2009.4.23

検索連動型広告を使った集客で、しばしば浮上する頭の痛い問題。それは検索が無いという状況です。

念のためにおさらいをしておくと、検索連動型広告とは、例えば、予め「エコカー」というキーワードに対して広告を設定しておき、ヤフーやグーグルなどの検索サイトで、このキーワードが検索された場合には、検索結果の一部として、「エコカー」を製造・販売している企業の広告が表示されるようにしておく、というものです。既に「エコカー」に興味・関心を持っているユーザーだけを選んでサイトに誘導できるので、購入や申込みにつながる確率(=コンバージョン率)も高くなります。

と、一見、良いことずくめの検索連動型広告ですが、もし、「エコカー」というキーワードで検索する人が非常に少ないとしたら、どうでしょう?どんなに腕の良い漁師でも、網を張ったところに魚がいないのでは、どうにもしようがありません。特に、企業や商品・サービスのブランドが世の中に浸透していない場合、そうした企業名や商品名に対する検索は、どうしても少なくなります。一方で、企業名や商品名などの「ブランドワード」で検索してくるユーザーというのは、既に、何らかの方法で、その企業や商品の存在を知り、競合他社には目もくれずに、自社の商品やサービスを探しにきてくれている訳ですから、コンバージョン率は高くなります。一方で、こうした「ブランドワード」は、他社にとっては、あまり利用価値はないため、価格競争に巻き込まれて、クリック単価が上昇することも余りありません。

実際、弊社のクライアント様でも、「ブランドワード」のコンバージョン率が10%を超えているケースは少なくありませんが、この時、平均クリック単価が10円だとすれば、獲得コストは100円以下で済む計算となります。こうしたキーワードの存在は、キャンペーン全体のクリック単価、ひいては獲得コストを引き下げる効果がありますので、「ブランドワード」の検索が多ければ、競争の激しいビッグキーワードに対しても、強気のクリック単価を設定することができるという相乗効果も期待できます。

昨年8月に米国で行われたSES(Search Engine Strategies)でも、SEMを成功させるための「上流工程」として、ブランディング広告の価値を再評価しようという議論が活発に行われていました。(こちらのエントリーもあわせてお読み下さい。)

そして、最近、新たなマーケティングツールとして、にわかに注目を集めているのがTwitterです。おそらく、本ブログの読者のみなさんも、Twitterについては、非常に良く知っていて使っている、あるいは、全く聞いたこともない、の2つに大きく分かれるような気がしますので、ここでは詳しい説明は避けますが、簡単いうと「ブログ」と「チャット」の間のようなサービスで、ウィキペディアでは、『個々のユーザーが「つぶやき」を投稿し合うことでつながるコミュニケーション・サービス』という説明がされています。

元々は「良い天気だなー」とか「あー、そろそろ仕事しないと」といった「つぶやき」を投稿し、それを読んでいる(Twitterでは「フォローする」といいます)知人や友人たちと緩くつながるツール、という感じで使われていました。が、Twitter Searchの登場で、自分が興味・関心のあるテーマについて「つぶやいている人」を探せるようになったことで、不特定多数の人に向けたメッセージを発信できるようになったこともあり、最近は、企業のマーケティングツールとして活用されるケースが急速に増えているようです。

mitsubishi

例えば、三菱電機は、米国で先行販売している新型のレーザーテレビ「LaserVue」が、これまでの液晶テレビやプラズマテレビに比べて、消費電力が大幅に低いという環境性能をアピールするために、Twitterを使って「カーボンニュートラルキャンペーン」を展開しています。

一方、マイクロソフトやフォードといった大企業では、複数の部署・担当者が、それぞれにTwitterのアカウントを開いて、メッセージを発信するようになるため、企業としては、今後、Twitterを通じた情報の発信や、それに対する返信・コメントの内容を一元的に管理することも必要になります。米国では、既にそうしたニーズを見越したサービスを提供するベンチャー企業も登場しています。

これは、CoTweetという会社が提供するサービスで、企業が運用する複数のTwitterアカウントを集中的に管理・モニタリングするだけでなく、将来的にはTwitterが、電話やメール、Skypeなどと同じように、カスタマーサポートのためのコミュニケーションツールとしても使われることも想定し、顧客からの質問に対する回答状況をチェックしたり、個々のサポート担当者にタスクを振り分けるなど、現在のCRMツールが持っているような機能も提供しているようです。

果たして、Twitterは、セカンドライフのような「一過性」のブームではなく、企業のマーケティング・コミュニケーションツールとしての確固たる地位を築いていくことができるのでしょうか?また、日本においては、Twitterの利用者がどこまで増えるのか、という点も含めて、今後の成り行きが注目されます。


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2009.2.26

景気の低迷が続く中、欧米の企業に比べると、広告費のROIについては比較的鷹揚に構えてきた日本の企業でも、その費用対効果を真剣に見直そうという動きが強まっています。その結果、費用対効果について透明性が高いインターネット広告、中でもSEMに注目が集まるのは、ある意味、当然の成り行きであり、おかげさまで、弊社のような「ブティック」タイプの小さなコンサルティング会社にも、大手の企業様から、お問い合わせを頂く機会が増えています。

