2008.11.25

広告主の皆さんにとって、検索連動型広告の運用で一番頭を悩ませる判断の一つが入札価格の決定にあるかと思います。

ある広告主にとっては、広告が表示される掲載順位が大きく影響し、競合よりも上位となるための入札を実施していたり、ある企業にとっては、全体の広告予算枠の中で検索連動型広告の予算がきちんと消化されるような設定になっていたりする場合もあります。

しかしながら、これらの考え方では、どちらもグーグルアドワーズやオーバーチュアの提供するサービスに対しての有効な方針とは言い難いと思います。なぜなら、ご存知のとおり現在の両社のシステムでは、入札価格だけでは順位が決定されないうえ、それぞれのサービスが提供している検索連動型広告の最大の利点とも言える、“コンバージョントラッキング”機能やコンバージョンデータを有効に利用していないと思われるからです。

また、入札価格と掲載順位にはどちらも適正価格と適正順位があり、それらは広告主によって異なるものだと思います。よく、オーバーチュアのクリック単価はグーグルアドワーズよりも高いという話を耳にします、確かに広告主の数が多くなれば一つのキーワードに対しての入札価格が高騰しがちですが、広告主が自社にとっての適正価格を把握していれば、高騰する価格競争に巻き込まれることなく、自社の利益と採算を考えたペースで広告の運用ができるようになるのではないでしょうか?

では、なぜこのコンバージョンが適正入札価格を把握するために重要なのでしょうか?また、適正価格とは幾らなんでしょうか?入札価格を“適正化”していく方法を考えましょう。

重要なのはまず、自社のビジネスがウエブサイト上で何を達成したいのかを決定した上で、その目的を達成するために一件あたりに幾らの金額を広告費として使うのかをよく考えることが大事です。この場合、ねがわくば、広告主のビジネスの目的がサイト上での商品の購入、サービスの成約や、資料請求の申込である事ですが、そうでは無い場合でも、サイトへの訪問者の誘導がビジネスに対して幾らの価値があるのかを良く検討することで同等の考えが成り立ちます。

シンプルな例を使ってこのコンセプトを説明すると、たとえば、ウエブサイト上での目的が商品の販売で、広告主がサイト上で一個3500円の商品を販売したとします。そのうち、1500円が原価やその他のコストとして差し引かれ、純利益として1000円を確保したいと考えた場合、残りの1000円を上限として広告費用として利用すれば、利益を確保したまま広告が運用できる事になります。また、コンバージョンのデータにより、サイトに1000回アクセス(1000クリック)あったうち、50回が商品の購入につながった(50コンバージョン)ことがデータとして把握できている場合、コンバージョン率は5パーセントとなります。この二つの数字を使えば入札価格の上限が計算でき、このコンセプトの理論上では、最高入札価格は1000円x0.05=50円が設定可能で、1円から50円間で入札をしておけば利益に影響が出ない事になります。

参考までに、検索連動型広告をはじめたばかりで、まだコンバージョンのデータが把握できていない場合について、考えてみたいと思います。売上に対しての利益率は自社で決定する事として、一般的な目安となるコンバージョン率は1~1.5%が下限となり、2~4%が平均、5%以上が上限と言われています。自社のサイトのユーザービリティが高く、今までも安定したコンバージョンがある場合は、これらのデータを目安として、仮説を立てながら入札価格を決める事も可能です。

入札価格の設定方法は広告主の目的により、他にもいくつかありますが、大事なポイントとしては、もしもコンバージョンの数が把握できてないままこれらの方針を立てた場合、クリックが売り上げに貢献しているかが把握できない事になり、推測での金額設定になりかねない危険性があります。また、実際には、サイト上ではいろいろな単価の商品が販売されていて、一度に複数の商品が購入されるケースもあり、上記のような単純な計算は簡単にはあてはまらない場合があります。しかしながら、コンバージョン数と、コンバージョンに対する利益率を明確にしておくこととで、まずは自社の検索連動型広告での目的を明確にして、自社のペースで目的を達成させることが大事だということを理解しましょう。

最後に、すべての広告キャンペーンには、チューニングが必要となる事も覚えておいてください、検索数や市場動向、景気、季節、世の中のニュースなどの外的要素でクリック数や、コンバージョン数が変動する場合もあり、変動する数値には常に注目する事が大事です。クリック数が変わればコンバージョン率も変わり、同じ利益を維持するには、入札価格にも変動が必要となります。このように目まぐるしく変わる環境の中で、自社にしか把握できないコンバージョンデータを有効活用することで、効率的な広告の利用ができると言う事は、まさしく検索連動型広告の優位な点だと思いませんか?

