2013.10.31

先日弊社ブログでもご紹介した通り、Googleアナリティクスでは今後、近いうちに来訪ユーザーのデモグラフィックデータ(年齢・性別・興味関心など)が取得できるようになります。

そういう潮流からも、今後サイト分析に求められる考え方として、ページごと、流入元に着目した分析に留まらず、どんなプロファイルのユーザーがサイト内でどういう行動をしているか、という「個々のユーザーに焦点を当てた分析・改善」を出来る否かが重要となってきているといえます。

個々のユーザーに焦点を当てる、となると高度な分析が必要にもなってきますが、ここでは、その“導入”として、Googleアナリティクスのアドバンスセグメントを活用した分析の考え方の例をご紹介します。 分析にあたって、重要な考え方の一つは、「自社サイトに訪問しているユーザーはどんなユーザーか」を整理することです。

今回は簡単な例として、ユーザー層を下記3つに大別し上図ので表現しています。 (1) 初めて訪問したor 興味関心度が低く、マイクロCV(※)、CVに未到達のユーザー層(登山初心者) (2) コンバージョンには至っていないが興味関心が高く、マイクロCVまで到達したユーザー層(登山中級者) (3) CVに到達したユーザー層(登山上級者)

Googleアナリティクスユーザー分析の考え方

例えるなら(1)は登山初心者、(3)はめでたく頂上まで到達した登山上級者となり、サイトでCVを最大化させるためには、
(1)⇒(2)への遷移(登山初心者をどうやって登山に興味関心を持たせ、中級者にさせるか」
(2)⇒(3)への遷移(興味関心を持った中級者を上級者にさせる一押しは何か)
という「各遷移での障壁をどれだけ緩和させてあげるか」、という分析方針に集約されます。 当然、ページのコンテンツが乏しかったり、買い物カゴ到達から購入まで導線設計が悪かったりすると、(1)⇒(2)、(2)⇒(3)へ遷移する際のハードルが高く、離脱の割合を高める結果になってしまいます。

前置きが長くなりましたが、(1)⇒(2)、(2)⇒(3)の遷移の障壁要因が何のか、(1)、(2)、(3)のユーザーでどんな違いがあるかを分析する場合に便利な機能がアドバンスセグメントとなります。

ECサイトをモデルケースに、マクロCVを購入、マイクロCVを商品詳細ページ閲覧、とすると、例えば登山初心者、中級者、上級者は下記のような条件に落とし込むことができます。(より詳細を分析した上で(1)~(3)の条件決定する必要がありますが、あくまで一例です)
(1) TOPページにランディングした新規訪問ユーザーかつ商品詳細ページ未到達ユーザー層
(2) 商品詳細ページまで閲覧した未購入ユーザー層
(3) 商品購入まで至ったユーザー層

ここまで来ると、いよいよアドバンスセグメントで条件を設定し、各ユーザー層間で閲覧しているページ違いや滞在時間、流入キーワードの違いを分析していきます。

具体的な数値、分析例はまた改めてご紹介させていただきますが、この分析によって「商品詳細ページへの導線が悪かった」、といった単純な改善施策から、「マイクロCVユーザーの多くは、商品詳細以外にもブランド紹介ページを閲覧している割合が高く、このページを閲覧させることが“初心者”から“中級者”へ押し上げるための価値あるコンテンツだった」という分析までみえてきます。 また、“初心者”の多くは流入メディアに偏りがあったり、訪問キーワードに傾向があったりするなど、ユーザー層別の特徴が見えてくることはもちろんのこと、今後導入されるユーザーデモグラフィックデータと結びつけられるようになると、より“初心者”の具体的なペルソナが浮かび上がってきます。

最終的には、こういった分析・改善によって、サイト側でもユーザー(プロファイル)ごとに適したコンテンツを用意する、“おもてなし”ができれば、CVはさらに増加させることが期待できるでしょう。 (※)ここでいうマイクロCVは、「購入や資料請求といったマクロなCVではないが、将来的にCVを生み出す可能性のあるアクションとして定義したもの」で、簡単な例では買い物カゴまで到達した、事例集ページを見たといったアクションが挙げられます。

この「マイクロCV」はGoogleのエバンジェリストであるアビナッシュ・コーシック氏が提唱する「経済的価値(エコノミックバリュー)」の中で導入されている考え方で、弊社セミナーなどでも何度かご紹介しております。

なお、本サイトやニュースレターでもお知らせした通り、ルグランは、本年3月に、デジタルマーケティング機能を統合したコンテンツ管理システムを提供するサイトコア株式会社と、マーケティングソリューションの分野で業務提携契約を締結しました。

パーソナライズ機能を導入した動的なサイトの構築・運用に興味のある方は、ぜひ、一度、ルグランまでご相談下さい。

サイトコア導入サポート窓口
メール: sitecore@LeGrand.jp
電話:0120-066-898
(by 桑原 達彦, Consultant, Le Grand)

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2013.10.24
この半年、何かと話題になったNHK朝の連続ドラマ『あまちゃん』ですが、先日、その平均視聴率は20.6%で、実は、昨年放送された『梅ちゃん先生』の20.7%を、僅かながら下回ったというニュースが流れました。

統計学の素養とは

これは多くの人にとって「意外」と受け止められたようで、ネットを見ると、このニュースを受けて『なぜ、あまちゃんは梅ちゃん先生を超えられなかったのか 』については、色々な方がブログやニュースサイトなどで考察を加えています。

でも、本当に『あまちゃん』の平均視聴率は『梅ちゃん先生』よりも低かったのでしょうか?

