2013.10.24
この半年、何かと話題になったNHK朝の連続ドラマ『あまちゃん』ですが、先日、その平均視聴率は20.6%で、実は、昨年放送された『梅ちゃん先生』の20.7%を、僅かながら下回ったというニュースが流れました。

統計学の素養とは

これは多くの人にとって「意外」と受け止められたようで、ネットを見ると、このニュースを受けて『なぜ、あまちゃんは梅ちゃん先生を超えられなかったのか 』については、色々な方がブログやニュースサイトなどで考察を加えています。

でも、本当に『あまちゃん』の平均視聴率は『梅ちゃん先生』よりも低かったのでしょうか?

といっても、別に視聴率のデータにイチャモンをつけている訳ではありません。この視聴率の数値は、ビデオリサーチ社が関東地区・600世帯の視聴データをもとに、統計的に「推計」したものです。そして、ここから先は、統計学について基本的な知識のある人はすぐに分かると思いますが、「600世帯というサンプル数から推計された視聴率データにおける0.1%ポイントの差は『誤差の範囲』とは言えないのか?」ということを考えずに、「あまちゃん」と「梅ちゃん先生」の視聴率の数字を比較して、あーだこーだと議論してもほとんど意味が無い、という点が重要なのです。

細かな説明は省きますが、統計学では、600世帯というサンプル数から「推計」された20.7%と20.6%という視聴率の差は、本当に視聴率の差と考えてよいのか、それとも「誤差の範囲」に過ぎないのかを検証する手法が確立されています。

これをもとに『あまちゃん』の平均視聴率を検証してみると、『真の視聴率(=もし全世帯を調査できたとした場合の視聴率)』が、95%の確率でこのレンジに収まると考えられる推計視聴率の範囲は約17.36%〜約23.84%となります。つまり、あなたが、

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・もし本当に全世帯を調べて出した『あまちゃん』の真の視聴率が、あなたの推計レンジの範囲内だったら賞金をもらえる。
・もらえる賞金は、100万円〜1,000万円まで、推計レンジの幅を狭くすればするほど、高い賞金がもらえる。
・ただし、もし真の視聴率が、推計レンジを外れていたら罰金200万円を払わねばならない。

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という時に、あなたとしては、推計がはずれて罰金を取られる確率を5%以下にしたいなら、統計的には推計レンジを17.36%〜23.83%としておくのが妥当、ということになります。

一方で、賞金は低くなっても良いので、外れる確率を1%以下にしたいなら、推計レンジを16.34%〜24.86%まで広げることができますし、逆に、当たる確率は五分五分でも構わないので高額賞金を狙いたい、と考えるなら、19.49%→21.71%という狭いレンジで勝負をかけるといった具合になります。

もうおわかりと思いますが、600世帯からの推計値が当たっている確率を50%まで引き下げたとしても、統計的に、真の視聴率が存在するである推計値の範囲は、19.49%→21.71%までしか絞り込めないということですので、『梅ちゃん先生』と『あまちゃん』の0.1%ポイントという視聴率の差は『誤差の範囲』と考えるのが妥当といえるでしょう。

となると、「『あまちゃん』の視聴率は『梅ちゃん先生』よりも低かった」という前提で、あれこれ議論しても、あまり意味が無い、ということになる訳です。

これは、例えば、配信している複数の広告パターンについて、クリック率やコンバージョン率を比較する場合にも、全く同じことが言えます。

もし、サンプル数、つまり、この場合なら、母数となるインプレッション数やクリック数が充分で無い場合、たとえば、クリック率やコンバージョン率に差があっても、それは、高い確率で『誤差の範囲』ということになってしまいます。そのような数値を元に判断を下すことは、かなり危険だということがおわかり頂けるのではないでしょうか。

ビッグデータというと、とかくデータの量や、膨大なデータを抽出・整理・解析する技術といったところにばかり注目が集まりがちですが、特にマーケターとして、データに向き合う立場にある場合、みなさんが日々接している色々なデータを見て、その信頼性や意味について、瞬間的に何かを感じとるセンスが非常に大切です。そして、そのセンスの基礎となるのが、今回お話したような統計学に関する基本的な知識・理解であると言えるのではないでしょうか。

(by Rod Hiroto Izumi, Founder & Co-CEO, Le Grand)

ルグランでは、マーケターの方を対象に、こうした統計学のエッセンスを学ぶためのワークショップ なども定期的に開催しています。また、ルグランのセミナー・ワークショップは一般公開だけでなく、広告会社やウェブの制作会社・システムベンダー、あるいは広告主側の立場にある事業会社など、多くの企業の「企業内研修プログラム」としても実施をしています。

プログラムの内容や形式(セミナー・ワークショップ、あるいは弊社へのインターンシップ派遣など)については、ご要望に応じてカスタマイズ可能ですので、お気軽にご相談下さい。

企業内研修プログラムについてのご相談はこちらへ。

株式会社ルグラン 研修担当
電話:0120-066-898
メール:seminar@LeGrand.jp

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2013.10.11

ご存知の方も多いかと思いますが、10/1に開催されたGoogleアナリティクスサミット2013にて発表された新しいGoogleアナリティクスの機能に注目が集まっています。

Googleアナリティクスチームのブログにセッションの模様が伝えられていますので、ご一読をおすすめいたします。

多くのアカウントでリリースされ始めている新しいインターフェースでのアドバンスセグメントの紹介など既知の機能も多かったですが、個人的には、「オーディエンスレポート」の取得が近々可能になる、という点に大きな関心を寄せています。

既にGoogle AdWordsではリマーケティングタグを活用して既存ユーザーのプロファイルを推定し、それに類似するユーザーへ配信する「類似ユーザー配信」が出来るようになって久しいですし、個人的にはいよいよそのデータがGAにも反映されるようになったか、という思いです。

Google アナリティクス デモグラフィックデータ
【Google アナリティクス デモグラフィックデータ(Googleアナリティクスチームのブログより引用)】

また、ここ1年で国内での様々なDMP (Data Management Platform )プレイヤーが登場しており、オーディエンスデータを定量的に分析するインフラが整いつつあります。

これまでGA始め多くのアクセス解析ツールでは
「ユーザーがサイト内でどういう動きをしているか、どんなコンテンツに関心を持っているか」
という分析に留まっていましたが、今後は
「“どんなプロファイル”のユーザーがサイト内でどういう動きをしているか、どんなコンテンツに関心を持っているか」
という分析が主流になり、それぞれのプロファイルに適したサイト・コンテンツ作りが出来ているか否かがデジタルマーケティングの成功を左右することになるでしょう。

なお、本サイトやニュースレターでもお知らせした通り、ルグランは、本年3月に、デジタルマーケティング機能を統合したコンテンツ管理システムを提供するサイトコア株式会社と、マーケティングソリューションの分野で業務提携契約を締結しました。

パーソナライズ機能を導入した動的なサイトの構築・運用に興味のある方は、ぜひ、一度、ルグランまでご相談下さい。

(by 桑原 達彦, Consultant, Le Grand)

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