2012.9.21

9/11〜12の2日間に渡って開催されたSES Hong Kongに参加してきました。

Kowloon

会場は、九龍側の尖沙咀(チムサーチョイ)という賑やかなエリアの中にあるホテルThe Mira。今回は、宿泊先とカンファレンス会場が同じホテルの中でしたので、移動時間もかからず、とても便利でした。

The Mira Hotel

カンファレンスは、ロンドン に続き、アクセス解析の世界では知らない人はいない、あのアビナッシュ・コーシック氏の基調講演からスタートしました。

Keynote by Avinash Kaushik

大きな身振り・手振りを交えた、エネルギッシュなプレゼンで聴衆を魅了した講演のテーマは、彼がロンドンを皮切りに、今年、世界各国で開催されるSESで行っている基調講演の統一テーマとなっている「エコノミックバリュー 」について。これがSESの統一テーマになっているのか?それには、もちろん理由があります。

リスティング広告の出現により、特に検索エンジンマーケティングの世界においては「ラストクリックからもたらされるコンバージョンや獲得コストを最適化する」ために、広告の運用や最適化を図るという手法が広く用いられるようになりました。

こうした手法は、費用対効果の可視化やデータに基づく意思決定といったポジティブな側面もある一方で、ソーシャルメディアやスマートフォンの普及により、消費者の購買行動が大きく変化する中、こうした視点・手法にとらわれ過ぎると、企業の持続的なビジネスの成長を、むしろ阻害する結果も招きかねないという状況になっています。

たとえば、商品やブランド名に関する検索需要というのは短期的には有限であり、これをSEO・SEMによって「刈り取る」だけでは、いずれ、ビジネスは頭打ちになります。そこで、ディスプレイ広告や、時にはテレビや新聞・雑誌等のオフライン広告、あるいはソーシャルメディアなども絡めた統合的なマーケティング施策によって、「需要そのものを創出する」という施策が求められるようになります。

しかしながら、こうした施策の成果は、必ずしも直接的なコンバージョン・売上となって短期的に表れる訳ではありませんし、たとえ効果が表れたとしても、それを直接的に測定することは困難です。

そこで、コーシック氏が提唱するのは、「ラストクリックからもたらされるコンバージョン」 につながる可能性のある、小さな、あるいは間接的なコンバージョン(=マイクロコンバージョン)、を定義することで、オフラインやソーシャルも絡めた統合的なマーケティング施策が、企業にとって、どのような経済的な価値、すなわちエコノミックバリューをもたらしているかを考えよう、というものです。

エコノミックバリューという視点を持つことで、たとえ直接的・短期的なコンバージョンは獲得できていないように見えても、個々の施策によって蒔かれた「種」からは、確実に将来の売上・利益につながる「芽」が生えつつある、ということが確認できるので、それは最終的には、ウェブを中心としたプロモーションあるいはコミュニケーションに対する投資を正当化し、私たちデジタルマーケターの地位を向上させることにもなるのだ、とコーシック氏は強調しています。

最後にコーシック氏は、この言葉で基調講演を締めくくりました。

一つのセッション、一つのコンバージョンに拘泥する愚を冒すな。もっと長期的な視点を持て。なぜならば、消費者は、もはやネット上の一つのセッションの中だけで意思決定はしてくれないのだから。

本ブログでは、引続き、SES Hong Kongで興味を惹いたセッションの内容などもレポートしていきたいと思いますので、どうぞお楽しみに。

Rod Izumi &  Avinash Kaushik

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