2008.10.30

SERP(検索結果)ページに検索結果以外に何の情報を表示するかは、各検索ポータルが頭を悩ますところだと思います。

もちろん一番大事なのはウエブサイトの検索結果ですが、各サーチエンジンは自社の検索技術の精度を競い合うかの様にキーワードとウエブサイトのマッチング結果を表示します。各エンジンの技術者としては、ここが研究成果の見せ所とばかりに、高度なアルゴリズムを駆使して検索結果を表示しているのがよくわかります。

検索結果の次に何を提供するか?これはポータルによって違います。皆さんの関心の高い、GoogleとYahoo! Japanを見るとわかると思うのですが、この二つのトップクラスの検索技術を提供する会社は、全く異なる方向性を示していると言っても良いでしょう。違いを見て行きましょう。

例えば、それぞれのポータルにて、『1000円を米ドルに』と検索したとします。この場合、検索ユーザーの意図としては手っ取り早く、為替レートを調べたいので検索をしてみたと言うケースが考えられます。

Googleで『1000円を米ドルに』と検索

googleserp

Yahoo Japanで『1000円を米ドルに』と検索

yahooserp

Google が検索結果の一番最初に最近の為替レートを使って換算結果:『1000円 = 10.16 米ドル』を表示して、その下のGoogleの検索アルゴリズムを使った自然検索の結果を表示しているのに対して、Yahoo! Japanの場合は、一番最初にスポンサードサーチの一位表示の資産運用関連の広告(10月29日現在)とYahoo! Japanの検索エンジンアルゴリズムによる検索結果が表示されます。

Yahoo! Japanにも自社のコンテンツから為替レートを使って、換算結果を出す技術があるはずなのですが、同様の情報は提供しません、これはそれぞれの検索ポータルのポリシーなのでしょう、真似をしたくないだけかもしれません。しかし、ここで一番興味深いのは、両社の広告の表示件数の違いです。『ドル』や『円』などのキーワードに部分一致でマッチしたスポンサードサーチを8位まで表示したYahoo! Japanに対して、Googleはスポンサードサーチ広告の表示はゼロでした。

この結果の違いには色々な要因があると思います。また、キーワードによって結果も異なるので、すべての結果にあてはまる回答は無いと思いますが、それぞれの検索ポータルが持つ広告とコンテンツに対する考え方の違いというのが一番わかりやすい解釈だと思います。

Google の検索結果はUniversal Searchと呼ばれ、昨年あたりから、SESなどでも大きく取り上げられている、検索結果表示の新しい手法の流れです。Googleは関連性が高ければ、自社の提供しているコンテンツはもちろん、画像・動画・ニュース・ブログ・書籍などの情報も検索結果に盛り込む手法をとり、場合によっては広告の表示をしない事を選びました。また、広告が表示されていたとしても、画像や動画などのリッチな情報を含んだ検索結果へクリックを奪われてしまう事を承知でこのような手法をとっています。

一方、Yahoo! Japanはスポンサードサーチのリスティングも、検索ユーザーにとって、とても価値の高いコンテンツとして提供しているように思います。また、スポンサードサーチの表示結果の“質”にも自信とこだわりがあるのだと思います。かれらにも自社のコンテンツはもちろん豊富にあり、それを使う事は簡単な事ですが、今や巨大なメディアとして成長をしている事を考えると、サイトに広告を掲載したいと思っている、膨大な数の広告主のリスティングも平等に一つの情報として提供する事にためらいは無いはずです。また、Panama以降、広告の掲載順位の決定にも品質の要素が加わり、より広告の表示結果もアルゴリズムミックになっている事を考えると、有意義な広告をユーザーに提供するという意味ではでどちらも間違ってはいないと思います。

最後に、つい最近発表された、米国のCompete社の検索連動型広告のクリックシェアに関する調査を紹介しましょう。彼らの調査では、検索回数全体に占める広告クリックの割合を見ると、米国では依然としてGoogleが一位だが、クリックに至った検索回数に占める広告クリックの割合を見るとYahoo!が一位という結果が出ています。記事が解析する要因は、やはり、検索結果の表示方法の違いが大きく影響しているようですが、残念ながら、米国ではシェア一位のGoogleとYahoo!の検索数には大きく開きがあり、広告主への貢献度はあまり認知されていないようです。

