2008.10.30

inside adwords logo

筆者がインターネット業界に最初に携わったのはもう10年以上前の事ですが、当時はまだインターネットのホームページへどうやってユーザーのアクセスを増やし、また、どうすればインターネットを経由して収入が得られるのか、多くの人が収入源獲得への方程式を模索していた次期だったと思います。そして、手っ取り早くウエブサイトをメディアとして活用して、広告を表示させてしまえば、広告料金として収入が得られるし、サイト運営者からも集客の方法として需要があるのではと、言う考えから、バナー広告配信が始まったのでは無いかと考えます。

その頃のインターネットの広告といえば、バナー広告が主流でした。現在の様な検索連動型のテキスト広告やリッチなストリーミング動画広告も無く、ターゲティングに関しても複雑な機能選択もなく、単純な静止画像やフラッシュアニメのバナーを使って、予め設定されている広告カテゴリ枠に対して配信するのが一般的な広告配信でした。また、広告の制作に関しては、サイズの大きなフルサイズバナー(468 x 60 ピクセル)を専門のデザイナーが作成し、配信先となるISPなどの広告配信担当者にGIF等の形式で納品して、そこから直接広告システムにアップロードをして、広告の配信を行っていた事を覚えています。

少し話はそれましたが、時代は変わり、2008年になり、ついにバナー広告もテキスト広告と同じくらいの手軽さで、広告主が制作、配信できる時代が来ているようです。Googleが提供する『Build your own display ads in minutes』サービスによると、このシステムを使えば広告主が管理画面内で提供されているウィザードを使う事で、簡単にディスプレイ広告の作成が可能です(米国、カナダのみ)。

Build your own display ads in minutes

buildyourowndisplay

必要な広告の要素はキャッチコピーと画像として使う、自社のロゴマークくらいで、キャッチコピーに関してはリスティング広告で使用したコピーを流用する事も可能です。また、画像として使われるロゴマークは、アニメーションにも対応していて、これらの要素を組み合わせる事により、簡単にアイキャッチ効果のあるディスプレイ広告が作成可能です。

ここまで読むと世の中随分進んだなーと思ってしまいますが、問題点も色々と見えてきました。例えば、最低限のデザイン要素はテンプレート化されていて変更出来ないとしても、作成されたバナーの品質に関しては、いったい誰が、どのように判断しているか不明です。そして、悪意がある広告主が違法な画像を登録したり、無意識のまま著作権を侵害するような画像を登録した場合、今のテキスト広告よりも遥かにチェックが難しくなってしまいます。

一部では動画や画像の内容をシステムが読み取る技術もあるといわれていますが、まだまだ充分な精度もなく、私の知っている限りでは、精度の高い確認作業は人間の目視にたよるチェックがメインなると思います。しかしながら、品質に関しては、さらに複雑な問題があるのかも知れません。クリエィティブに関するセンスは人それぞれで違う場合もあり、テキストと違い画像の中のコンテキスト(文脈)を読み取るのはたとえグーグルと言えども、かなりの負担がかかると予想されます。

Googleがどのようのこれらのハードルを乗り越えて、このシステムの導入を進めて行くのかは興味深いところです。一番懸念されるのは、粗悪なディスプレイ広告の乱立と、それに伴い提供されたレベルの低いウエブサイトがインターネット広告市場自体に悪い影響を与えないかです。90年代後半以降、インターネットユーザーがバナー広告をまったくクリックしなくなった次期がありました、理由は、質の悪いバナー広告がネット上に氾濫して、ユーザー全体のエクスペリエンスを低下させ、ユーザーが広告を無視するようになったからです。

ご存知のように、今ではリスティング広告を筆頭に、広告もユーザーにとっても有意義な情報として認知されて来ています。これに伴い、広告市場が引き続き拡張している状況ですので、この流れを止める様なあやまちは二度と繰り返したく無いですね。


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2008.10.02

Yahoo!側の主張によると、グーグルとヤフーの広告提携は独占では無く、あくまでもオープン化の第一歩と言うことになります。

yahoo_google

今年の6月あたりから、ネット広告業界のニュースをにぎわせているグーグルとヤフーの広告提携ですが、このニュースに関してはGoogle、そしてつい最近ではYahoo! Inc.共にネット上にオフィシャルコメントが配信されてましたが、それぞれの契約に対するニュアンスは微妙に違う様に受け取れます。

Facts about the Yahoo-Google advertising agreement(英語)
http://www.google.com/yahoogooglefacts/

Myth-busting and the Yahoo!-Google agreement(英語)
http://ycorpblog.com/2008/09/26/myth-busting-and-the-yahoo-google-agreement/

Yahoo! Inc.の社長Sue Decker氏は自社のブログにて正式な声明を発表しました。それによると、Googleとの契約について、多くの憶測や噂が飛び回っているが、明確にしたい事は二つあると語り、以下の2点をあらためて強調しました。

1)オンライン広告マーケットの中でさらにYahoo!ブランドの競争力を強化する
2)Yahoo!は検索連動型広告市場から撤退するつもりは無い

また、一部の報道ではこの契約によりGoogleは検索連動型広告市場の90%をコントロールする事が可能になるとも報じられている件についても、まったくの誤解であるとしたうえで、今回の契約により、逆に今迄Yahoo!での広告配信をYahoo!が独占していた状況を他のネットワークからする事ができるようになるのは、検索連動型広告の“オープン化”の始まりと言う捉え方をして欲しいと語っています。

確かに最近のYahoo! Search Marketing(旧US Overture)の大きなニュースとしては、2007年のPanamaを上回る大きなプラットフォームの刷新(米国のみ)といわれている “APT”(http://www.ysmblog.com/blog/2008/09/24/apt-to-change/)が一部の新聞社系の配信パートナー向けにローンチしていますが、これはYahoo! Inc.版アドネットワークとも言われているとおり、広告ネットワークのオープン化のプラットフォームと言われています。しかしながら、2007年の SES San Joseでは大きく取り上げられていたAd Networkも2008年になって話題が今ひとつ盛り上がっていない感じがします。

対照的にGoogleのサイト上の発表内容はGoogleらしいと言うべきなのか、Sueのような広告主への釈明メッセージではなく、プレゼンテーション資料がリンクされていて、そこには淡々と事実が書かれているほか、Yahoo!のサイトではまったく話題になっていないGoogleとYahoo!メッセンジャーサービスの互換性についての発表が取り上げられています。

これもGoogle特有の騒ぎを沈静化させる為の作戦なのでしょうか?明確な答えはわかりませんが、日本でも米国でも過去にはYahoo!の検索結果にGoogleの検索連動型広告が表示されていた事を考えると、始まってしまえばそれほど違和感は無いのかもしれませんね。

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