今年のSESで、とにかく目立ったのはFacebookやTwitterなどのSNSに代表されるソーシャルメディアに関する基調講演やセッションの多さだろう。
「Googleの次に来るものは何か?」を探し求める傾向は、昨年のSESあたりから見られてはいたのだが、今年のカンファレンスでは、その答えを(少なくとも主催者側は)SNSに求めようとしているように思えた。
だが、言うまでもなく、SESは”Search Engine Strategies”、つまりSEMやSEOなど、「検索エンジンをマーケティングに活用するための戦略」を議論するためのカンファレンスであり、「SNSをマーケティングに活用するための戦略」との間に接点を見つけることは難しい。もちろん、SNSをいかにマーケティングに活用するかというテーマは、いま最もホットな話題の一つであり、オンラインマーケティングに携わる者としては、その可能性やリスクについて、しっかりと考えておく必要があることは言うまでもない。だが、これがSESの中心的なテーマとして語られることに違和感を覚えたのは私だけだろうか?
実際、ソーシャルメディアに関するセッションにも、いくつか出席してみたが、そこで行われた議論を総括すると、その内容は、おおむね以下の5点に集約されるように思う。
1. FacebookやTwitterを活用することで、企業がマーケティング的な意図をもって自社に有利な情報を発信することもできるようになった反面、意に反してネガティブな情報が広まることも覚悟する必要が出てきた。
2. 自社に不利な情報が広まっていないかをチェックするために、SNSをパトロールするツールやサービスもあるが、自分の意見を表明したいという根源的な欲求を抑え込むことはできない。
3. ネガティブな情報に対しては、できる限り正直に、そしてポジティブに対処することが問題解決への近道となることが多い。
4. SNSは上手に使えば、最新かつ最強のCRM(=Customer Relationship Management)ツールにもなり得るが、そのために必要となる組織や人員の整備には充分な投資を行う必要がある。
5. そして、検索エンジンマーケティングとの関係においてソーシャルメディアが果たし得る主な役割は、以下の3つである。
(1) 自然検索の上位に、自社に関連するコンテンツをより多く表示させる手段を確保すること
(2) 特にまだ知られていない商品やサービスについて、検索需要そものを創出すること
(3) 検索キーワードだけでは図りきれないユーザーの「意図」を知る手がかりを得ること
どれもSNSをマーケティングに活用する上では、非常に大切なポイントではあると同時に、特に1〜4については、かつて「ブログマーケティング」のメリットやリスクを語る際に言われてきたことと、内容的にはほとんど同じである。そして、SNSがより力を発揮するのは「マーケティング」ではなく、むしろ「PR」の領域である点も、ブログと相通じるものがある。
こうした流れの中で話を聞いてしまうと、5番目のポイントは、どうしても取ってつけたような感じに聞こえてしまい、そこには「検索に関するカンファレンスだから、少しは検索と絡めた話もしておかないとなぁ。」という発表者側の「気遣い」さえも感じ取られた。
そういう意味では、来年以降、SESは”DMS”(=Digital Marketing Strategies)に衣替えをした上で、オンラインマーケティングに関するテーマを幅広く扱っていくという考え方もあるのではないか。一方、いくつかのセッションで、講演者が「今回SESに初めて参加した人は?」と訪ねると、今年も、かなりの数の参加者が挙手をしているのも事実であり、サイトクリニックなどでのやり取りを聞いていても、まだまだ「初級レベル」の参加者は多い。
だとすると、無理に「Googleの次に来るもの」を追い求めて検索から離れてしまうのではないく、SESは、愚直に「検索エンジンマーケティング」に関する正しい、そして最新の知識や情報を得られる場、として回を重ねていくのも一つの方法ではないかとも思えた。
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