2009.2.18

「100年に一度の危機」という言葉は、いまや景気や雇用問題だけではなく、「100年に一度の危機の今だから食べたい激安寿司!」といったフレーズにも使われ始め、「100年に一度」も、だいぶ軽くなってきなぁ、などと感じ始めている今日この頃です。

ちなみに「100年に一度」と言い始めたのは、麻生総理(執筆時点)ではなく、元FRB議長のグリースパン氏だと聞いて、ちょっと調べてみたのですが、グリーンスパン氏が昨年8月に英国のFinancial Timeに寄稿した記事を読むと、

“a once or twice a century event”

つまり、「100年に一度か二度の危機」と書いているので、正直、だいぶニュアンスは違うかな、という印象です。

ちなみに、今から100年前の1909年(明治42年)というのは、伊藤博文が旧満州のハルビン駅で暗殺された年、というから、かなりの昔であることは間違いありません。関東大震災や第二次世界大戦で日本が焼け野原になるのは、まだまだ後のことです。

こちらの画像は、東京大学総合研究博物館のアーカイブにあった明治42年6月の新聞広告です。今みると、広告としてはかなり貧相な感じですが、左下に大きくスペースを取っているのは「三越呉服店」(三越デパートの前身)ですから、新聞に大きく広告を出せるのは、当時も、一部の大企業に限られていたようです。

Meiji42

それに比べて、100年後の今日、中小企業や個人事業主であっても、インターネットを使って、全国(あるいは全世界)に向けて、簡単に広告が出せ、そしてモノやサービスを販売できる時代になっている訳ですから、少なくともビジネス環境における選択肢の広がり、という意味では、過去100年で、今日ほど恵まれた時代はないように思います。

とはいえ、景気は「気」からという言葉もある通り、消費者や顧客企業の「買い控え」による売上の低迷に頭を悩ませておられる方も多いことでしょう。そんな時、ぜひ見直して頂きたいのが、リテンションマーケティング、つまり既存顧客がもたらす価値を理解した上で、そこからの売上を最大化するためのマーケティング活動です。

仮に、過去1年間で、検索連動型広告を使って、毎月、100件の新規顧客をできていたとすると、みなさんの手もとには、延べ1,200件分の顧客データが残っている筈です。この不景気で、新規の顧客が伸び悩む、あるいは獲得コストが上昇してしまっているという今こそ、この顧客資産を活かすべき時に来ているのではないでしょうか?

もし、1,200人(社)の既存顧客にメールを送って、そのうち10%にあたる120人がメールをよみ、さらにその10%にあたる12人が、再びサイトを訪れて商品を買いにきてくれたとすれば、これは、毎月の新規顧客の獲得件数100件に対して、実に12%にあたる数字、ということになります。もし、これまで、獲得コスト5,000円で新規顧客を獲得していたとすれば、これは12件=6万円分をかけたのと同じ効果を、メール1本で生み出した、ということになります。

先月、米国のChief Marketing Officer Council(CMO協議会)が発表した調査結果においても、不景気だと言いながら、既存顧客がもたらす価値を認識した上で、アクションを取れているマーケターは非常に少ないという報告がなされています。

昨年の10月〜12月に、企業においてマーケティング活動を指揮・統括する立場にある650名を対象に行われた調査では、既存顧客のリピート率やライフタイムバリュー(=既存顧客あたりのリピートを含めた生涯購入総額)を把握できているのは、半数以下の46.5%に留まる、という結果が出ており、特に大企業のマーケターほど、リテンションマーケティングに対する意識が薄い、という傾向があるそうです。

その原因としては、そもそも、リテンションマーケティングの前提となるデータの収集が行われていない、あるいは収集の頻度や方法にバラつきがあったり、せっかく収集されたデータも、各部門に散逸してしまっていて、全社的に分析やアクションが取れる状態になっていない、といったことなどがあげられています。

同時にこの調査では、この不景気の中、マーケティング部門として、売上もしくは利益の改善にできることは何かという質問(複数回答可)もしているのですが、それに対して、調査対象者の実に40%が「マーケティング部門の人員や予算を削減する」と答えていたそうです。

この点について、報告書では次のようにコメントをしています。

“These do not all require outside media or marketing dollars. They require much more drilling and integrating with the customer database and sales organizations.” (カネを使う必要はない。データと向き合え。)

みなさんは、リテンションマーケティング、できていますか?


