2013.2.14

去る2月6日(水)、ルグランと株式会社マイクロアドの共催によるセミナー、『どうなる2013年の広告?~キーワードはHonesty~』を開催いたしました。

本セミナーでは、弊社代表泉が、多摩美術大学教授であり、カンヌ国際クリエイティビティ祭の日本代表審査員も務めた佐藤達郎 氏、株式会社マイクロアド・未来広告研究所 所長の中川斉氏らと共に、オンライン・オフラインの垣根を越えて、マーケティング全体をデザインし、企業価値を上げるために必要な考え方・方法について講演を行いました。

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■「データ利用で見えてくる広告・マーケティングの未来」
株式会社マイクロアド未来広告研究所 所長 中川斉氏

トップバッターでご登壇いただいたのはマイクロアド・未来広告研究所 所長の中川斉氏。「データ利用で見えてくる広告・マーケティングの未来」をテーマにお話し頂きました。

信頼されるDSPとしてネットユーザーと広告主双方へのHONESTYを大切にしたいと考える中川氏。ステマに対する不信感や執拗なターゲティングなど、広告は基本的に不快・不要なものだと考えられがちですが、たとえば、映画館での広告など、シチュエーションやタイミング次第では、普段は鬱陶しいと感じることの多い広告も、「良い情報」に変わることがあります。

広告に対する不快感を払拭するため、マイクロアドでは、個々人へのターゲット精度をデータにより高めた、中川氏曰く、「超絶精度のターゲティング」を目指しているといいます。そのために、どのような状況で何のデータを取得し活用すればよいか、現状どこまでデータを取得できるようになったか、できないか、「超絶精度のターゲティング」の実現に向けた取り組みについて、具体的な事例も交えながら解説していただきました。

一方、広告主に対する取り組みとして、アドベリフィケーション技術の採用による「ブランド毀損防止」と「クリーンな課金」についてお話を頂きました。マイクロアドでは、不適切なサイトに広告が掲載されることでブランドが毀損されることを防ぐため、インプレッション(=課金)が発生する前の段階で、アドベリフィケーションによる媒体の選別・判定を行っているそうです。

複雑さが増し、ますますブラックボックス化したアドテクノロジーにより、本当に適切な課金が行われているのか、広告主には判断が難しくなってきていますが、マイクロアドでは、どのようにして広告掲載結果の可視化を推し進めているかについて、海外の事例も紹介しながらその取り組みについてお話を頂きました。

■「企業価値向上を実現するためのマーケティングプランとは?」
株式会社ルグラン  代表取締役 泉浩人

続いて、弊社代表泉が「企業価値向上を実現するためのマーケティングプランとは?」と題して講演。まずネット広告の「最適化」と「改善」の違いについて、パレート最適の概念を用いて解説しました。

通常、反比例の関係にある費用対効果と売上(コンバージョン)ですが、そこから費用対効果を落とさずに売上を上げる「パレート改善」な状態に移行するには、検索キャンペーンの中だけでの最適化に留まらず、商品やブランドに対する認知を向上させ、興味・関心を持ってもらうなど、デジタルマーケターであっても、購買ファネルの上流部分に対しても働きかけるような施策を検討・提案することが求められるようになると解説。リターゲティングやオーディエンスターゲティングなど、新たな広告テクノロジーも普及してきていますが、こうした技術の活用にあたっても、重要になってくるのがHONESTYであるとして、1999年に書かれたセス・ゴーディンの『パーミションマーケティング』を引用しながら、その考え方について解説しました。

サイトへの来訪は「リターゲティングで追い回してよい」というパーミションにはならないという点や、日本未来の党の「ネットでプレ選挙」の失敗例をもとに、HONESTYの大切さを語る一方、広告会社の人間が、クライアントの広告費を「消化する」などと表現することも、その会社や担当者のみならず、業界全体に対する信頼をなくすことにつながると警笛を鳴らしています。

最後に、規制による不利益を避けるために、当局に先駆けて倫理規定を定めた、WOMMA (米国のクチコミマーケティング協議会)の取り組みを例に、海外では企業や団体が積極的に政治に働きかけ、自ら倫理規定や行動規範作りに動いていることも紹介しました。

■「カンヌライオンズで見た一回性と真正性」
コミュニケーション・ラボ代表 佐藤達郎氏

コミュニケーション・ラボ代表 佐藤達郎氏のテーマは「カンヌライオンズで見た一回性と真正性」。話題となったTVCMの映像を紹介しながら、一回性と真正性についてお話頂きました。

九州新幹線の開業CMや、イギリスで放映されたホンダの”Difficult is worth doing.”というキャンペーンのCMを紹介しながら、近年のカンヌライオンズで受賞した作品に共通して見られる特徴として、「そこで、ただ一度だけ」行われたという一回性と、「実際に、誤魔化すことなく」行われたという真正性があると解説。

クライアントに出来上がりの約束ができない一回性。従来では考えられないリスクを冒してまで何故一回性を求めるのか?それは、複製技術の発達で失われた、「”いま””ここに”しかないという芸術作品特有の一回性」においてのみつくられる「作品のアウラ(一般的にはオーラとも)を広告クリエイティブに取り戻す試み。ソーシャルメディアの発達や自社サイト、YouTubeなどでCMを繰り返し視聴できるようになった今だからこそ、大切にされるようになった考え方であり、従来の作りこんだ広告クリエイティブとは全く異なる方法論であると佐藤氏。

そして「真正性」。従来では軽視されてきたが、ネット、ソーシャルメディアの発達で「本当のこと」がバレやすくなってきており、「見せられるもの」と「実際」との落差に人々が辟易としてきて、本物が求められるようになってきたといいます。この2大要素がソーシャルメディア時代には力を発揮し、ブランドの価値を高めるだろうと話されました。

佐藤氏のセッションの中で紹介されたカンヌライオンズ受賞作品

九州新幹線
ホンダ”Difficult is worth doing.”

最後に佐藤氏をモデレーターに3者によるパネルディスカッションが行われ、ターゲティングの話から、海外と日本で異なるカンファレンス事情などに話が及び、最後は、参加者の方との質疑応答で幕を閉じました。

ルグランでは、今後も、デジタルマーケティングに携わるみなさまの有益な情報源となるようなセミナーを多数開催していく予定です。最新情報は本ブログやニュースレターにてお知らせしますので、どうぞ、お楽しみに。

(by Naruhiro Hayashi, Consultant, Le Grand)

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