これは、とても嬉しいことである反面、対応に苦慮する場面も増えています。それは、何かというと、SEMの管理・運用先を選定する際、大きい会社ほど、「コンペ」というプロセスを好む傾向が強いということです。

もちろん、委託先を決めるにあたって、複数の候補を比較検討することは当然のことです。ただ、問題になるのは「コンペ」というやり方は、SEMの管理・運用先の選定にはなじまない、ということに気づいていない企業が多いということです。

この問題について、アメリカで今から5年も前に書かれた記事ありますので、ご紹介をしたいと思います。

この中で、筆者は、そもそも「コンペ」を行う最大のメリットは、“a fair, open competition based on the merits of their offerings”(=具体的な数値に基づく公明正大な競争)を取り入れることにより、コストの削減が実現できることにある、としています。

「コンペ」が正しく機能するためには、「コンペ」の参加者から出される提案内容の優劣を数値(基本的にはコスト)によって客観的に評価できることに加え、“buyer knowledge, born from experience”(=経験を通じて蓄積された「買い手」側の知識や情報の量)も非常に重要になります。

確かに、自分が買おうとしている商品やサービスが、どのようにして製造もしくは提供されるのか、また、コストや性能の違いにインパクトを与える要因は何なのか、といったことについて、「買い手」が「売り手」と同等かそれ以上の知識を持っていない限り、「コンペ」に参加させるべき業者を正しく選ぶこともできませんし、まして提案内容の良し悪しを評価することもできないはずです。

しかし、特に日本においては欧米にくらべてSEMの歴史も浅いため、「コンペ」をしようとする企業が、委託候補先と同等以上の知識や経験を持っているということは、殆どないのが実情です。

このため、「コンペ」をしようとする企業からは、

・広告の管理・運用をするだけなら、他の広告代理店と何が違うんですか?
・御社にお願いするとコンバージョンは何件増やしてもらえますか?
・同業他社の取扱経験はありますか?

といった、弊社からみると、「(正しい委託先を選定するためには)見当違い」と思える質問が、次から次へと出てきます。

それでも、できるだけ正確に、かつ分かりやすく答えようとすると「そもそも広告枠の買い付けという概念が存在しないリスティング広告において、管理・運用を行う業者が果たすべき役割というのは、オフライン広告やバナー広告などとは根本的に異なる訳で。。。」といったところから説明しなければなりません。このため、商談やプレゼンが、ちょっとした「ミニセミナー」に変わってしまうことも珍しくありません。

それでも、限られた時間で全てを伝えることはできない一方で、最近は「お行儀の悪い」代理店も増えているようで、同業他社の掲載データを、時には社名までわかる形で渡して「実績」をアピールするといったケースもあり、「同業他社の管理・運用経験がある別の代理店さんの方が安心なので、そちらにお任せすることにしました。」といったお返事を頂いて、スタッフ一同、徒労感に包まれる、といったこともあります。(苦笑)

これに対して、過去に、他の広告代理店を使って、期待するような効果が得られなかったという「経験」を積んだ企業の場合、こうした質問が出ることは殆どありません。多くの場合、SEMの管理・運用について、解決を要する問題も、既に明確になっているので、議論は、弊社がそうした問題の解決にあたり、どのようなアプローチを取るのか、という点に集中します。

この点についても、記事の中では、次のような形で触れられています。

“Why not choose a law firm that way? Why is it we don’t use the RFP process to get great prices on plastic surgery, a kidney transplant, an accountant, psychologist, chiropractor or any other professional service?”(=弁護士や会計士、あるいは美容整形や腎臓移植をしてくれる医者を捜すのに、「コンペ」をして安い業者を探そうとはしないでしょう?でも、それはどうしてですか?)

それは、“you’re buying expertise”(=あなたが買おうとしているのは、彼らの「経験値」だから)です。

筆者は、更に次のように続けています。

“an SEM services buyer…(中略)…believe the same services are universally offered: link popularity improvement, PPC management, keyword research, site remediation and related tactics. What’s less apparent are different ways & different tactics are selected and executed by each vendor, as well as subtle and not-so-subtle differences in the tactics themselves.

SEMの管理・運用の委託先を検討しようとする企業によくある誤解は、キーワードの抽出や最適化などの「管理・運用」というサービス自体は、誰に頼んでも、同じ質・内容のものが提供されると考えてしまうことです。

このため、手数料やクライアントの数などの、分かりやすいポイントにばかり注意が向きがちですが、実際には、委託する先によって、最適化のための戦略の立て方や実施の方法には、一見同じように見えて、実は大きな差があることも珍しくなく、そうした違いが、最終的には費用対効果にも大きな違いをもたらす可能性がある、という点も踏まえた上で、慎重に委託先を選ぶことが必要ではないでしょうか?


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