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2008.11.25

さて、今回は前回に引き続き、アメリカのマーケティング雑誌「Search Marketing Standard」の記事から、SEMの管理・運用を外注する場合のチェックポイントの後半部分について、ご紹介します。

【その4】:外注先候補を募集する
RFP(request for proposal=提案要請書)をいくつかの代理店に送り、予算や目標に合った内容の提案を選択。または、ビジネスやマーケティング戦略について、打ち合わせ形式で、代理店と協議する、という2つの方法で、外注先候補を募集する。

一方で、RFPというのは元来、成果物がはっきりしている場合に利用するもので、SEMの外注先の選択に於いては、ビジネスやマーケティング戦略について協議することで、RFP上では読み取れない大切な要素が発見できることが多いため、アメリカではRFPを利用することに悲観的な考え方もあるようです。また、RFPを送る、あるいは、協議を行う前に、まずは、どのようなタイプの外注先候補があるのか、正しく理解する必要があるとも記載されています。

一般的なSEM外注先の例:
■ オンライン広告専門代理店 – SEO/SEM特化型
■ オンライン広告代理店 – SEM以外のオンライン広告や、PR、ブランディング等に関するサービスも必要に応じて提供
■ コンサルティング型広告代理店 – SEO/SEMエキスパートが中心になり、主に大手企業を顧客としコンサルティングサービスを提供

弊社もコンペへお誘いをいただくことがあるのですが、まずは、お打ち合わせで弊社の最適化に対する考え方や実施プロセスについて、ご説明をさせていただくようにしています。なぜならば、マーケティングプログラム等をご提案する場合は、ダイレクトメールや広告等、具体的なプログラムやそれに必要なコストについてご説明をすることができますが、SEMの場合は、成果物は「獲得コスト」、「コンバージョン数」のような数値になり、広告掲載開始前にこれらの数値をRFPに書くということは、現実的ではないからです。SEMの管理・運用には、ロジックがありますが、実際にやってみないと分からない部分が多く、ある程度蓄積されたデータを分析するにより、初めて、設定した目標を実現するためにやるべき事が見えてくるということになります。これが理由で、「御社にお願いすると、どのくらいのコンバージョン数が見込めますか?」というご質問をいただいた場合、「実際にやってみないと分かりません」という、感じが悪いお答えになってしまうのです。弊社の考えでは、RFPの段階で、この質問に対して数字で回答してくる代理店があるとしたら、この代理店は「要注意」ということになります。

【その5】:外注先を正しく評価・比較する
外注先候補を絞り込む際に、代理店の実際のクライアントと接触する機会を作るようにリクエストするという方法もある。また、SEMの管理・運用を実施するに当たり、「管理ツール」を利用しているかどうか、さらに、ツールを使って解決できた問題等も併せて聞くことで、ツールの理解度をチェックすることも可能になる。

実際のクライアントへの質問事項として「意見に相違がある場合、代理店はどのように対応しているか、教えてください。」といった内容のものがあります。日本に於いても、様々なケースがあるとは思うものの、代理店はクライアントに対して「代理人」となり、代理業を行うという役割が根強いため、クライアントと代理店が意見と異にするという状況は少ないのではないでしょうか?

しかし、SEMに於いては、結果が数値ではっきり出るため、「獲得コスト」「コンバージョン数」といった数値に対して、より責任を持って管理運用をしている代理店であれば、クライアントの意見を受け入れないこともあるはず。その場合、代理店にとっては、「獲得コスト」「コンバージョン数」に悪影響を与えないようにしつつ、クライアントの案を尊重するコミュニケーション作りが課題になるかと思います。

また、欧米の代理店の多くは管理ツールを利用しています。あるイギリスのSEM代理店は、ツールを「車」に例えながら、目標とする目的地に早く到着するためには車だけでなく、それを運転する優秀なドライバーが必要になると説明しています。昨今、日本でもツールは徐々に普及されつつあるようですが、ツールはあくまでも一部の作業を補ってくれる道具です。ツールを利用しているという事実だけでなく、利用して実現できたことについて、より具体的な内容を聞く必要があるかと思います。

【その6】: 外注先の最終選考を行う際に大切なこと
最終インタビューを電話、あるいは、打ち合わせで行う。代理店は、ビジネスゴールを達成するためのパートナーではあるものの、コーポレートカルチャーを理解し、性格的にもビジネスをしやすい相手であることが望ましい。また、この時点で、お互いの役割分担について、口頭で確認し、議事録として内容を記載しておくと良い。

パートナーとトライアンドエラーをし続けて行くのがSEM。コーポレートカルチャーは勿論のこと、目標を共有し、前向きに新しいことにチャレンジしていけるパートナーであることが、その後の結果に繋がるような気がします。そして、そのパートナー選びには、労力を惜しまず、リソースをかけて望む必要がありそうですね。

さて、2回にわたり、SEMの外注先の選び方についてまとめさせていただきました。景気後退に直面しているアメリカ経済に於いて、広告費の削減に踏み切る企業が多い中、費用対効果がはっきりしている検索連動型広告については、引続き堅調であると言われています。それと同時に、更なる効率化を図るための、外注先選びは大きな課題にもなっている様子で、「外注先選び」に関する情報も増えつつあります。日本に於いても、これまでの代理店を見直す、あるいは、内政化していた業務を外注するというニーズが増えてきているような気がします。

皆さんは今の体制に満足されていますか?


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