7.03

6/30に米国のJupiter Research社が発表した予測によると、サブプライム問題などによる景気後退にもかかわらず、米国のネット広告市場は、今年も前年比で20%と、引続き高い成長が見込まれるそうです。

Campus

検索連動型広告の市場規模は、2007年の91億ドル(約1兆円)から、2013年には209億ドル(約2兆3,000億円)に到達すると見られており、検索は、今後もネットにおける最大の「広告媒体」として、成長の牽引役になると見られています。

もっとも、テレビや新聞などオフラインも含めた米国の広告市場は全体で約30兆円(日本は約7兆円)ですから、検索連動型広告の市場規模が2兆円を超えても、それ自体は、それほど驚くべき数字ではないでしょう。

むしろ気になるのは、この2兆円を誰がどうやって「マネタイズ」するか、という点です。

先日、マイクロソフトによる買収提案を拒絶した米ヤフーは、グーグルと提携してアドワーズ広告の配信を受けると発表しました。「提携」というと聞こえは良いですが、これは、検索連動型広告のパイオニアであるオーバーチュアを傘下に持ち、本来は広告の「配信元」であるはずのヤフーが、配信を受ける「ネットワーク」の1社に成り下がってでも、糊口をしのがざるを得ないほど苦しい状況にあることを示している、と見るべきでしょう。

ちなみに、検索連動型広告の売上高というのは、簡単にいうと、

「検索のトラフィック数」x「1検索あたりの平均広告収入」

という算式で計算されます。(「1検索あたりの平均広告収入」は、平均クリック単価やクリック率などによって決まります。)

既に米国の検索市場では、年々グーグルによる寡占状態が進行しつつあり、グーグルの成長が、米国における「検索のトラフィック数」全体の伸びにも大きな影響を与えるようになっています。そこに、今回の「提携」で、米国第2の検索エンジンであるヤフーの「1検索あたりの平均広告収入」についても、グーグルが、今後、いかに多くの広告主を獲得し、1検索あたりの広告収入を改善できるかに大きく依存することになります。

ちなみにグーグルの2008年第1四半期の売上高は51億ドル(約5,600億円)で、そのうち米国からの売上は49%とされています。これを単純に4倍すると、今年のグーグルの米国での売上は約1兆円になる計算です。米国の検索連動型広告市場が、予測通り、本当に2兆円市場に到達できるかどうかは、実は、ほぼ唯一の「頼みの綱」になりつつある、グーグルの成長いかんにかかっているといっても過言ではないでしょう。


Technoraty Tags:


Share Button

Read more