2008.11.25

さて、今回は前回に引き続き、アメリカのマーケティング雑誌「Search Marketing Standard」の記事から、SEMの管理・運用を外注する場合のチェックポイントの後半部分について、ご紹介します。

【その4】:外注先候補を募集する
RFP(request for proposal=提案要請書)をいくつかの代理店に送り、予算や目標に合った内容の提案を選択。または、ビジネスやマーケティング戦略について、打ち合わせ形式で、代理店と協議する、という2つの方法で、外注先候補を募集する。

一方で、RFPというのは元来、成果物がはっきりしている場合に利用するもので、SEMの外注先の選択に於いては、ビジネスやマーケティング戦略について協議することで、RFP上では読み取れない大切な要素が発見できることが多いため、アメリカではRFPを利用することに悲観的な考え方もあるようです。また、RFPを送る、あるいは、協議を行う前に、まずは、どのようなタイプの外注先候補があるのか、正しく理解する必要があるとも記載されています。

一般的なSEM外注先の例:
■ オンライン広告専門代理店 – SEO/SEM特化型
■ オンライン広告代理店 – SEM以外のオンライン広告や、PR、ブランディング等に関するサービスも必要に応じて提供
■ コンサルティング型広告代理店 – SEO/SEMエキスパートが中心になり、主に大手企業を顧客としコンサルティングサービスを提供

弊社もコンペへお誘いをいただくことがあるのですが、まずは、お打ち合わせで弊社の最適化に対する考え方や実施プロセスについて、ご説明をさせていただくようにしています。なぜならば、マーケティングプログラム等をご提案する場合は、ダイレクトメールや広告等、具体的なプログラムやそれに必要なコストについてご説明をすることができますが、SEMの場合は、成果物は「獲得コスト」、「コンバージョン数」のような数値になり、広告掲載開始前にこれらの数値をRFPに書くということは、現実的ではないからです。SEMの管理・運用には、ロジックがありますが、実際にやってみないと分からない部分が多く、ある程度蓄積されたデータを分析するにより、初めて、設定した目標を実現するためにやるべき事が見えてくるということになります。これが理由で、「御社にお願いすると、どのくらいのコンバージョン数が見込めますか?」というご質問をいただいた場合、「実際にやってみないと分かりません」という、感じが悪いお答えになってしまうのです。弊社の考えでは、RFPの段階で、この質問に対して数字で回答してくる代理店があるとしたら、この代理店は「要注意」ということになります。

【その5】:外注先を正しく評価・比較する
外注先候補を絞り込む際に、代理店の実際のクライアントと接触する機会を作るようにリクエストするという方法もある。また、SEMの管理・運用を実施するに当たり、「管理ツール」を利用しているかどうか、さらに、ツールを使って解決できた問題等も併せて聞くことで、ツールの理解度をチェックすることも可能になる。

実際のクライアントへの質問事項として「意見に相違がある場合、代理店はどのように対応しているか、教えてください。」といった内容のものがあります。日本に於いても、様々なケースがあるとは思うものの、代理店はクライアントに対して「代理人」となり、代理業を行うという役割が根強いため、クライアントと代理店が意見と異にするという状況は少ないのではないでしょうか?

しかし、SEMに於いては、結果が数値ではっきり出るため、「獲得コスト」「コンバージョン数」といった数値に対して、より責任を持って管理運用をしている代理店であれば、クライアントの意見を受け入れないこともあるはず。その場合、代理店にとっては、「獲得コスト」「コンバージョン数」に悪影響を与えないようにしつつ、クライアントの案を尊重するコミュニケーション作りが課題になるかと思います。

また、欧米の代理店の多くは管理ツールを利用しています。あるイギリスのSEM代理店は、ツールを「車」に例えながら、目標とする目的地に早く到着するためには車だけでなく、それを運転する優秀なドライバーが必要になると説明しています。昨今、日本でもツールは徐々に普及されつつあるようですが、ツールはあくまでも一部の作業を補ってくれる道具です。ツールを利用しているという事実だけでなく、利用して実現できたことについて、より具体的な内容を聞く必要があるかと思います。

【その6】: 外注先の最終選考を行う際に大切なこと
最終インタビューを電話、あるいは、打ち合わせで行う。代理店は、ビジネスゴールを達成するためのパートナーではあるものの、コーポレートカルチャーを理解し、性格的にもビジネスをしやすい相手であることが望ましい。また、この時点で、お互いの役割分担について、口頭で確認し、議事録として内容を記載しておくと良い。

パートナーとトライアンドエラーをし続けて行くのがSEM。コーポレートカルチャーは勿論のこと、目標を共有し、前向きに新しいことにチャレンジしていけるパートナーであることが、その後の結果に繋がるような気がします。そして、そのパートナー選びには、労力を惜しまず、リソースをかけて望む必要がありそうですね。

さて、2回にわたり、SEMの外注先の選び方についてまとめさせていただきました。景気後退に直面しているアメリカ経済に於いて、広告費の削減に踏み切る企業が多い中、費用対効果がはっきりしている検索連動型広告については、引続き堅調であると言われています。それと同時に、更なる効率化を図るための、外注先選びは大きな課題にもなっている様子で、「外注先選び」に関する情報も増えつつあります。日本に於いても、これまでの代理店を見直す、あるいは、内政化していた業務を外注するというニーズが増えてきているような気がします。

皆さんは今の体制に満足されていますか?


