2013.9.13

もうご存じ無い方も増えているかもしれませんが、今週サンフランシスコで開かれている”SES”は、元々は、Search Engine Strategiesという名前のカンファレンスの「略称」でした。

その名の通り、検索エンジンマーケティングに特化した、非常にギークな専門性の高いイベントで、企画・運営には、現在、SMXというカンファレンスを主宰しているDanny Sullivan氏が携わっていました。

その後、スマートフォンの普及等により、検索エンジンの利用環境は大きく変化する一方、ソーシャルメディアや、RTBなど新たな配信・ターゲティング技術によるディスプレイ広告の普及に伴い、検索エンジンマーケティングの戦略についても、よりメディアニュートラルな視点で考えていくことが求められるようになりました。

こうした環境の変化を踏まえ、テーマを必ずしもSearchに限定したくない、という主催者側の思いから、元々は「略称」であったSESが、イベントの正式名称に「昇格」したという経緯にあります。

SESの「Search色」が薄れていく中、かつてに比べ、SESへの登壇機会も減っていたマット・カッツ氏ですが、2日目のキーノートスピーチの「サプライズゲスト」として登壇しました。

Matt Cutts @ SES San Francisco

キーノートでは、Googleで、検索結果に掲載するコンテンツに関するポリシー策定を担当するPatrick Thomas氏(写真・左)とともに、多くの人が「不適切」と考えるコンテンツを検索結果から排除することへの取り組みについてディスカッション形式で話が進みました。

その中で、Googleの基本姿勢として、

“Google wants to be as comprehensive as possible. We prefer to limit manual decisions or interruptions.” (グーグルの検索結果は、可能な限り、幅広い内容をカバーすることを宗としており、検索結果の適否を人が判断して変更を加えるといったことは極力排除したいと考えている。)

という一文を紹介した上で、これがいかに難しいことであるか、に話の中心は移りました。

たとえば、どこまでが「芸術」で、どこからが「ポルノ」なのかという線引きは、おそらく人によって異なるでしょう。また、「バラク・オバマ」という検索クエリに対して、どのようなコンテンツが検索結果にふさわしいと考えるかについても、おそらく、答えは百人百様でしょう。となると、どんなにアルゴリズムを磨きあげたところで、万人を同時に満足させる検索結果を提供することは、非常に難しいということになります。

また、最近日本でも問題になっている「ヘイトスピーチ」についても、検索結果に。そうしたコンテンツが表示されることは好ましくないという「総論」では、意見の一致を見る訳ですが、世界各国の異なる言葉や文化の中で、そもそも何が「ヘイトスピーチ」にあたるのかという判断は容易ではなく、さらに、そうした判断基準をアルゴリズムに組み込んで処理するとなると、これも、実際にはかなり難しい作業であることが分かります。

ちなみに、検索結果に「適切」なコンテンツを表示させるため、Googleでは、毎年500を超えるアルゴリズムの変更を実施しており、マット・カッツ氏自身、毎日、1〜2時間のミーティングで、平均8〜10個のアルゴリズム変更を検討しているそうです。それでも、できるだけ多くの人を満足させる検索結果を提供するためのチャレンジには終わりが来ることは無いようです。。。

こうした業界の第一人者から、思いがけず、面白い話が聞けてしまうのも、海外のカンファレンスに参加する楽しみの一つですね。ということで、少々気が早いですが、2014年2月に開催されるSESロンドン についても、視察ツアーの催行が決定しましたので、次回は、ぜひ、現地で一緒にSESを楽しみませんか?

