2011.7.14

ご存じとは思いますが、リスティング広告の「掲載場所」は一定ではありません。検索結果の中央上部に上位4件の広告が掲載され、5位以下の広告が右側に表示されることもあれば、中央上部には1件も広告が表示されず、右側だけに表示されることもあります。

このため、仮に掲載順位が1位であっても、検索結果の中央上部に1位表示された場合と、検索結果の右側の一番上に表示された場合では、広告が認知・クリックされる確率がかなり変わってくると思われます。

そこで、今般、アドワーズの管理画面では掲載場所による掲載結果の違いを確認できる機能が用意されました。

アドワーズ管理画面キャプチャ

上図の通り、「分割」というプルダウンメニューから、「上部または側部」を選択すると、グーグル検索および外部の検索パートナーサイトにおいて、検索結果の「上部」と「側部」(=検索パートナーサイトにおいては「上部以外の場所」を意味します)に掲載された場合の掲載結果を、別々に確認出来るようになりました。なお、これは、キャンペーン単位だけでなく、特定の広告グループやキーワードについても、「上部」と「側部」それぞれの掲載結果を確認・比較することができます。

アドワーズ掲載結果1

ケース①は、グーグル検索において、ある「キャンペーン」の掲載結果を「上部と側部」に分けて表示させたものですが、「上部」に掲載された場合の平均掲載順位が1.8位であるのに対し、「側部」に掲載された場合の平均掲載順位は3.9位となっています。このデータを見る時に注意して欲しいのは、ここで表示されているデータは「必ずしも同じキーワードが上部と側部に掲載された場合の比較ではない」という点です。

上部に掲載された方がクリック率が高いという結果は、当たり前と思われるかもしれませんが、たとえば社名やブランド名などは競争が少ないために、元々「上部」に表示されやすく、さらに検索ユーザーの意図もはっきりしているのでクリックもされやすいと考えられます。一方、「DVDレコーダー」「デニム」といった一般名称は競争相手が多く、掲載順位が低くなりがちのため、結果として「側部」に掲載されることは多くなります。また、検索ユーザーの意図も明確でない分、そうしたキーワードは、たとえ上位に掲載されても、社名やブランド名の検索に比べて、クリック率が低くなる可能性は高いと思われます。

つまり、「上部と側部」におけるクリック率の違いには、相関関係はあるが、因果関係があるとは必ずしも言えないということになります。

同様に、コンバージョン率や獲得コストなどの費用対効果についても、ブランド名の方が良好であるケースが高いので、そうした要素を無視して「上部に掲載された方がコンバージョン率は高くなる」という因果関係で考えてしまうことのないよう、注意が必要です。

次にケース②を見てみましょう。

アドワーズ掲載結果2

ケース①に比べると、「上部と側部」において掲載順位には、余り大きな差はありません。実は、ケース②は、ある「キーワード」の掲載結果を比較したものなので、掲載順位、つまり競合している他の広告主との間での相対的な順位は、短期的にはそれほど大きな変動が無いためです。この場合、分析の対象となっているキーワードは一つだけなので、少なくともこのキーワードに関しては、掲載順位が変わらなくとも、掲載場所が「上部」→「側部」になると、クリック率は大幅に低下するということが言えます。

なお、今年の4月にInside Adwordsに掲載されたブログ記事(英文)では、掲載順位(Auction Position)と、掲載場所(Page Position)の考え方について詳しく解説をしていますが、このなかで、もし掲載順位が上位でも、掲載場所が「側部」になっている場合には、入札価格を引き上げることで「上部」に掲載される可能性が高くなるとも書かれています。

従って、コンバージョン貢献の高いキーワードについて、掲載順位は高いのだが、この機能を使って確認した結果、「側部」に表示されているケースが多いことが判明した場合には、入札価格を引き上げ、できるだけ「上部」に掲載させることでクリック率を高め、更に多くのコンバージョンを獲得する、といった施策も可能になります。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)

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2011.3.25

本日、インターネットコムとgooリサーチによる「ネット広告に関する定期調査(第14回)」の結果が公表されていました。

検索連動型広告をクリックしたことがありますか?

