2014.4.10

SES視察ツアー最終日の恒例となっている現地の企業訪問。今回はモバイルソリューションカンパニー「SOMO 」とクリエイティブエージェンシー「AKQA」。ツアースケジュールがタイトなため、訪問時間も限定されていたにも関わらず、2社とも予定を超える時間をかけて、オフィスツアー、事例紹介、そして現在取り組んでいる施策について丁寧に説明して下さり、「おもてなし」のレベルの高さに多くを学ばせていただきました。

まず、最初の訪問企業「SOMO」は、オーバーチュアのヨーロッパを立ち上げ、その後、SEM専業代理店「The Search Works」を設立し、イギリスのナンバーワン SEM 専業代理店にまで成長させた Nick Hynes が2009年にスタートしたモバイルソリューションに特化した代理店です。アウディ、デイズニー、ドミノピザなどの大手企業をクライアントに持ち、マーケティングの戦略立案から、アプリの開発、広告の管理運用、効果測定まで幅広くサポートしています。


オーバーチュア時代からの旧知の仲であるNickと山辺

2012年に彼らのオフィスを訪ねた時は、ロンドンの街中にオフィスを持つ社員20人ぐらいのこじんまりとした会社でした。それが、ここ数年で従業員180人、世界6ヶ国に拠点を拡大し、オフィスもロンドンの街中からIT系新興企業が集まるシリコン・ラウンドアバウトと呼ばれる地域に移転。更に、高い成長率が評価され、今月に入り追加の資金調達も実現し、ロンドンで最も注目される企業へと成長していました。

「SOMO」のクライアントの一つであるアウディとの取り組みについて話を聞く中で印象に残ったことは、顧客との強い信頼関係。技術が日々進化する中で、何が最新の技術で、それをどのように活用したら良いかについては、クライアント、代理店ともに答えはありません。そのような状況で重要なことは、クライアントのゴールに対して、代理店がどれだけ親身になれるのか。そして、クライアントと共に考えていく機会を作り続けていくことで生まれてくる強い結びつきであると感じました。

「SOMO」のオフィスの入り口には「THE LAB 」という場所があり、ここにはガジェットが幅広く取り揃えられていて、クライアントに最新の技術を体験してもらうと同時に、これからの施策を一緒に考えるために使われているということでした。そして、アイディアを形にするためにはスピードが重要ということで、手法はアジャイル開発。そこで考えられた企画は6週間程度でアプリ化されるそうです。

Googleグラスの活用方法について様々な検討が行われている最中とのことで、実際に私も参加者の方々とGoogleグラスを体験させていただきました

クライアントと代理店が一緒に考え、テストに投資をしていく考え方を創る力とそれを短期間で実現するスピード感がある「SOMO」。これが「SOMO」の成長の理由の一つだと今回の訪問で強く感じました。

次回は2つ目の訪問企業、「AKQA」についてレポートします。

マフィン、クロワッサン、フレッシュジュース、コーヒー&ティーをいただきながらブレックファーストミーティング。(ロンドンの食事が美味しくないというのは過去のこと。ロンドンの食生活、充実していました。)

(by 山辺仁美, Co-CEO, Le Grand)

Share Button

Read more

2014.4.10

SESロンドン2日目の基調講演に登壇したのは、Googleヨーロッパで、広告商品の企画・設計などを担当するディレクター、Ian Carrington氏。

Googleに入社する前はAlta Vista(=アメリカで産まれた検索エンジンで後にOvertureが買収)にいたというCarrington氏のミッションは、広告主のROI向上に寄与するような広告サービスの提供。

【Googleの広告商品の設計思想について語るCarrington氏】

まずは、いまGoogleが目指しているものは、『どこで、誰に、何を聞かれても正しい答えが返せるようになること。さらにその先には、何を知りたいかを聞かれる前に分かるようになること。』であり、例えば、「ナレッジグラフ 」のようなサービスの提供も、そうした「野望」を実現するための一つのステップであるという話から始まりました。

そして、Carrington氏が担当する広告商品の設計にあたっても、そうした思想は活かされているとした上で、Googleの広告商品設計に関する3つの基本方針を紹介しました。

【Googleの広告商品戦略を規定する3つの基本方針】

Be There

目的やシチュエーションに応じて、様々なデバイスを自由に使い分ける、今日の消費者行動を考えた場合、どんなデバイスにも最適化されたフォーマットで広告が配信できることは不可欠の要素であると。

実際、英国では、モバイル経由のトラフィックが売上に与えるインパクトが非常に大きくなっており、大手小売チェーンTESCOのネット売上の1/3はモバイル経由になっており、また、老舗百貨店John Lewis では、クリスマス商戦時のトラフィックの実に3/4がモバイル経由だったそうです。

もはや、『モバイル戦略を考えないということは、将来のことを考えていないのと一緒』とまでCarrington氏は言い切ります。

Be Relevant

一方で、広告の費用対効果を高めるためには、適切なオーディエンスに対して広告が配信されるような仕組みが非常二大切であるとも言っています。たとえば、モバイル端末利用者の位置情報に基づき、広告配信ルールを見直しただけで、ROIが劇的に改善することもあると。

Be Optimized

とはいえ、いくら広告を配信するターゲットの選定が正しくとも、その広告を通して伝えるメッセージが適切出なければ、費用対効果の改善は望めません。

一方で、最適化を進めようとすると、どこかでプライバシーの保護という問題にも行き当たることになり、講演後のQ&Aでは、Googleが、法的・倫理的な観点から、広告配信の最適化とプライバシー保護という問題に、どう折り合いをつけるかを、慎重に検討している、といった点にも言及していました。

今後、Googleが、適正な収益の確保を図りながら、サービス利用者の利便性や権利、そして広告主の費用対効果という、ともすれば相反しがちな3者の利益について、どうバランスを取っていくのかが注目されるセッションでした。

Share Button

Read more