【SESロンドン視察ツアー(予定)】
東京発:2014年2月10日(月)
SES視察:同2月11日(火)〜13日(木)
企業訪問:同2月14日(金)
ロンドン発:2014年2月15日(土)→東京着は日本時間の2月16日(日)
概算費用:670,000円程度の見通し *
* 往復航空券、ホテル5泊、SES入場料、空港-ホテルの送迎、毎朝食及びウェルカムディナーを含みます

【参加の仮申込やお問い合せはこちらから】
メール:ses@LeGrand.jp
電話:0120-066-898

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2013.9.13

今年は会場をサンフランシスコ市内のホテルMarriott Maquisに移して開催されたSES。セッション初日が9/11となったことから、キーノートスピーチの前に、まずは参加者全員による黙祷で幕を開けました。

その静寂を打ち破るように、巨体を揺らしながら登場したのが、元イーストマン・コダックでCMOを務めたJeffrey Heyzlett氏。実はコダックは、今から30年以上も前に、世界で初めてデジタルカメラを開発したメーカーでもあるのですが、皮肉なことに、そのコダック自身が、デジカメの急速な普及という流れについてゆけず、昨年1月には、ついに連邦倒産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻に追い込まれました。

CMOとしてコダック社の約3,000人のマーケターを指揮する立場にあったHeyzlett氏は、その時の経験を振り返り「顧客の要求や期待に応えるためには何をする必要があるのか?」ということが忘れ去られ、本来行うべき変革が進められなかったことが、コダック社の破綻につながった、結論づけました。

テンションを伴わない変革などあり得ない。妥協するな!競争原理を持ち込め!前例や常識を打ち破れ!」と、身振り、手振りを交え、汗だくになりながら、壇上から語りかける姿は、話すというよりも「吠える」と言った方が良いほどの迫力で、参加者からは「すごい迫力!一発で目が覚めたよ。」というツイートもされていたほどでした。(笑)

Jeff Heyzlett @SES San Francisco

キーノートスピーチ終了後は、参加者からの質問にも気軽に答えてくれたHeyzlett氏。日本にも何度も来たことがあるそうです。写真撮影にもお茶目な感じで応じてくれました。

With Heyzlett @ SES San Francisco

続いて、SESの名物スピーカーの一人であるBryan Eisenberg氏がモデレータを務めるセッションのテーマはアトリビューション分析。登壇したBusinessOnlineというデジタルエージェンシーのCEO Thad Kahlow氏は「アトリビューションという考え方は重要だが、ラストクリックかファーストクリックか、といった議論からは、そろそろ卒業しよう」と呼びかけました。

アトリビューションの本質は「カスタマージャーニーの探索」にあり、ネット上で測定できるユーザー行動だけにとどまるのではなく、CRMのデータなども統合的に分析をして、いわゆる「off-page」「post click」の行動データも含めて考えなければ、真の「顧客理解」にはつながらない、と強調しました。

Thad Kahlow @ SES San Francisco

また、別のセッションで自らも壇上に立ったEisenberg氏は、「何のためのビッグデータか?」 というテーマで話をし、「アマゾンは”ビッグデータ”という言葉が生まれる前から、データを顧客理解につなげる試みを続けているだけでなく、顧客理解に基づくパーソナライゼーションといったマーケティングオートメーションにも果敢に取り組んできた。」という例を紹介。そして、ビッグデータ時代に求められる企業の姿勢として、元GEのCEO ジャック・ウェルチ氏の言葉を引用して、講演を終えました。

“An organization’s ability to learn, and translate that learning into action rapidly, is the ultimate competitive advantage.” (競争に勝てる組織に必要なのは、学習する能力と、その学習の成果を素早く行動に反映させることのできる能力である。)

Bryan Eisenberg @ SES San Francisco

ところで、本ブログでもご紹介 している通り、来週、9/18(水)〜19(木)に開催されるアドテック東京 においても、モデレータとして『ビッグデータ分析から読み取るコンシューマーニーズとは』というテーマのセッションを担当させていただくことになっています。今回のSESで得られた示唆も踏まえつつ、登壇者のみなさんとは活発な議論ができればと思っておりますので、よろしければ、ぜひ、こちらもご参加下さい。

【セッションのご案内】
2013年9月18日(水曜日)@6:00pm – 6:50pm
B-6:「ビッグデータ分析から読み取るコンシューマーニーズとは?」
Big Data: Summarize data to understand your customers today and tomorrow

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)

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