その中で、「検索連動型広告をクリックしたことがありますか?」という問いに対し、「ある」と答えた人の割合が、

第14回 68.3%(今回)
第13回 70.2%
第12回 70.9%
第11回 69.5%
第10回 71.0%(1年前)

という推移を示していることをうけて、『クリックする人の割合が頭打ちになっているので、クリック率を上げるには新たな施策の導入が必要ではないだろうか。』と結論づけています。

しかし、ここで気になるのは、この調査で言及しているのは「広告主」ではなく「検索エンジン」にとってのクリック率と考えられるのに対し、全体の文脈からすると「新たな施策の導入が必要だ」というメッセージは「広告主」に向けられていると思われる点です。

広告主の立場で検索連動型広告を利用されている方にはわかりづらい話だと思いますので、少し整理をしますが、「広告主にとってのクリック率」というのは、言うまでもなく「自分の広告がクリックされる確率」を指します。これに対して、検索エンジンにとってのクリック率とは「掲載(表示)された広告のうち、どれかがクリックされる確率」を指します。

検索エンジンにとってのクリック率は、簡単にいえば、掲載される広告が多いほど高くなります。ある検索キーワードに対して、一つしか広告が掲載されない場合と、中央上部に4つと右側にも8つも広告が出ている場合で、「掲載(表示)された広告のうち、どれかがクリックされる確率」は、どちらが高くなるかを考えてみれば、よく分かると思います。

今回の調査では、検索ユーザーに対して「表示されている検索連動型広告のどれか一つでもクリックしたことがあるか?」と聞いている訳ですから、ここで言うクリック率は「検索エンジンにとってのクリック率」になるのはご理解頂けると思います。

さて、クリック率に話を戻すと、検索結果における1ページあたりの広告の表示件数は(今後、ヤフーやグーグルが大きく仕様を変えない限り)だいたい12件程度が上限となります。一方、検索連動型広告が日本に上陸してから、今年で10年目になりますので、ある程度、メジャーなキーワードについては、常に複数の広告が表示される状態になっていると思われます。

実際、この調査でも「検索連動型広告をどの程度、目にしますか」という質問に対して、全体の57.2%が「ほぼ必ず見る」もしくは「よく見る」と回答しており、この傾向に大きな変化はないとしています。

つまり、これらの結果を総合するとメジャーなキーワード群に対しては、一通り、広告主による検索連動型広告への出稿が進んだので、検索エンジン側から見ると「掲載される広告数の増加に伴うクリック率の上昇」については頭打ち傾向にあるという見方が正しいように思います。

しかし、この調査では『この結果からもネット広告に対するユーザーの姿勢が硬直化していることが分かる。』と結んでおり、この結論については、正直、ちょっと違和感を覚えます。(更にいうと「ユーザーの姿勢の硬直化」という意味も正確には分かりません。おそらく「検索連動型広告に反応しなくなっている」ということを言いたいのかなとは思いますが。。。)

どんなワードで検索しても、常に一定数の検索連動型広告が表示される状況においては、(検索エンジンにとっての)クリック率が頭打ちにあるのは、ある意味、当然の結果といえますが、それをもって「ネットユーザーが検索連動型広告に反応しなくなっている」、だから「ディスプレイ広告やアフィリエイトを検討すべきだ」という結論は、ちょっと乱暴なように思います。

もちろん、この調査が指摘する通り、検索ユーザーは、以前にくらべて検索連動型広告をクリックしなくなっているのかもしれません。ただ、少なくとも、今回の調査から、そういう結論を導くことは難しいのではないかと思います。

また、「検索エンジンにとってのクリック率」と「広告主にとってのクリック率」では、それぞれに影響を与える要因が違います。上述の通り、検索結果に表示される広告の数が増えれば「掲載(表示)された広告のうち、どれかがクリックされる確率」は上がると考えられる訳ですが、一方で、広告主にとっては競争が増える訳ですから、個々の広告がクリックされる確率は、むしろ下がることもあり得ます。また、その広告がどのくらい上位に掲載されているか、またキーワードに対して、どのくらい関連性・適合性の高い文言になっているかによっても、クリック率は変わってくるはずです。

こうしたことを考えてみると「検索エンジンにとってのクリック率」が頭打ちになっているからといって、それを直ちに、検索ユーザーの姿勢の変化に結びつけることには無理があると思います。

もし、本当に自分の検索連動型広告がクリックされにくくなっていると感じているのであれば、入札価格や掲載順位、あるいは広告文の内容を見直してみるなど、「検索ユーザーの姿勢の変化」のせいにする前に、やるべきことは多々あるように思います。(もちろん、バナー広告やアフィリエイトもあわせてトライしてみることを否定している訳ではありませんので、念のため、申し添えます。)

何か、他人様の調査にケチを付けるような内容になってしまいましたが、検索連動型広告のクリック率が低下している広告主の方々に誤解があってはという思いから、取り急ぎ、意見を述べさせて頂きました。もちろん、調査結果に関する解釈や理解が間違っている場合には、ご指摘を頂ければ幸いです。(info@LeGrand.jp まで。)

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)



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