前回に引き続き、4月23日(月)に開催したセミナー「i love data – データを愛することから始めよう!」のレポート第二弾をお送りします。
レポート第一弾はこちらをご覧ください。
セミナーの後半は、弊社代表取締役の泉の講演と、ゲストにお迎えした株式会社エム・データ取締役小口日出彦氏、株式会社ホットリンク代表取締役社長内山幸樹氏とのパネルディスカッションを行いました。
■「ビッグデータ分析が広げるマーケティングの可能性 ~2012年AKB総選挙予測を例に考える、活きたデータの使い方~」株式会社ルグラン 代表取締役 泉 浩人
泉は、ビッグデータがバズワード的に使われ、データ爆発という言葉も聞くようになった今、ビッグデータとは何なんだろうというところから、Googleのエコノミスト、Hal Varian氏の言葉「これからの10年、statistician(統計家)がセクシーな職業になるといえるだろう」を引用し、ビッグデータの時代に求められているのは、ビッグデータを扱っていることではなく、データを理解して意味や価値を見いだすことだと話を切り出しました。
しかし、ビッグデータを扱うということは、必ずしも膨大なデータを持っていないとできない訳ではなく、検索データでも見えることがあるという例としてGoogle Insightで拾えるデータをいくつか挙げ、その内の一つ、海外では毎年1月にピークがくるのに、日本では5〜7月にピークがくるキーワードが「禁煙」で、その理由として「日本の場合、4月に健康診断が多いからではないか」と仮説をたててホットリンクさんのデータで検証すると、4月に実際に健康診断のクチコミが多いことも紹介しました。
そして、「データ爆発はデータの民主化である」という持論を展開。今までは一部の人にしかアクセスできなかったデータが、比較的安価に、場合によっては無料で、簡単に多くの人にアクセス可能になったのが今の時代なのではないかと話しました。
続いて、このプロジェクトを始めるまでAKB48のことは全く知らなかった泉が、ビッグデータを使って、どんな分析ができるのかということで取り組んだ、来るべきAKB48の総選挙予測の分析結果を発表。
エム・データのテレビ/CM露出データ、ホットリンクのクチコミデータ、そしてビデオリサーチインタラクティブのネット視聴率データの3つを主に使い、Google+で検証もしつつ、前田敦子さんが卒業するという要素も加味して、現時点では今年は大島優子さんが1位になるのではないかという予測をしました。
但し、AKB総選挙では、速報後に順位が入れ替わるということが毎年起きていることもあり、今後も継続して分析を続ける必要があることも付け加えました。
■パネルディスカッション 「徹底討論!生き残るためのビッグデータ活用戦略」
小口 日出彦 氏 × 内山 幸樹 氏 × 泉 浩人
セミナーの最後は、データを愛する登壇者3名でのパネルディスカッションで締めくくられました。
泉浩人(以下、泉):先ほど、Googleエコノミストの「これからsexyな職業はstatisticianである」という言葉を引用しましたが、お二人はその実感はありますか?
小口日出彦氏(以下、小口):そうあってほしいですが・・・。ハードルは、情報分析にお金を払う価値があると認識するかしないかで、それが超えられていないなというのが印象です。また、ハードルは超えていても、それにいくらの価値があると考えるかですよね。
内山幸樹氏(以下、内山):分析する人が大事ということですが、日本の場合、分析する人が増えるより分析結果を活用できる人が増えないといけないんじゃないかと思います。データはあくまで道具なのでね。カナヅチを使える人が増えても、こういう家を建てたいんだっていう家主がいないと大工さんも困っちゃいますよね。
小口:私は、情報を分析して何かをやってみようというリクエストがきたとして、分析対象が商品でもタレントでも何でもいいんですが、最初の3ヶ月はその対象の情報世界でのポジションを探る為に使い、何をしたいのかがわかるのに次の3ヶ月かかり、ようやく次の3ヶ月で本当の意味での分析ができるくらい時間がかかることを先に納得していただくようにしています。
その過程にお金がかかることを理解するかしないかが、情報分析にお金を払う価値を認めるかどうかなんですよね。
泉:アメリカ系の会社では、あらゆる部門にアナリストがいて、朝から晩まで分析をやっている人が相当数いるのですが、日本の場合は、専門的な知識や経験をもった人がやるべき仕事でそういう人が必要なんだということがまだ認められていないのかな、と感じますね。
内山:元々2チャンネルの分析をしていた会社があるのですが、2チャンネルのデータを分析する価値を日本企業の社長さんたちに説明して回るのに疲れて、だったら自分たちで活かせる事業をやっちゃおうということでオンラインゲームの会社になっちゃいました(笑) ボクたちが金融事業を始めたのも同じで、儲けたいんじゃなくて、自分たちで作った武器をどこでも使ってもらえないんだったら自分たちでやっちゃえってことなんですよね。ツールベンダーだった会社が金融の仕事を始めちゃったり、ボーダーがなくなってくる革命の時代だと思います。
小口:以前は、情報を取るのは行き当たりばったりなところもあり、時間もお金もかかったけれど、今は情報が大衆化されているのに、それを使うか使わないかなんて、目の前に食べ物があるのに食べ物に見えないから食べないと言うのか、美味しそうと思って試してみるのかみたいな違い。片方は餓死して片方は生き残るくらいの差になってくると思いますよ。情報を無視して、成長とか競争が有り得ると考える方が危険だと思いますね。
泉:ワインの当たり年を数理モデルで解析して、かなりの確率でその出来がわかるらしいんですが、それがソムリエ協会から総スカンを食ったそうです。統計で味がわかるか、と。そして、予測してもしなくても自分は当てたんだから予測はいらない、と。
小口:経験と勘は当たりますからね。でも、経験と勘が通用しない相手、領域がある。往々にして、自分の隣接領域にそれまでの経験と勘を移植して失敗するものです。それを客観的に裏付けるのがデータなんです。
パネルディスカッションの後、参加者の方からの質問も寄せられ、データ解析などのサービスを売り込む時に経営者やマーケターを説得するにはどうすればいいかという質問に、小口さんが「人間力」と答えていたのが真理を突いていて印象的でした。
結局のところ、データをどれだけ科学的に扱おうと、それを扱う人間の人間力が必要であることが、セミナーを通して語られていたように思います。
本セミナーには多数の方にご参加いただき、誠にありがとうございました。貴重な講演をしてくださった小口日出彦さん、内山幸樹さん、セミナー開催にあたりご協力をいただいた株式会社ホットリンクさん、株式会社エム・データさんにも改めて御礼を申し上げます。
ブログ「i love data.jp」に加え、FacebookページやTwitterでも情報を発信しています。
また、第二回セミナーも企画しておりますので、これからも、どうぞ宜しくお願いいたします。
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