といっても、別に視聴率のデータにイチャモンをつけている訳ではありません。この視聴率の数値は、ビデオリサーチ社が関東地区・600世帯の視聴データをもとに、統計的に「推計」したものです。そして、ここから先は、統計学について基本的な知識のある人はすぐに分かると思いますが、「600世帯というサンプル数から推計された視聴率データにおける0.1%ポイントの差は『誤差の範囲』とは言えないのか?」ということを考えずに、「あまちゃん」と「梅ちゃん先生」の視聴率の数字を比較して、あーだこーだと議論してもほとんど意味が無い、という点が重要なのです。

細かな説明は省きますが、統計学では、600世帯というサンプル数から「推計」された20.7%と20.6%という視聴率の差は、本当に視聴率の差と考えてよいのか、それとも「誤差の範囲」に過ぎないのかを検証する手法が確立されています。

これをもとに『あまちゃん』の平均視聴率を検証してみると、『真の視聴率(=もし全世帯を調査できたとした場合の視聴率)』が、95%の確率でこのレンジに収まると考えられる推計視聴率の範囲は約17.36%〜約23.84%となります。つまり、あなたが、

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・もし本当に全世帯を調べて出した『あまちゃん』の真の視聴率が、あなたの推計レンジの範囲内だったら賞金をもらえる。
・もらえる賞金は、100万円〜1,000万円まで、推計レンジの幅を狭くすればするほど、高い賞金がもらえる。
・ただし、もし真の視聴率が、推計レンジを外れていたら罰金200万円を払わねばならない。

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という時に、あなたとしては、推計がはずれて罰金を取られる確率を5%以下にしたいなら、統計的には推計レンジを17.36%〜23.83%としておくのが妥当、ということになります。

一方で、賞金は低くなっても良いので、外れる確率を1%以下にしたいなら、推計レンジを16.34%〜24.86%まで広げることができますし、逆に、当たる確率は五分五分でも構わないので高額賞金を狙いたい、と考えるなら、19.49%→21.71%という狭いレンジで勝負をかけるといった具合になります。

もうおわかりと思いますが、600世帯からの推計値が当たっている確率を50%まで引き下げたとしても、統計的に、真の視聴率が存在するである推計値の範囲は、19.49%→21.71%までしか絞り込めないということですので、『梅ちゃん先生』と『あまちゃん』の0.1%ポイントという視聴率の差は『誤差の範囲』と考えるのが妥当といえるでしょう。

となると、「『あまちゃん』の視聴率は『梅ちゃん先生』よりも低かった」という前提で、あれこれ議論しても、あまり意味が無い、ということになる訳です。

これは、例えば、配信している複数の広告パターンについて、クリック率やコンバージョン率を比較する場合にも、全く同じことが言えます。

もし、サンプル数、つまり、この場合なら、母数となるインプレッション数やクリック数が充分で無い場合、たとえば、クリック率やコンバージョン率に差があっても、それは、高い確率で『誤差の範囲』ということになってしまいます。そのような数値を元に判断を下すことは、かなり危険だということがおわかり頂けるのではないでしょうか。

ビッグデータというと、とかくデータの量や、膨大なデータを抽出・整理・解析する技術といったところにばかり注目が集まりがちですが、特にマーケターとして、データに向き合う立場にある場合、みなさんが日々接している色々なデータを見て、その信頼性や意味について、瞬間的に何かを感じとるセンスが非常に大切です。そして、そのセンスの基礎となるのが、今回お話したような統計学に関する基本的な知識・理解であると言えるのではないでしょうか。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)

ルグランでは、マーケターの方を対象に、こうした統計学のエッセンスを学ぶためのワークショップ なども定期的に開催しています。また、ルグランのセミナー・ワークショップは一般公開だけでなく、広告会社やウェブの制作会社・システムベンダー、あるいは広告主側の立場にある事業会社など、多くの企業の「企業内研修プログラム」としても実施をしています。

プログラムの内容や形式(セミナー・ワークショップ、あるいは弊社へのインターンシップ派遣など)については、ご要望に応じてカスタマイズ可能ですので、お気軽にご相談下さい。

企業内研修プログラムについてのご相談はこちらへ。

株式会社ルグラン 研修担当
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メール:seminar@LeGrand.jp

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