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2008.11.06

SEMを外注するべきかどうかは、アメリカの企業に於いても、悩みどころのようです。SEMの重要性が高まる一方、その管理・運用方法も複雑・高度化してきているため、多くの企業が外注という方法を選ぶようで、63%のアメリカ企業はSEMの作業を部分的に外注しているというデータがあります。SEMの管理・運用を社内で完全に内政化するということではなく、社内でSEM担当者を置きながら、外注先に管理・運用の多くの部分を委ねるということが方向性のようです。

日本でも、代理店を通じてSEMの管理・運用を行っている企業が多いかと思いますが、業務を外注したにも関わらず、作業の殆どを社内で行うという本末転倒なケースも良く見受けられます。そのようなことにならないために、大切なのは外注先選びです。

アメリカのマーケティング雑誌「Search Marketing Standard」に、企業がSEMの外注先を見つけるためにチェックするべき項目をまとめた記事がありますので、ご参考にしていただけそうなポイントを2回に分けてご紹介します。

【その1】:まずは、企業のマーケティング担当者がSEMに関する知識を得る
検索関連のカンファレンスに出席する、雑誌等を通じて、SEMの知識を自ら得ることが大切だ。また、忘れていけないのは、知識を得るという作業は一回で終わるのではなく、情報・環境が変わり続ける中で、継続的に行う必要がある。

SEOの最大手であるBruce Clayの社長は、「良いプロジェクトパートナーになるために、最初に、クライアントの全員にSEOのトレーニングを取ってもらうようにしている」とコメントしています。偶然にも弊社がコンサルティングを行わせていただく際にも、同じようなお話をしています。SEMのロジックを双方が理解することで、得られるメリットは想像以上に大きく、実は、これが広告効果に繋がると考えても良いかもしれません。例えば、企業側はロジックを理解することで、今、何が起きているのか理解することができるようになるため、外注先に対して主導権を握りやすくなります。また、外注先である弊社のような代理店は、作業を行うたびに企業側から質問を受けることがなくなり、その分、最適化により時間を費やすことが可能になるわけです。Clay氏が「プロジェクトパートナー」という表現を使っているところも非常に興味深いところです。SEMで効果を出していくためには、管理・運用だけでなく、サイトで販売する商品・サービス、また、サイト構成なども大きく影響してきます。つまり、どちらか一方の力で効果を上げることはできず、共通の目標を持つパートナーというとして、力を合わせていくことが大切なのです。

【その2】:ビジネスのゴールを明確にする
外注先になる代理店の評価をする前に、SEMで達成したいゴールを明確にすることが大切だ。その際に、外注先を選択する責任者は、マーケティング、IT、財務の責任者も含めて打ち合わせをし、目標の実現性を協議する必要がある。

これもまた、興味深いポイントです。「何を実現したいか」ということが明確でないと、外注先の良し悪しの判断もつかず、外注先が管理・運用を始めてからも、方向性が定まらず、その結果、曖昧な関係になってしまいます。

欧米の企業では、SEM代理店が企業側にプレゼンテーションを行う際には、財務担当者(ファイナンス)も含めるという話を良く聞きます。財務担当者にSEMを理解してもらうという目的に加え、財務担当者がマーケティング予算に対して権限があることが多いため、他の媒体と比べSEMの費用対効果が高いという判断した場合、他の予算をSEMに移すということも起きているようです。また、ITを含むことも非常に大切だと思います。「SEMを始めたけれども、ITがコンバージョンタグを貼ることを許してくれない」なんて話も実際にありますので、まずは、企業内の意識合わせは重要です。

【その3】: 信頼出来る筋から情報を得る
信頼できる人から情報を得る、あるいは、業界誌での評判や、ランキングを参考にする。

marketingservicesguide

口コミ情報が強いのは、どこでも同じですね。ランキングについては、欧米では、「Top Search Agencies」というようなタイトルで毎年ランキングを発表する業界紙がいくつかあります。数字だけでは、判断できない部分も多いかと思いますが、外注の候補先どのくらいあるのか、また、それぞれの特徴を知るためには役立ちそうです。

皆さんもご存知の通り、SEMは他の媒体とは違い、一回で終わるものではありません。ロジックを基に、トライアンドエラーを継続していくことが、効果を高める唯一の方法と言って良いかと思います。その時に大切なのは、手を取り合って目標に向かって歩んでいくパートナー。

パートナーを選んだ後に、「こんなはずではなかった」と後悔しないためのチェックポイント、次回に続きます。


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【番外編】
検索連動型広告のパイオニアであるオーバーチュアの日本法人を立ち上げた人が私達の恩師である、故・鈴木茂人氏です。彼の奥様が、四谷3丁目でベジタリアンカフェをプロデュースしています。一人が一食菜食するだけでECOに繋がるというメッセージをテーマに、ベジタリアン向けではなく、ECOのためのカフェとして注目されています。おすすめは、バーガーセット。是非、お試しください。

『なぜ菜食がECOなのでしょう?
 畜産業によって排出されるCO2、メタンガスは想像を絶する量なのです。
 ”一人が菜食する”
 それだけで充分ECOであり、地球を守っていることになるのです。
 Go!Veg. Be! Green. Save the planet.』

Loving Hut(ラビングハット)
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