2008.3.26

3/11にEUは、フランス政府による国産エンジンの開発プロジェクト『Quaero(クエロ)』への9,900万ユーロ(約150億円)の補助金支給を承認しました。

Quaero

「Quaero」とはラテン語で「I Search.(私は検索する)」という意味で、フランス政府主導のもと、大手電機メーカーであるThomsonなども参加する官民共同のプロジェクトです。

シラク大統領(当時)が、当初フランスとドイツの共同プロジェクトとしてQuaeroを発表してから既に3年が経っており、忘れかけていた方も多いのではないかと思います。その後、ドイツが独自エンジン開発を目指してプロジェクトから離脱するなど、紆余曲折もありましたが、資金の手当もできて、ようやくプロジェクトは前に進み始めることになるようです。

マイクロソフトへの追加制裁金の一部がこのプロジェクトに回るのでは、などという皮肉も聞こえてきそうではありますが、確かに「官主導による共同プロジェクト」というだけで、何となくうまくいかなそうな感じがしてしまうのは事実です。

GoogleやYahoo!など米国製の検索エンジンに対抗できる、国産エンジンを持つことが最大の目標とされてはいますが、Quaero自体は映像な音声などマルチメディアコンテンツに特化した検索エンジンを開発することを目標としていますので、仮に優れたエンジンが完成したとしても、テキスト検索に関しては、依然としてGoogleなど米国製エンジンの優位を覆すことはできません。

少々古い記事にはなりますが、NIKKEI NETでは、フランス政府が国産検索エンジン開発にこだわる理由について次のように書いています。

“プロジェクトの根底には、フランス独特の、自国文化を守ることに対するこだわりがある。文字情報以上に、映像や音声などマルチメディアコンテンツは「ネット上に急速に普及しつつある文化遺産」ととらえる。「文化のアイデンティティーの基盤」であるコンテンツに対して、国民がアクセスし操作するのに不可欠な、コンテンツをナビゲートするための手段を米国企業に握られてよいのかとの強い危機感がプロジェクトに反映されているという。”

説明としては、こちらの方が分かりやすいですが、果たして、こうしたナショナリズム的な理由によって開発された検索エンジンが、テキスト検索では米国産エンジンであるGoogleを使うことに何の抵抗もないフランス国民の支持を獲得することができるのか、非常に興味深い実験であることは確かです。

ちなみにQuaeroの関係者は、こうした批判に対して「日本政府も150億円近い予算を投じて国産エンジンの開発を進めようとしており、これは国際的な潮流である。」という答えをしているそうです。

確かにすっかり忘れてましたが、我が国にも「情報大航海プロジェクト」という壮大な名前のプロジェクトがありましたね。私たちの税金が投じられるという意味では、こちらの行く末を心配する方が先なのかもしれませんね。。。


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2008.3.05

米国の調査会社comScoreの発表によると、携帯電話ネットワークを利用した、いわゆる「モバイル通信」経由でインターネットに接続するPCの台数は、ここ1年で、85万台から216万台に急増したそうです。

日本でも、イー・モバイルの加入者数が、昨年3月のサービス開始から9ヶ月で20万人を突破するなど、モバイル通信ネットワークの利用者は急速に拡大していますので、これ自体は、さほど驚くべきニュースではありませんが、comScoreのレポートで面白いのは、モバイル通信の利用率と年収の相関関係についても調査をしている点です。

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ご覧の通り、モバイル通信の全利用者の36%が年収1,100万円以上(1ドル=110円で換算)の高所得層に集中しており、825万円以上の利用者が全体の79%を占めるという結果になっています。

これを見て、昨年、ネット上でも話題になった『パソコン見放す20代「下流」携帯族』という記事のことをふと思い出しました。これは、日本のネットレイティングスが行ったWeb利用者の年齢構成比に関する調査で、2001年まで20%を超えていた20歳代の構成比が、2006年には約12%に半減したという結果を発表したのを受け、「高額のPCが持てず、インターネット利用を安価な携帯電話で済ませてしまう下流社会がネット上にも出現した。」と結論づけたことに対して、様々な議論が巻き起こりました。

果たして、モバイル通信でも同じような「下流社会」が出現しているのか、手許にある資料をいくつか調べてみましたが、残念ながら、年収との相関関係に関するデータは見つかりませんでした。ただ、インプレスが発行している「インターネット白書2007」に「ワイヤレスインターネット全体動向」という調査結果が掲載されており、これによると、日本のワイヤレスインターネットユーザー(公衆無線LANも含む)のうち、22.6%は費用を払っておらず、全ユーザーの37%は、1,000円未満の費用で利用しているそうです。

もっとも、これは、モバイル通信ネットワークに「下流社会」が出現している訳ではなく、世界一安いといわれる我が国のモバイル通信環境の恩恵を受けているとみるべきなのだと思います。

ところで、「白書」には更に気になる調査結果が載っていました。

「外出先・移動先でインターネットを利用することはない」87.2%

最近出張でよく新幹線を利用しますが、ビール片手にスポーツ新聞で情報収集に励むニッポンの出張族の姿を思い出し、確かにパソコンを使わなければ、モバイル通信も要らないか、と妙に納得がいった次第です。。。


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