2011.2.01

先日、米国の調査会社Hitwiseが、英国での「禁煙」に関連する検索キーワードの動向をレポートしていました。

Hitwise UK

上図は”Stop Smoking”など禁煙に関する検索キーワードの英国での動向を追ったものですが、これを見ると、毎年1月には「今年こそ禁煙」と心を決めた人達が、禁煙に関する情報を求めて激しく検索をするものの、2月に入ると、そうした決意も、急速に冷めて行く様子が見て取れます。

そこで、“Google Insights”を使って、日本で「禁煙」というキーワードの検索数の推移を過去5年間に渡って調べてみたのが下のチャートです。

Google Insights 1

これを見ると、日本では、英国のように、特に年初には何の盛り上がりも見られませんが、毎年5〜6月になると「禁煙」に関する検索が増加する傾向があることが分かります。なぜ、5〜6月になると「禁煙」に関する検索が増えるのでしょうか?その理由をあれこれ考えているうちに、ふと思い出したのが健康診断です。サラリーマン時代は、毎年、ゴールデンウィークの前後あたりに、会社で定期検診を受けていたので、もしかすると、健康診断で、タバコを止めるように言われたり、あるいは検診の結果、呼吸器に異常を認められた人が、禁煙を考えるといったパターンがあるのかもしれません。

そこで、この仮説をもとに、先ほどの「禁煙」というキーワード(青線)に「健康診断」(赤線)というキーワードの検索の推移を重ね合わせてみると、下図のようになります。

Google Insights 2

これを見ると、毎年4月前後に「健康診断」に関する検索の山が来た後に、少し遅れて「禁煙」の検索が増加しているので、どうやらこの二つには、何らかの相関関係があるのではないか、ということが想像できます。なお、2010年に関しては、10月に非常に大きな山が来ています。これは、言わずと知れた、タバコ増税による値上げをきっかけに、禁煙しようと考えた人が急増した結果と考えて間違いないでしょう。

こうしてみると、イギリス人は年初になると(それが成功したがどうかは別として)「自ら」禁煙を決意しようとするのに対し、日本人は、健康診断や値上げといったことをきっかけに禁煙を考えるという点で「受け身」な姿勢が目立つといった違いはありそうですが、いずれにせよ、大切なことは、「禁煙」に関する検索数の増加は、禁煙しようと思った人が増えたことの「結果」であるという点です。

たとえば、禁煙をサポートする薬やグッズなどを日本で販売している企業があるとしましょう。この企業の売上が目標値を下回っているので、年度末にあたる1〜3月に集中的にSEMに費用を投下して売上を挽回したいと思っても、その効果は限定的なものに留まる可能性が高いと思われます。

なぜならば、広告主がSEMに費用を投下したからといって、それによって検索数が増える訳ではないからです。「検索が得意なのは需要の刈り取り」である、といわれるのは、こうした事情によるものです。よく「何月頃にSEMキャンペーンの山を作りたい」といったご相談も受けるのですが、基本的に、こうした「キャンペーンの山」は、広告主が作り出すものではなく、検索ユーザーが作りだすものです。

(補足:もちろん、想定される検索数・クリック数に対して、投下する予算が非常に小さい場合には、常に予算を使い切っている状態となりますので、全体の検索数が変わらなくとも、予算を増やせば、その分、売上の増加につながることもあります。)

ですので、この企業が、もし売上を効果的にあげたいのであれば、日本で禁煙に関する検索が増える5〜6月頃をターゲットにして、SEMの予算を重点的に配分するのが賢明な選択と言えます。

一方、どうしても1〜3月に売上を増やしたいのであれば、まずは、オフライン・オンラインでの広告やPR活動などを通じて、禁煙に関する気運を高め、人々に禁煙を「促す」ような取組が必要になります。その結果として、禁煙を考える人が増えれば、おのずと「禁煙」に関する検索も増加しますので、SEMキャンペーンで、そうした需要を刈り取れるようになるという訳です。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)



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