Technoraty Tags:

Share Button

Read more

2008.12.24

このところ、テレビや新聞では、企業の業績や雇用情勢の悪化など、暗いニュースばかりを伝えており、年の瀬の日本には、不況風が吹き荒れています。

確かに、金融機関の経営が悪化すれば、経済の「血液」ともいえるキャッシュの流れが滞り、それが実態経済にも悪影響を及ぼすのは間違いありません。しかし、一方で、人々の不安心理を必要以上に煽るような、昨今の報道のあり方には、正直、違和感も覚えます。

半年前のことを思い出してみて下さい。原油が高騰し、それこそ日本人は海外旅行にも行けないし、車にも乗れない、といった報道ばかりが行われていました。月末になると、値上げ前に、給油をしようとスタンドに列をなす車の映像が、お決まりのように流れていましたね。

しかし、夏頃に1バレル=140ドルを超えていた原油価格は、いまや、40ドル近辺まで急落しています。加えて円高の恩恵もあり、家の近くのガソリンスタンドでは、ついにレギュラーガソリンが1リットル=100円まで下がりました。

ところが、海外旅行やドライブのチャンスが到来した、といったニュースを目にすることはありません。

それどころか、ある朝のニュースでは、家電量販店に来店していた外国人観光客に「こんな円高では何も買えない。」と言わせて、円高不況が消費にも悪影響をもたらしている、と結んでいました。

ここまでくると、不況感を煽りたいがために、都合のよいコメントだけをつなぎあわせた「情報操作」を行っている、といっても過言ではないと思うのですが、驚くのは、こうした報道が、興味本位のワイドショーだけではなく、朝のNHKのニュースでも、堂々と行われているということです。

しかし、原油価格や円が高くなって得をする人もいれば、下がると恩恵を受ける人もいる訳で、全ての人が、一様に不況にあえぐ、というシチュエーションの方が、不自然だということは、ちょっと冷静に考えればわかるはずです。

実際、先日、韓国から来日した友人と食事をしましたが、いま、韓国と日本を結ぶ飛行機は、円高・ウォン安の恩恵を受けて、韓国旅行に出かける日本人観光客で大変な混雑だそうです。しかし、こうしたニュースは、不況感を煽るには「都合が悪い」という理由で、テレビや新聞ではほとんど取り上げられることはありません。

おそらく、視聴率を上げるためには、不況感を煽った方が好都合、という判断も働いているのでしょうが、広告収入に依存するメディアにとって、これは自殺行為といっても過言ではないでしょう。実際、電通の売上は、前年比で15%近く減少しており、不況報道によって不安心理を煽られれば、さらに多くの企業が広告費を削ろうとするでしょう。

と同時に、電通の売上推移を子細に見ていくと、そこには、広告主のしたたかな動きを見て取ることもできます。

例えば、今年11月の電通の売上高は、前年同月比で約14%下落しました。特に大きな減少となったのは新聞(-24%)と雑誌(-17%)ですが、反対に、このような景況感の中でも、インターネット広告は、前年比4%のプラスとなっています。

denstu

お世辞にも、インターネット広告に力を入れているとは言えない電通でさえ、前年以上の売上を上げているのですから、市場全体では、もっと大きな伸びになっていると考えられます。

この背景にあるのは、広告の「費用対効果」に対する関心の高まりではないかと思います。確かに多くの企業において、経営環境は悪化しているのでしょうが、それが契機となって、日本のマーケター達も、ようやく、広告の費用対効果を真剣に考えるようになってきた、というのが本当のところではないでしょうか?

実際、弊社においても、サブプライム問題が深刻化してきた秋以降、おかげさまで、ご相談を頂く件数は、むしろ増加を続けている、という状況です。

この背景には、テレビや新聞・雑誌に比べて、インターネット広告は、費用対効果の測定という点では格段に優れている一方、費用は圧倒的に少なくて済むということもあります。例えば、先の電通の売上データで言うと、新聞広告は前年比で42億円、テレビは35億円の減少となっていますが、一方で、インターネット広告は売上の総額自体が20億円程度しかありません。

つまり、もし、削られたテレビの広告予算の10%(3.5億円)がシフトするだけで、インターネット広告にとっては18%近い大幅な増加、というインパクトを与えることになります。

サブプライムショックの震源地である米国で、B2B市場のマーケターを対象に行われた調査でも、インターネット広告費については、ほとんどの企業が、2009年は、むしろ広告支出を増やすという回答をしています。

景気は「気」から、などとも言われますが、当ブログ読者のみなさまにおかれましては、不況報道にいたずらに惑わされることなく、費用対効果の分析と、SEMへの適正な予算配分により、2009年も、ライバルを押しのけ、更なるビジネスの発展を遂げられますよう、心より、お祈り申し上げます。

Technoraty Tags:

Share Button

Read more