2012.3.01

SESロンドンが閉幕し、視察ツアーにご参加頂いたみなさま共々、無事、帰国しました。

気になった個別のセッションについては、順次、レポートをしてきたいと思いますが、まずは、記憶が鮮明なうちに、今回のSESロンドンを総括する意味でも、カンファレンス全体を通して参加者に向けられたメッセージについて考えてみたいと思います。

SES London

2011年の英国のネット広告費は約5,600億円程度で、日本の6,189億円(媒体費ベース/電通・日本の広告費)とほぼ同程度の水準にありますが、一方で英国の総広告費は約2兆円と日本の約1/3程度であることを考えると、総広告費に占めるネット広告の比率が非常に高いことが分かります。実際、英国において、ネット広告は、僅差ながら、テレビ広告の市場規模を上回る水準で推移していますまた、ネット広告のうちリスティング広告が占める割合も、日本や米国が45%前後であるのに対し、英国では約58%と非常に高いのも特徴的です。

このリスティング広告大国とも言える英国で開催された今回のSESで、検索エンジンマーケターに向けた発せられたメッセージを一言でまとめるとすれば「ダイレクトレスポンスの呪縛を解き放て」ということではなかったかと思います。

今回、SESの全日程終了後に、ツアー参加者のみなさんと一緒に、ロンドンで注目を集めるエージェンシー i spy marketing 社を訪問した際に、そもそも英国では、なぜここまでネット広告に占める検索のシェアが高いのかという質問をしたところ、リスティング広告が上陸した時に、ECサイトを中心に、ダイレクトレスポンスを求める広告主が、こぞって参入したという経緯があるという説明がありました。一方で、最近では、ナショナルブランドのような大手広告主も、積極的にネット広告を活用するになってきていますが、こうした企業の場合、商品やサービスに対する認知を高めたいといったニーズも強いため、リスティング広告だけで彼らのニーズを充足させることは難しくなりつつあります。

また、リスティング広告市場における競争も激化する中で、まだニーズが顕在化していないユーザーにリーチして、検索需要を創造するといった施策も求められる中、英国においても、いわゆるディスプレイ広告に注目が集まっています。特に、ターゲットユーザーの設定や、広告クリエイティブの組合せによる効果をデータに基づいて検証し、また、ターゲットとなるオーディエンスに対するインプレッションをリアルタイムで入札できるアドエクスチェンジ市場の台頭は、データによる費用対効果の可視化を求める英国の広告主にも広く受け入れられつつあるようです。

こうした変革期にあって、今回のSESでも、「サーチからディスプレイ」や「アトリビューション分析」をテーマにしたセッションが多数開催されました。こうしたセッションでは、

(1)RTBによる入札モデルや、ターゲット設定・クリエイティブの組合せによる多変量解析などが求められる今日のディスプレイ広告の管理運用には、検索エンジンマーケターの知見がそのまま生きるという意味でチャンスである。
(2)一方、検索エンジンマーケターの多くは、ラストクリックからのダイレクトレスポンスを過剰に評価する傾向があり、時に長期的・俯瞰的な視点が求められるディスプレイ広告の効果を正しく評価できないという欠点もある。

といったことが繰り返し語られていました。

検索エンジンマーケターの持つ、長所と短所を踏まえた上で、ディスプレイ広告への向き合い方を説いているという点は、ロンドンで開催されたSESならではの視点と言えそうです。こうした流れの中で、個々のセッションではどんなディスカッションが行われたのかについても、本ブログでは順次レポートをしていきますので、どうぞ、お楽しみに。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)

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