2011.6.19

表題の通り、これはPR/広報に関する書籍ではあり、インターネットを活用した、いわゆる「ネットPR」を行うにあたって気をつけなければいけないポイントが、あれこれと書かれています。そういう意味で、本書はPR/広報に携わる人々にとっての実務的な手引書という一面があります。

しかし、その一方で、本書においては、ソーシャルメディアを活用し、どう「消費者」「生活者」「顧客」と向き合うべきかという「考え方」が、随所に述べられており、これは、PR/広報に携わる人に限らず、多くの人にとって、示唆に富む一冊ではないかという思いから、本ブログでもご紹介をさせて頂くことにしました。

中でも、本書のエッセンスは、以下の一節に、簡潔にまとめられているのではないかと思います。

“いつのころからか、コミュニケーションは、トップダウン方式でメッセージを押し付けて情報を操作するためのマーケティングツールとなり、マーケティングコミュニケーション(マーコム)と呼ばれるようになった。…(中略)…しかし、ウェブのソーシャル化という新たな時代を迎え、コミュニケーションは、一方的に投げかけるものではなく、共に作り出すものという本来の姿に戻りつつある。”

これは広告にも通じることですが、ソーシャルメディアというのは、売り手が自分にとって都合のよい情報を一方的に「ブロードキャスト」する場ではないということを理解する必要があります。実際、著者も「ソーシャルメディアマーケティング」「カンバセーショナルマーケティング」といった表現について、「マーケティング」という言葉には、「双方向で誠実なやりとりをする」というニュアンスが感じられないので注意が必要である、と述べています。

特に、ソーシャルメディアが存在感を増す中、PRは「マーケティング」ではなく「カスタマーサービス」の一環と位置付けられるようになるのではないかという見方を示しています。つまり、

PR(パブリックリレーションズ) + CS(カスタマーサービス)=CR(カスタマーリレーションズ)

というのが今後のPRの方向性であり、その責任者は「コミュニティマネジャー」と呼ぶのがふさわしいのではないか、としています。

コミュニティマネジャーに求められるのは、社内的にはソーシャルメディア活用のためのエバンジェリスト(伝道師)となること、そして対外的には、自社の商品やサービスについて、人々にクチコミで広めてもらえるような働きかけをすることです。たとえば、有力なジャーナリスト達だけではく、ソーシャルメディア上で、発言力・影響力のあるブロガーなどの「インフルエンサー」が誰なのかを見極め、彼らと良好な関係を構築することも、これからのPR活動にとっては欠かせません。

また、そのためには、普段から、自社の商品やサービスについて、どのような人が、いつ、何を語っているのかといったクチコミの調査・分析も不可欠となります。

さらに、コミュニティマネジャーには、ソーシャルメディアや検索に関する技術的な視点・理解も求められます。本書では、ソーシャルメディアを通じた拡散を企図したリリースを「ソーシャルメディアリリース(SMR)」と呼んでいますが、従来のジャーナリスト向けに配信するリリースとSMRが同じ形式・内容であってはいけません。

SMRの場合、例えばブロガーが引用しやすいように、事実関係を簡潔に箇条書きにまとめる一方、補足・関連情報についてのリンクはもちろんのこと、YouTubeやflickrなどの共有可能なコンテンツもできるだけ多く活用されていることが重要となります。また、ニュースリリースの配信サービスを利用する場合には、検索エンジンにも掲載されやすくするよう、検索されたいキーワードをリリースのタイトルや本文に有効に使うといった工夫も求められます。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)



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