The Undiscovered Best: How Yahoo! Actually Leads Paid Search

この調査はあくまでも米国のGoogleとYahoo!間の結果ですが、同じ現象は日本でも起きている可能性は高く、日本のYahoo!は検索市場でも絶対的なシェアをもっているので、もしかすると世界中のどの検索ポータルよりも、広告主への貢献度が高いポータルなのかもしれませんね。


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2008.10.30

inside adwords logo

筆者がインターネット業界に最初に携わったのはもう10年以上前の事ですが、当時はまだインターネットのホームページへどうやってユーザーのアクセスを増やし、また、どうすればインターネットを経由して収入が得られるのか、多くの人が収入源獲得への方程式を模索していた次期だったと思います。そして、手っ取り早くウエブサイトをメディアとして活用して、広告を表示させてしまえば、広告料金として収入が得られるし、サイト運営者からも集客の方法として需要があるのではと、言う考えから、バナー広告配信が始まったのでは無いかと考えます。

その頃のインターネットの広告といえば、バナー広告が主流でした。現在の様な検索連動型のテキスト広告やリッチなストリーミング動画広告も無く、ターゲティングに関しても複雑な機能選択もなく、単純な静止画像やフラッシュアニメのバナーを使って、予め設定されている広告カテゴリ枠に対して配信するのが一般的な広告配信でした。また、広告の制作に関しては、サイズの大きなフルサイズバナー(468 x 60 ピクセル)を専門のデザイナーが作成し、配信先となるISPなどの広告配信担当者にGIF等の形式で納品して、そこから直接広告システムにアップロードをして、広告の配信を行っていた事を覚えています。

少し話はそれましたが、時代は変わり、2008年になり、ついにバナー広告もテキスト広告と同じくらいの手軽さで、広告主が制作、配信できる時代が来ているようです。Googleが提供する『Build your own display ads in minutes』サービスによると、このシステムを使えば広告主が管理画面内で提供されているウィザードを使う事で、簡単にディスプレイ広告の作成が可能です(米国、カナダのみ)。

Build your own display ads in minutes

buildyourowndisplay

必要な広告の要素はキャッチコピーと画像として使う、自社のロゴマークくらいで、キャッチコピーに関してはリスティング広告で使用したコピーを流用する事も可能です。また、画像として使われるロゴマークは、アニメーションにも対応していて、これらの要素を組み合わせる事により、簡単にアイキャッチ効果のあるディスプレイ広告が作成可能です。

ここまで読むと世の中随分進んだなーと思ってしまいますが、問題点も色々と見えてきました。例えば、最低限のデザイン要素はテンプレート化されていて変更出来ないとしても、作成されたバナーの品質に関しては、いったい誰が、どのように判断しているか不明です。そして、悪意がある広告主が違法な画像を登録したり、無意識のまま著作権を侵害するような画像を登録した場合、今のテキスト広告よりも遥かにチェックが難しくなってしまいます。

一部では動画や画像の内容をシステムが読み取る技術もあるといわれていますが、まだまだ充分な精度もなく、私の知っている限りでは、精度の高い確認作業は人間の目視にたよるチェックがメインなると思います。しかしながら、品質に関しては、さらに複雑な問題があるのかも知れません。クリエィティブに関するセンスは人それぞれで違う場合もあり、テキストと違い画像の中のコンテキスト(文脈)を読み取るのはたとえグーグルと言えども、かなりの負担がかかると予想されます。

Googleがどのようのこれらのハードルを乗り越えて、このシステムの導入を進めて行くのかは興味深いところです。一番懸念されるのは、粗悪なディスプレイ広告の乱立と、それに伴い提供されたレベルの低いウエブサイトがインターネット広告市場自体に悪い影響を与えないかです。90年代後半以降、インターネットユーザーがバナー広告をまったくクリックしなくなった次期がありました、理由は、質の悪いバナー広告がネット上に氾濫して、ユーザー全体のエクスペリエンスを低下させ、ユーザーが広告を無視するようになったからです。

ご存知のように、今ではリスティング広告を筆頭に、広告もユーザーにとっても有意義な情報として認知されて来ています。これに伴い、広告市場が引き続き拡張している状況ですので、この流れを止める様なあやまちは二度と繰り返したく無いですね。


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