筆者がインターネット業界に最初に携わったのはもう10年以上前の事ですが、当時はまだインターネットのホームページへどうやってユーザーのアクセスを増やし、また、どうすればインターネットを経由して収入が得られるのか、多くの人が収入源獲得への方程式を模索していた次期だったと思います。そして、手っ取り早くウエブサイトをメディアとして活用して、広告を表示させてしまえば、広告料金として収入が得られるし、サイト運営者からも集客の方法として需要があるのではと、言う考えから、バナー広告配信が始まったのでは無いかと考えます。
その頃のインターネットの広告といえば、バナー広告が主流でした。現在の様な検索連動型のテキスト広告やリッチなストリーミング動画広告も無く、ターゲティングに関しても複雑な機能選択もなく、単純な静止画像やフラッシュアニメのバナーを使って、予め設定されている広告カテゴリ枠に対して配信するのが一般的な広告配信でした。また、広告の制作に関しては、サイズの大きなフルサイズバナー(468 x 60 ピクセル)を専門のデザイナーが作成し、配信先となるISPなどの広告配信担当者にGIF等の形式で納品して、そこから直接広告システムにアップロードをして、広告の配信を行っていた事を覚えています。
少し話はそれましたが、時代は変わり、2008年になり、ついにバナー広告もテキスト広告と同じくらいの手軽さで、広告主が制作、配信できる時代が来ているようです。Googleが提供する『Build your own display ads in minutes』サービスによると、このシステムを使えば広告主が管理画面内で提供されているウィザードを使う事で、簡単にディスプレイ広告の作成が可能です(米国、カナダのみ)。
Build your own display ads in minutes
必要な広告の要素はキャッチコピーと画像として使う、自社のロゴマークくらいで、キャッチコピーに関してはリスティング広告で使用したコピーを流用する事も可能です。また、画像として使われるロゴマークは、アニメーションにも対応していて、これらの要素を組み合わせる事により、簡単にアイキャッチ効果のあるディスプレイ広告が作成可能です。
ここまで読むと世の中随分進んだなーと思ってしまいますが、問題点も色々と見えてきました。例えば、最低限のデザイン要素はテンプレート化されていて変更出来ないとしても、作成されたバナーの品質に関しては、いったい誰が、どのように判断しているか不明です。そして、悪意がある広告主が違法な画像を登録したり、無意識のまま著作権を侵害するような画像を登録した場合、今のテキスト広告よりも遥かにチェックが難しくなってしまいます。
一部では動画や画像の内容をシステムが読み取る技術もあるといわれていますが、まだまだ充分な精度もなく、私の知っている限りでは、精度の高い確認作業は人間の目視にたよるチェックがメインなると思います。しかしながら、品質に関しては、さらに複雑な問題があるのかも知れません。クリエィティブに関するセンスは人それぞれで違う場合もあり、テキストと違い画像の中のコンテキスト(文脈)を読み取るのはたとえグーグルと言えども、かなりの負担がかかると予想されます。
Googleがどのようのこれらのハードルを乗り越えて、このシステムの導入を進めて行くのかは興味深いところです。一番懸念されるのは、粗悪なディスプレイ広告の乱立と、それに伴い提供されたレベルの低いウエブサイトがインターネット広告市場自体に悪い影響を与えないかです。90年代後半以降、インターネットユーザーがバナー広告をまったくクリックしなくなった次期がありました、理由は、質の悪いバナー広告がネット上に氾濫して、ユーザー全体のエクスペリエンスを低下させ、ユーザーが広告を無視するようになったからです。
ご存知のように、今ではリスティング広告を筆頭に、広告もユーザーにとっても有意義な情報として認知されて来ています。これに伴い、広告市場が引き続き拡張している状況ですので、この流れを止める様なあやまちは二度と繰り返したく無いですね。
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