2008.7.16

既にオーバーチュアからのメールを読んでご存知の方も多いと思いますが、来月上旬から、これまで一律9円(一部35円)に設定されていた最低入札価格が、「可変」方式に変わります。今年2月のエントリーでご紹介した通り、米国では既に2月から「可変」方式に移行していますが、来月以降は、日本においても、キーワード・広告主よって異なる最低入札価格が適用されるようになります。

詳しくはオーバーチュアのヘルプページなどを読んで頂くとして、広告の費用対効果を維持する上で、一番気になるのは、ミドル〜スモールキーワードに対して、最低入札価格が引き上げられてしまった場合の影響でしょう。

ビッグキーワードから安定的に得られるコンバージョンは捨てがたいけれども、競争も激しいため、クリック単価が高く、1件あたりの獲得コストで見ると、どうしても高くついてしまう、というのはよくある話です。

そこで、検索数やコンバージョンへの貢献度は少ないものの、相対的にクリック単価の低いミドル〜スモールキーワードを加えることで、全体の平均クリック単価を引下げ、獲得コストを損益分岐点以下におさえながら、最大限のコンバージョン数を取りに行く、というポートフォリオ管理が重要になる訳です。

ところが、せっかく出稿したミドル〜スモールキーワードの最低入札価格を引き上げられてしまうと、平均クリック単価の引下効果も働かなくなってしまい、獲得コストを採算レベルに維持することが難しくなってしまいます。

特に、これまで、オーバーチュアとアドワーズを併行して運用されている場合に、従来から、「可変」方式で最低入札価格が決まるアドワーズにおいて、ミドル〜スモールキーワードが、軒並み、最低入札価格に到達できないために非掲載となってしまい、その結果、オーバーチュアに比べて、キャンペーン全体の獲得コストが高くなってしまった、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。

こうした事態を回避するための方法はあるのでしょうか?

アドワーズもオーバーチュアも、広告の「品質」が低いと、その分、最低入札価格は高くなるという考え方は一緒ですので、ここは基本に忠実に、広告の品質に大きな影響を与えるクリック率を高めるための努力を、これまで以上に徹底することが不可欠です。

特に、キーワードと広告文の関連性は重要なファクターであり、実際、広告文(それもできればタイトル部分)にキーワードが含まれているかどうかで、クリック率が倍近く変わることは、経験則として広く確認されている事実ですので、これを実行に移さない手はないでしょう。

以下は、アドワーズを利用する広告主において実際にあったケースをモデルにした例です。広告主ABC社は、「ABCセミナー」という名称のイベントを開催することになり、

「ABCセミナー」
「エービーシーセミナー」

という2つのキーワードに、クリック単価50円で入札をしました。ちなみに、2つのキーワードは、同じ広告グループに登録されており、広告文のタイトルには、

「ABCセミナー開催決定」

と記載してアドワーズに登録したところ、その直後に、「エービーシーセミナー」というキーワードは、一度も検索されることなく「非掲載」になってしまいました。

調べてみると、「エービーシーセミナー」というキーワードに対する最低入札価格は、なんと1,200円(!)に設定されていましたが、一方、「ABCセミナー」は50円のままで掲載ができていました。

そこで、「エービーシーセミナー」というキーワードに対しては、広告文も、カタカナで「エービーシーセミナー開催」という表記に改めたところ、最低入札価格は、いきなり1/10の120円まで下がりました。

これは、アドワーズのシステムが、時に、キーワードが広告文に含まれているか否かだけで、広告文の関連性=品質を判断し、最低入札価格を決定することもあることを端的に示した事例といえます。

一方、オーバーチュアのヘルプページを読むと、特にグーグルとの違い、というところで、非掲載になる前にはアラートが来るので、いきなり掲載されなくなるということはない、とか、グーグルほど頻繁に最低入札価格を変動させることはしない、といったことが書かれていますが、仮に非掲載にならなくとも、広告の品質は掲載順位に大きな影響を与えますので、基本に忠実な管理・運用を心がけることが大切なのは、言うまでもありませんね。


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2008.7.03

6/30に米国のJupiter Research社が発表した予測によると、サブプライム問題などによる景気後退にもかかわらず、米国のネット広告市場は、今年も前年比で20%と、引続き高い成長が見込まれるそうです。

Campus

検索連動型広告の市場規模は、2007年の91億ドル(約1兆円)から、2013年には209億ドル(約2兆3,000億円)に到達すると見られており、検索は、今後もネットにおける最大の「広告媒体」として、成長の牽引役になると見られています。

もっとも、テレビや新聞などオフラインも含めた米国の広告市場は全体で約30兆円(日本は約7兆円)ですから、検索連動型広告の市場規模が2兆円を超えても、それ自体は、それほど驚くべき数字ではないでしょう。

むしろ気になるのは、この2兆円を誰がどうやって「マネタイズ」するか、という点です。

先日、マイクロソフトによる買収提案を拒絶した米ヤフーは、グーグルと提携してアドワーズ広告の配信を受けると発表しました。「提携」というと聞こえは良いですが、これは、検索連動型広告のパイオニアであるオーバーチュアを傘下に持ち、本来は広告の「配信元」であるはずのヤフーが、配信を受ける「ネットワーク」の1社に成り下がってでも、糊口をしのがざるを得ないほど苦しい状況にあることを示している、と見るべきでしょう。

ちなみに、検索連動型広告の売上高というのは、簡単にいうと、

「検索のトラフィック数」x「1検索あたりの平均広告収入」

という算式で計算されます。(「1検索あたりの平均広告収入」は、平均クリック単価やクリック率などによって決まります。)

既に米国の検索市場では、年々グーグルによる寡占状態が進行しつつあり、グーグルの成長が、米国における「検索のトラフィック数」全体の伸びにも大きな影響を与えるようになっています。そこに、今回の「提携」で、米国第2の検索エンジンであるヤフーの「1検索あたりの平均広告収入」についても、グーグルが、今後、いかに多くの広告主を獲得し、1検索あたりの広告収入を改善できるかに大きく依存することになります。

ちなみにグーグルの2008年第1四半期の売上高は51億ドル(約5,600億円)で、そのうち米国からの売上は49%とされています。これを単純に4倍すると、今年のグーグルの米国での売上は約1兆円になる計算です。米国の検索連動型広告市場が、予測通り、本当に2兆円市場に到達できるかどうかは、実は、ほぼ唯一の「頼みの綱」になりつつある、グーグルの成長いかんにかかっているといっても過言ではないでしょう。


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