2012.3.14

ルグランが今回初めて参加したロンドンでのSESイベントですが、ご存知のとおりイギリスはネットマーケティングの中でもとりわけリスティング広告が盛んな国でもあり、ネット広告全体に対しての割合も、日本よりも高い水準となっています。

この様な環境でのリスティング広告キャンペーンの構築テクニックとは、どのような視点で考えられているのか?今回のSESセッションレポートは、ヨーロッパ、イギリスを代表する二人の”SEMのプロ”:iCrossing UKのSam Fenton ElstoneとEfficient Frontier EuropeのJonathan BeestonによるPPCトラックセッション、”リスティング広告キャンペーンの構築・PPC Campaign Architecture”の受講レポートをお届けします。

まず最初に壇上に上がったiCrossing UKのHead of Mediaを担当しているElstone氏のお話から。

リスティング広告キャンペーンを構築する際に考えるべき事は“スケーラビリティ”(Scalability)/拡張性、”コントロール”(Control)/調節・制御、”エフィシェンシー”(Efficiency)/作業効率の3点を実現する事。

すべての広告主に適応する事の出来る”魔法のキャンペーン構築方法”は無い。

一般的に、多くの広告主は自社のサイトのナビゲーションメニューの構成を起点に、キャンペーンを構築する事を考えますが、これはすべての広告主にとって必ずしも最善策では無い。キャンペーンの構築には他にも様々な要素の考慮が必要で、まず考えるべきポイントして挙げられたのが、以下の4点。

1)顧客はどのような検索を行うのか?検索パターンを考える。
2)販売する商品、提供するサービスに季節的要素はあるのか?
3)インプレッションの高い、商品、サービスはどれか?
4)サーチ、ディスプレイネットワークのどちらを利用するか?

顧客の検索パターン、季節要素、インプレッションの期待できる商品を把握するために広告主が活用するべきツールとして “グーグルインサイト “を取り上げ、年間を通してキーワードが何時、どのような需要を産み出していくのか、トレンドつかみます。

グーグルインサイトの検索トレンド画面

キーワードの季節性が捉えられば、状況に応じて予算を調整する事も可能。また、多くのPPC広告にて、キャンペーンレベルでの配信設定やターゲティング設定が可能なので、これらの機能を活用してキャンペーンを”コントロール“すると、配信コストの無駄を抑えたキャンペーンを構築できます。

キャンペーンレベルの設定例:
1)配信ネットワーク
2)地域ターゲティング
3)配信先デバイス
4)配信時間帯指定
5)配信曜日
6)配信開始&終了日
7)予算
8)対象外キーワード(除外キーワード)

“エフィシェンシー”(Efficiency)“スケーラビリティ”(Scalability)を両立させる為のキャンペーン構築に関しては、普段から広告主(自分)がどれだけの時間をレポートの抽出・データ分析や、キーワードのリスト構築・入札、対象外キーワードの選定、広告文の作成に時間を費やしているのかを考える事が大事。

特にキャンペーン名を決める場合は、”トップキーワード”、”ベストパフォーマー”、”モバイル”、”マッチタイプ名”などの名称ではなく、広告主の持つビジネスゴールや製品名の情報がキャンペーンには必要です。この方式を行う事により、第三者がキャンペーン名を見ただけでアカウントやキャンペーンの内容が把握できる様になり、レポートの抽出やキャンペーンのコントロールが容易に出来る様になります。

Control:金メダル, Efficiency:銀メダル, Scale:銅メダル?

最後に、キャンペーン構築にあたって一番重要な要素は”コントロール“、二番目は”エフィシェンシー“、三番目が”スケーラビリティ“であると述べた上で、この3つのポイントを考慮していないまま運用されている、間違ったキャンペーンの構築はパフォーマンスを低下させるだけでは無く、広告費と時間の無駄となるので、まずは”コントロール”ができるキャンペーンの構築が必要と語りました。

一方、Efficient FrontierのBeeston氏はキャンペーン構築ではElstone氏とほぼ同意見としながらも、今後はPC以外のデバイス、モバイルやタブレットOSへの対応についての重要性を強調していました。

今回のSESにても複数のセッションがタブレットやモバイルデバイスの成長について触れていましたが、イギリスのネットマーケティング業界では各社が新しいデバイスへの対応に本腰を入れ始めている様に感じられました。またSESイベント開催中の様々セッションに、以下のポイントが語られていました。

・コンシューマーはデスクトップパソコンよりもモバイルデバイス、タブレットPCの購入に興味を持っている。また今後もこの傾向が続くであろう。

・デバイス別にトラフィックが集中する時間帯が異なる傾向を有効利用する。特に早朝や夜間のモバイル、タブレットデバイスへのターゲットを検討する。

・タブレットPCの利用時間は午後6時~午後10時に集中する。

・オンラインでの平均購入単価はタブレットがデスクトップパソコンを20%上回る。

現在のリスティング広告のターゲティング機能はモバイルやタブレットデバイスへのターゲティング機能の精度が向上しているので、キャンペーンレベルでデバイス、OS、キャリアネットワーク別に配信をする事が可能となっています。

しかしながら、多くの広告主は依然として、デスクトップパソコンへの配信内容をそのままモバイル広告のクリエィティブに流用している場合が多く、インターネットユーザーに正しい広告メッセージが伝わっていない可能性がある。

多くの場合ランディングページのモバイル向けに最適化がされていなかったり、タブレットPC向けにモバイルのランディングページを表示させる事も広告主側の改善項目として考える必要があり、ユーザー特性を考慮したキャンペーンを構築することを心がける。

今回のセッションで述べられたイギリスのSEMプロによるキャンペーン構築の技術は、それほど新しい発見では無かったと同時に”グーグルインサイト”の活用や、キャンペーンレベルでのターゲティングの活用など、新たに大きなコストをかけずに、基本に忠実に運用を行っている様に見られました。キャンペーンを確実に”コントロール“し、作業効率を向上させていく事で、無駄なコストを省く事も一般の広告主が改めて見直すべきポイントだと思います。また、各種モバイルやタブレットデバイスへの対応については、依然としてフィーチャーフォンへの依存度が高い日本の携帯端末市場にとっても、マーケターにとって参考になるポイントになるかと思います。

(by Kenta Umezu, Chief Operating Officer, Le Grand)

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