2010.2.19

前回のエントリーでは、A/Bテストについて、複数の広告文やリンク先を設定して、どちらの方が効果が高いのかを比較・検証してみる手法であるとご紹介をしました。この場合、複数の広告文やリンク先の間で「勝ち抜き戦」を行い、最終的には勝者(=効果の高い方)に一本化することが目的となります。

一方で、A/Bテストについてはリスクを分散させる効果もあることについては、あまり語られることが無いようですが、特に、検索ユーザーの反応が読みづらい場合、あるいは、季節や競争環境の変化などにより、検索ユーザーの好みがコロコロと変わることが想定される場合などには、たとえば、訴求ポイントを変えた複数の広告文を、並列で掲載しておくことで、仮に一方の効果が低下した場合にも、他方がそれを補うといった形で、リスクを分散させることができます。

下図は、ある年に、コスメ関連の広告について、気温や天候の変化が大きい3月〜4月の時期に、「日焼け対策」に訴求した広告文と、「保湿効果」に訴求した広告文を並列で掲載した結果について、気象庁が発表している東京・大阪・名古屋3都市の合計日照時間と、クリック率・コンバージョン率の関係を時系列で示したものです。

それぞれのコンバージョン率を見ると、季節が冬から春本番を迎え、日照時間が長くなるにつれて、「日焼け対策」訴求のコンバージョン率は、緩やかな右肩上がりとなっているのに対し、「保湿効果」訴求の方は、特に4月の中旬以降は、クリック率・コンバージョン率とも、大きく低下していることが分かります。

さらに細かく見て行くと、天気が曇りや雨→晴れに変わって、日照時間が増えた日には、「日焼け対策」訴求のコンバージョン率が上昇している一方、「保湿効果」訴求のコンバージョン率は低下しています。しかし、晴れの日が続くと、「日焼け対策」訴求のコンバージョン率は下がりはじめ、特に3月中は、「保湿効果」訴求のコンバージョン率が上がり始める、といった傾向も見てとれます。

【日焼け対策に訴求】
SPF

【保湿効果に訴求】
Dry

このように、季節の変わり目などで、広告文の訴求ポイントを冬と春のどちらに合わせるべきか迷った時には、両パターンの広告文を並列で掲載することで、リスクを分散し、費用対効果を安定させるといった効果が得られる場合もありますので、ぜひ、トライしてみて下さい。

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2010.1.04

昨年末のエントリー【米国発】2010年のマーケティングは「原点回帰」がテーマでもご紹介した通り、2010年も、広告支出に関しては、多くの企業が、引き続き慎重な姿勢を崩そうとはしていません。このような中、米国では、広告支出に関しても、企業のマーケティング部門に代わって、購買部門が積極的に関与するケースが増えているようです。

実際、昨年、話題になったダノンやフォルクスワーゲン、UPSといった大手企業における広告代理店との取引関係の見直しには、購買部門の意向が強く働いたと言われています。また、Advertising Age誌によれば、2008年から2009年にかけて、代理店の平均マージンは12.2%から10.5%まで縮小したという調査結果もあり、これも、企業の購買部門が、積極的に取引関係の見直しに乗り出した「成果」と考えられています。

企業の購買担当者にとっては、常に複数の業者を競わせることで、最も良い取引条件を引き出すことが最大の「使命」ですから、中には、物品の購入と全く同じRFP(=Request for Proposal:見積依頼書)を使って広告代理店の選定を行うところもあるようです。また、購買部門で働く人の多くはマーケティングの経験がほとんどないため、個々の代理店が、どのようにして、自社のブランド価値を高めてくれるか、といった点については、代理店の選定にあたって、なかなか考慮の対象とはなりにくい、という問題もあるようです。

こうした動きに対して、代理店サイドからは、行き過ぎた価格偏重は、中長期的な視点で考えれば、必ずしも企業側の利益にはならないといった声も上がっています。

ただ、ある意味、これは非常にアメリカ的な動きとも言えると思います。すなわち、景気の低迷が続く中、特にCEOやCFOの立場からすると、四半期毎の決算で、業績不振に不満を募らせる株主を納得させるためには、「コスト削減」に真剣に取り組んでいるという姿勢を見せる方が「得策」という計算があり、広告支出についても、例外を設けず、購買部門にメスを入れさせることが、短期的に広告費を縮減するには有効であり、かつ、株主に対するメッセージ効果も高いという判断が多分にあると思われます。

従って、こうした動きだけを見て、多くの米企業が、目先の利益ばかりを見て、「マーケティング」活動が企業にもたらすであろう、中長期的、あるいは間接的なリターンの価値を全否定してしまった、と結論づけるのは短絡的に過ぎるでしょう。ただし、以前、本ブログの【ノウハウ】SEMの外注先を選ぶ時に大切なことって何ですか?(Part 1) というエントリーでも書いた通り、欧米では、以前から、広告代理店の選定や交渉にCFOを始めとする財務部門が関与すること自体は珍しくありません。

先般、日本で行われた事業仕分けを例に出すまでもなく、たとえ、それが中長期的、あるいは間接的なものであったとしても、予算を申請する側が、何らかの「ロジック」を用いて、その「効果」を正当化できない限り、そのような広告支出は認められないという点は、企業価値や株主の利益を重視する米企業においては、今も、そしてこれからも変わることはないでしょう。

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